オフィスの「見えない生理」を顕在化するLAQDAプロジェクト。生理用品設置実証実験で「働く環境での心理的安全性が高まった」と97.5%が回答。セミナー実施で企業内DE&I理解を大きく促進。

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わたしの暮らし研究所株式会社(所在地:東京都中央区、代表:沢田直美)は、経済産業省 令和4年度 フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金採択事業である「生理用品設置をきっかけにしたコミュニケーションデザイン事業」において、オフィストイレ内への生理用品設置をきっかけとした働き方改善に関するプロジェクトを実施しました。調査結果では、生理用品設置することにより「働く環境での心理的安全性が高まった」効果が確認できました。

【概要】

わたしの暮らし研究所株式会社は「ジェンダーに関係なく、より多くの人が快適なまいにちを過ごすことができる」社会を実現するための事業を行っております。2019年(令和元年)に「LAQDAプロジェクト(※1)」を立ち上げ、昨年は「経済産業省 令和4年度 フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」に採択され、生理用品設置の課題をみんなで考える市民共創型のプログラムを実施しました。働く環境にある人にとって、生理への対処が必要なことであるにもかかわらず、働く環境に生理が組み込まれておらず、「見えない生理」になっていたことが顕在化しました。

【調査結果ポイント】

  • 生理用品がトイレに設置されることで、働く環境として『心理的安全性』が高まったと回答した人は97.5%。生理用品がトイレに設置されることで、所属している企業に『受け入れられている、肯定されている』気持ちになったと回答した人は80%。

  • 職場の生理用品設置は「相談できる人がいないので諦める」が約25%。

  • 社内セミナー実施で、ポジティブな行動変容が 98.5%。「みんなが気持ちよく働ける環境を考えていきたい」との回答が66.7%。「身の回りで具合の悪そうな人がいたら、気遣ってあげたい」は41.3%。

【生理用品設置と働く環境の『心理的安全性』】

LAQDAプロジェクトでは、2019年から生理用品設置の実証実験を行っています。過去の実証実験では、働く環境のトイレに生理用品がないことにより、定常的に生理の不安を抱えている方が多くいることが確認できていました。

この度、生理用品設置の実証実験でも調査を行い「働く環境のトイレに生理用品が設置されることで、(想定外の生理の緊急時に慌てることがない)『心理的安全性』は高まりましたか」に対して、97.5%がYESと回答。

また、「生理用品がトイレに設置されることで、所属している企業に『受け入れられている、肯定されている』気持ちになりましたか」との質問に、80%がYESと回答しました。

【職場の生理用品設置は「相談できる人がいないので諦める」が約25%】

LAQDAプロジェクトでは、過去の調査から、定常的に「困っている」にも関わらず、当事者が現状の改善をできないことが課題でした。そのため、この度の調査では、職場での生理用品設置希望の『言いづらさ』がどのように対応されているかを調査しました。トイレへの生理用品設置を希望する場合、所属企業に対してどのようなアクションをとるか聞いた質問では「人事・総務に相談する」が1位となったものの、「相談できる人がいないので諦める」が2位となりました。また、「特に何もしない」が「上司に相談する」を上回るなど、困ったことでも相談しづらい現状が明らかとなりました。

個別に寄せられた回答では、「アクションを起こしてまで設置の希望はない」「​​イチ従業員でアクションする人はいないと思う」「特に女性は非正規社員も多く、役職者でない人の方がまだまだ多いと考えられるため、このようなことをアクションする流れにはならない」などのご意見が寄せられました。

【「生理がある人もない人も、いっしょに考える」から生まれた生理用品ケース】

LAQDAでは2019年の実証実験以来、生理がある人だけでなく生理がない人にも調査を展開しています。それは、同じ職場で働く人が「仕事がしやすい」方が、組織として生産性が上がるため、生理の当事者のみが考える問題ではないと考えているからです。

今回は、生理がない人を対象に対象に「生理について困っていること」についての調査を行いました。その結果、「生理による具合の悪さをどうサポートすればよいのかわからない」との回答が半数以上。「具合が悪そうな様子の女性を見ても、セクハラになりそうで声をかけるか躊躇する」「生理について困っていることをサポートしたいが、コミュニケーションがしづらい」などコミュニケーション周りの課題が挙げられました。

また、「生理用品の設置について相談されてもわからない」が43.5%と半数近くに上り、「生理用品を見たことがないので、(設置導入の相談をされても)評価ができない」という声も15.5%となりました。

LAQDAプロジェクトでは、生理用品の設置にあたり、企業内での意思決定者が生理の当事者でない場合、設置への意思決定が滞ることを課題だと考えてきました。そこで、LAQDAプロジェクトでは、生理がない人も話題に出しやすく、生理用品に触れていただく機会をつくること必要だと考え、生理用品ケース「せりぽん」を開発しました。

