【岡山大学】がん細胞の集団運動の制御に関わるPacsin2の機能を解明 抗がん剤の新たな分子標的や診断バイオマーカー候補として期待!

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岡山大学と熊本大学の共同研究プレスリリースです
2023(令和5)年 6月 18日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 

<発表のポイント>

  • 細胞の集団的な運動は、悪性がんの浸潤や転移の効率化に寄与します。
  • がん細胞の集団運動を制御する新規因子Pacsin 2の機能を解明しました。
  • 新たながん診断マーカーや抗がん剤開発への展開が期待されます。

◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院医歯薬学総合研究科のHaymar Wint大学院生、岡山大学学術研究院医歯薬学域の竹田哲也研究准教授および竹居孝二教授、岡山大学病院の渡部昌実教授、岡山大学の那須保友学長、熊本大学大学院先端科学研究部の檜垣匠教授らの研究チームは、がんの浸潤や転移に関わる細胞の集団運動を制御する分子メカニズムを明らかにしました。

 悪性度の高いがん細胞は浸潤や転移を起こします。近年の研究で、悪性のがん細胞の多くが集団として運動し、その運動様式が浸潤や転移を効率よく起こす要因になっていることが明らかになってきました。しかし、がん細胞の集団的な運動を制御するメカニズムについてはほとんど明らかになっていませんでした。

 本研究では、がん細胞の集団運動を制御する新たな因子としてPacsin 2を同定しました。Pacsin 2は、細胞接着分子N-カドへリンの細胞膜への局在を制御し、Pacsin 2の機能を阻害するとがん細胞同士が接着し、集団運動を行うようになることを明らかにしました。

 本研究の成果を足がかりに、がん細胞の集団運動を制御する分子メカニズムの解明が進めば、より効果的な抗がん剤や、がんの早期診断に用いる新たなバイオマーカーの開発につながることが期待されます。

 この研究成果は、2023年5月31日付けのイギリスの科学誌 Journal of Cell Science に掲載されました。

 

図1.がんの浸潤・転移。がん細胞は、がんが最初に発生した部位(原発巣)から、個別もしくは集団として結合組織内を運動し、血管やリンパ管を経由して、別の臓器や組織で再び腫瘍(転移巣)を形成する

 

図2.Pacsin 2 RNAiによって誘導される方向性のある細胞運動。創傷治癒アッセイを6時間行った後の細胞のライブイメージング像(上)とその間の細胞の軌跡(下)。コントロール細胞(左)に比べて、Pacsin 2 RNAiを行ったT24細胞(右)では、細胞の軌跡の方向性が揃っている

 

図3.Pacsin 2 RNAiによって誘導される細胞同士の接着。細胞接着部位のN-カドヘリン(緑)、アクチン(赤)、DNA(青)の蛍光顕微鏡像(左)と、電子顕微鏡像(右)を示す

◆研究者らからひとこと
 I am truly fascinated by the beauty and sophistication of cells, the fundamental units of life. Through my work, I aim to unravel the mysteries of cells, advance our knowledge of cellular biology, and ultimately positively impact human health. (Haymar Wint)
 母国の不安定な状況とコロナ禍という大変な時期に、頑張って良い研究をしてくれました。次のステップでも活躍してください!
 

(左から)Haymar Wint大学院生、竹田哲也研究准教授、竹居孝二教授(左から)Haymar Wint大学院生、竹田哲也研究准教授、竹居孝二教授

◆論文情報
 論 文 名:Pacsin 2-dependent N-cadherin internalization regulates the migration behaviour of malignant cancer cells
 掲 載 紙:Journal of Cell Science
 著  者:Haymar Wint, Jianzhen Li, Tadashi Abe, Hiroshi Yamada, Takumi Higaki, Yasutomo Nasu, Masami Watanabe, Kohji Takei, and Tetsuya Takeda
 D O I:https://doi.org/10.1242/jcs.260827
 U R L:https://journals.biologists.com/jcs/article/136/10/jcs260827/310877/Pacsin-2-dependent-N-cadherin-internalization

◆研究資金
 本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(課題番号:18K07198、19KK0180、研究代表者:竹田哲也;課題番号:19H03225、研究代表者:竹居孝二;課題番号:19H01064、研究代表者:渡部昌実;課題番号JP22H04926、ABiS先端バイオイメージング支援プラットフォーム)、ウエスコ学術振興財団研究活動費助成(研究代表者:竹田哲也)の支援を受けて実施しました。

◆詳しい研究内容について
 がん細胞の集団運動の制御に関わるPacsin 2の機能を解明 抗がん剤の新たな分子標的や診断バイオマーカー候補として期待!
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230612-1.pdf

◆参 考
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)生化学分野
 http://www.okayama-u.ac.jp/user/biochem/index.html#1
・岡山大学病院
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/
・熊本大学大学院 先端科学研究部 檜垣研究室
 https://higaki-lab.net/

 

岡山大学鹿田キャンパス(岡山市北区)岡山大学鹿田キャンパス(岡山市北区)

◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)研究准教授 竹田哲也
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
 TEL:086-235-7125
 FAX:086-235-712
 http://www.okayama-u.ac.jp/user/biochem/index.html#1

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:086-235-7983
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

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 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

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