試作を行う過程で、生理用品の残量が見えることも使う人の安心感に繋がり、半透明・クリアの2色での展開をしました。中身が見えるようにすることで、生理用品個包装の意匠デザインが映え、POPな佇まいを実現しています。また、目がついたかわいいデザインにすることで、男性にも気兼ねなく「かわいい!」とのコメントが寄せられました。シンプルなデザインではありますが、目の表情にバリエーションがあり、さまざまな色や柄の生理用品を入れることができます。そのため、同じケースでも、目と中の生理用品が変わることによって、バリエーションのある雰囲気が出せ、それぞれの施設で楽しくお使いいただけると考えております。

本事業では、一部の企業において、女子トイレだけでなく、男子トイレ・多目的トイレにも設置を行いました。このことにより、ジェンダーに拘らず、生理用品の設置について話題に触れやすくなったと感じています。

生理がない方々に、生理用品ケースについて話題に出しやすいか調査を行ったところ、半数以上の方が「抵抗感ない、やや抵抗感ない」とご回答いただきました。「ケースがかわいい」「ポップなデザインでよい」などのコメントもいただいております。

また、LAQDAでは、生理の話題が生理の当事者同士でも語りづらいことであったことを解消したいと考えています。2021-2022年にかけて行われた調査(※2)では、実証実験の前後にアンケートを展開し、生理の当事者に対してフィードバック調査を行いました。その結果、生理用品がなくて困っている人がいるという事実について、生理がある人の80%が「みんな同じ悩みを抱えている」と思ったと回答しています。

本事業の実証実験では、『言いづらい』生理の話をケースを媒介とすることで話をできたという声が多数寄せられています。「今までに話をする機会がなかった人とも、トイレの中で会話が生まれた」「せりぽんについて話に触れたことがきっかけで、同僚に生理の悩みを相談できた」など、『言いづらい』生理の話の『対話のきっかけ』になることが確認できています。

LAQDAでは設置の際のバリエーションをつくることにより、生理用品を置きたい人たちが話し合う機会をつくり、自分たちの置きたい『置き方』を実現していただきたいと考えています。設置の仕方もそれぞれの施設で選んでいただくようにしており、緊急時用として1種類を設置している企業もあれば、複数種類の生理用品を設置した企業もあります。設置についてバリエーションがあることで「初めは1種類ずつ置こうと思っていたけれど、2種類並べた方がかわいかったので、みんなと話し合って2種類ずつ置くことにしました!」「自分が使ったことがない生理用品を試してみたら、意外に良かった!」などのコメントが寄せられ、周囲の人との対話が生まれることが確認できました。今まで生理はおろか、生理用品の話もしてこなかった方々が「自分だったらこれがかわいいと思う」「こっちの方が好き」「1種類でなく、2種類置きたい」「こんな期間限定品あったよ」など、ちいさなことでも気兼ねなく話をするきっかけにし、相手のことや自分のことも語れる機会にしていただきたいと考えております。

今まで話せなかった『言いづらい』生理について、ささいなきっかけをもとに、少しずつみんなで気兼ねなく話ができるようになることで、「見えない生理」を顕在化し、「見える生理」に変えていけると考えています。

【企業内ワークショップ、セミナーについて】

LAQDAでは、ジェンダーだけでなく、上下関係でも言いづらいことについて、あらゆる分断があると考えています。そのため、ちいさなアクションから、みんなで考えていくプロジェクトにするため、社内の方を巻き込み、生理用品設置ケース「せりぽん」を組み立てるワークショップ・みんなでこの問題を考えるための社内セミナーを開催しています。

  • ワークショップ:

企業内の方々がサービスの受け手となるだけでなく、なるべく多くの方がこのプロジェクトに主体的に関わっていただけるようにさまざまな工夫をしています。そのひとつとして、納品物としてケースをお渡しするだけでなく、ビル設置用のケースを共に組み立てることから社内を巻き込み、自然な形での対話の場づくりを行いました。

事例1:三井不動産本社にてビルディング本部の方と実施した組立会

*レポート記事はこちら:https://note.com/laqda/n/ncfacf3632b7e

事例2:東京建物本社にてビルマネジメント第一部の方を中心に実施した設置の説明・組立会

  • 社内セミナー:

企業内の方々をオンラインでお繋ぎし、生理用品をきっかけに対話を行うLAQDAプロジェクトについてご説明させていただきました。セミナーでは、展開先の企業担当者さまにゲストとしてご参加いただくことで、参加者のみなさまに課題をより身近に感じていただくように工夫しております。

事例1:小林製薬本社にて実施したセミナー

*レポート記事はこちら:https://note.com/laqda/n/ndc98105e8376

事例2:東急・東京建物・三井不動産の3社合同で実施したセミナー

*レポート記事はこちら:https://note.com/laqda/n/ne69cfdd69d7a

【社内セミナー実施で、ポジティブな行動変容が 98.5%】

LAQDAでは、ジェンダー関係なく参加いただけるセミナーを実施しています。生理の基礎知識からその歴史、現在でも誰にも相談できない悩みを抱え続ける状況が発生していることをお伝えするほか、社内の方にパネルディスカッションにご登壇いただくなど、社内理解を促進する内容といたしました。

セミナーに参加されたことで、ポジティブな行動変容が起きた人は98.5%でした。

具体的には、「みんなが気持ちよく働ける環境を考えていきたい」が66.7%。「身の回りで具合の悪そうな人がいたら、気遣ってあげたい」が41.3%。

生理の当事者が抱える悩みについて知る機会がない方も多く、セミナー終了後に起きた気持ちの変化についてお伺いしたところ、「背景を知らないことでコミュニケーションの誤解が生まれているのだと思った」との回答が44.3%となりました。これは、生理がない人だけでなく、生理がある人でも個人差があるため、自分以外の悩みの状況を知らないという状況があるためです。また、周囲に対する対処だけでなく、自分についても考える機会となり、「悩んでいることをフラットに相談したい」と回答した人も36.8%になりました。

【セミナーに参加した人の声】

  • これを機に、これまで以上に働きやすい会社になる足がかりができると思いました。雇用形態・労働時間・特別休暇・ハラスメント・資格取得・定年年齢・福利厚生・ジェンダー・SDGs・女性管理職率向上などなど、これまでに解決してきたこと、今後解決しなければならない事、女性だけではなく社員全員の労働環境の問題が解決できるように、今後も様々な活動をしてほしいです。

  • 男女関わらず、体調が悪くても無理して仕事を優先してしまう場面はあると思う。

  • 会社全体がパフォーマンスを優先する考え方になって、より健康に働ける職場になって欲しい。

  • 同じ女性でも、分かってあげられなかったことがあるのではないかと反省しました。個人差があるので、もっと周りの体調を気遣い、みんなが働きやすい環境にしていきたいと思いました!まずは、周りをよく見て、つらそうな人はいないか・その方に対してできることはないか考え行動していきます。

  • 男女ともに、きっかけさえあれば、どんどん考え方や社会が変わっていくのだと感じました。何でも気付いて行動することが大切ですね!新しい気付きをありがとうございます。

  • 自分の母親が『生理などは人前で話すことではない』という考えで、生理については自分の親でも話しにくいと感じていました。年齢を重ねて様々な人と話していく内に、そこまでタブー視しなくても良い事柄であると分かってきたものの、いまだに生理について人と話すのに抵抗があります。こういう取り組みがあることで、当たり前にある生理を当たり前のこととして皆で受け止め、フラットな自分として働ける気がしました。

【今後について】

LAQDAプロジェクトは、職場の生理用品設置に関する課題を、「言いづらい」ことに対する氷山の一角だと考えています。職場の生理の課題は、職場みんなの課題であると考え、今後も生理用品設置をきっかけに個人の「言いづらさ」を考える活動を行います。みんなを巻き込んで生理用品設置を考え、設置に至るまでの道をサポートする社会実証実験を継続して参ります。

  • ご参考

<わたしの暮らし研究所について>

わたしの暮らし研究所は、ひとりひとりの「わたし」の「暮らし」がよりよくなる社会を目指して設立されました。ひとりひとりの「わたし」に寄り添い、「わたし」起点の課題を「みんな」で解決できる社会づくりを目指しています。

※1:「言いづらい」個人の悩みを社会で考える、LAQDAプロジェクトについて

2019年当初、生理用品を使いたい時に使える社会設備を整えたいという思いで始まりました。今までに、アナログケースでのトイレへの生理用品設置実証実験、IoT生理用品ケースの設置や、スマホ制御での躯体での実証実験などを行ってきました。活動を続けるうちに、この問題を解決するために必要なことは、みんなで考えることだと気がつきました。 そこで、わたしたちはプロジェクト名「LACDA」の「C」を「Q」に変え、 「Q = Qusetion」とし、「LAQDA」を みんなで問題を解決するためのプロジェクトと定義しました。 「誰かの『困った』をみんなで解決するのにどうしたらいいのか」を社会のみなさまと包摂的に解くことを目指しています。

※2:「どうすれば、”みんな”で考えられるようになるのか ー職場の生理用品設備の共創的解決に向けた検討ー」(2022年11月)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaisigtwo/2021/CCI-008/2021_02/_article/-char/ja/

<経済産業省 令和4年度 フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金について>

働く女性の妊娠・出産や更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぐため、女性特有の健康課題は、女性本人だけではなく企業や社会全体で共に解決していくアプローチが欠かせず、その方策のひとつとして、フェムテックの活用が期待されています。経済産業省は、令和3年度より「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を立ち上げ、このようなアプローチを通じて女性の就業継続を支援し人材の多様性を高めることで、中長期的な企業価値の向上を図ります。

■本件に関するお問い合わせ

わたしの暮らし研究所株式会社 LAQDAプロジェクト

Email:info@wk-k.com

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