【声明】G7広島サミット世界的な危機に対する明確な誓約は示されずー国際NGOセーブ・ザ・チルドレン

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2023年5月20日、世界で最も豊かな7ケ国が参加し、広島で開催されたG7サミットの首脳宣言が発表されました。

セーブ・ザ・チルドレンは、G7首脳宣言において、平和や国際協力の重要性が盛り込まれたことを歓迎します。

 

数百万人の子どもたちが紛争の影響を受ける地域で暮らしており、身体的のみならず精神的な被害に遭う危険に晒されています1。紛争予防と平和の構築は、今の、そして未来の子どもたちの状況改善のために不可欠です。私たちは、G7が人道支援に210億ドルの資金拠出を約束したことに対しても、歓迎の意を表します。

 

しかしながら、私たちは失望もしています。現在なお続いている飢餓や、紛争などの緊急時における教育への人道支援や国際保健の分野において、明確かつ行動につながる誓約がなされなかったからです。これらの分野は、世界の子どもたちの暮らしと未来の改善にとって極めて重要です。持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限までの中間地点はすでに越え、もはや一刻の猶予もありません。

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドボカシー部長 堀江由美子は、次の通り訴えます。

『G7のリーダーたちは、世界中の子どもたちに対する明確な約束を示していません。国際保健分野においては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた具体的かつ実行しうる誓約がなかったことを残念に思います。

 

子どもたちの命を守るためには、必須保健・栄養サービスにすべての人がアクセスできるようにすることや、地域の保健ワーカーの能力強化支援など、プライマリーヘルスケアのアプローチによる保健システムの強化が不可欠です。

 

これらの分野に対し、首脳宣言で支持が示されていることは歓迎しますが、言葉を行動に移し、2023年9月に国連で開催されるUHCに関するハイレベル会合で重要な変革をもたらすためには、いま、G7によるリーダーシップが必要です。

 

さらに残念なことに、必要な人的資源や資金が不足している国々への資金拠出や、グローバル・ファイナンシング・ファシリティが必要とする資金ギャップに対する拠出など、国際保健に関する必要な取り組みに対して、G7による新たな資金誓約はなされませんでした。

 

また、世界が直面する未曾有の人道危機、とりわけ現在も続いている飢餓の危機に対してより明確な誓約がなかったことに失望しています。食料危機への対応を含む人道危機に210億ドルが約束されたことは歓迎しますが、「強固なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」には、これについて触れられておらず、どこにどのような規模の資金が拠出されるのか、不明瞭です。

 

現在、かつてないほど多くの子どもたちが飢餓に苦しんでおり、世界で食料不安に直面する人々は、過去4年間をみても毎年増加しています2。子どもたちやその家族を守るために、食料不安と飢餓に対する人道支援を一刻も早く、大幅に拡大することが必要です。

 

こうした緊急支援には、栄養・保健サービスの提供も求められます。さらに、栄養不良や食料不安の根本原因に対処するために、先行的行動と子どもに配慮した気候危機の緩和策および適応策に必要な資金を確保することも重要です。

 

加えて、私たちは日本政府に対し、緊急下における教育への支援についても誓約を行うよう強く求めてきました。

セーブ・ザ・チルドレンは、首脳宣言の中で包摂的かつ衡平で質の高い教育の確保が独立したパラグラフとして取り上げられ、すべての子どもたちの教育へのアクセスを含む教育の重要性が首脳宣言に明言されたことを大いに歓迎します。

 

また、紛争や自然災害などの緊急期・長期化する危機下における教育支援を行う唯一の国連の基金である「教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait(以下ECW)」が言及されたことを高く評価します。

 

しかし、2億2,200万人の紛争や災害などの危機の影響を受ける子どもや若者が教育支援を必要とし、1億3,000万人の少女が教育を受けられずにいる状況3を踏まえれば、特に紛争の影響を受ける地域に住む子どもや少女に対する教育支援のための具体的な資金拠出の誓約がなかったことを残念に思います。

 

本声明の発表時点では、ECWに対する日本政府からの初の拠出表明は出されていません。結果として、G7の中で唯一ECWに資金拠出を行っていないのは日本だけ、という状態のままとなっています。さらに、G7は、教育を攻撃から守る取り組みに対する資金拠出も、「学校保護宣言」への賛同・実施を世界の国々に求めることも、明言しませんでした。』

 

全体として、G7広島サミットでは重要な課題が議論されましたが、世界の子どもたちに喫緊に必要な変化をもたらすための明確な約束は示されていません。現在進行中の複合的な危機を解決するためには、緊急の行動と資金が必要であり、世界で力のあるG7の国々が政治的な意志を示し、リーダーシップを発揮することが求められます。

 

  1. Stop the War on Children: A crisis of recruitment, Save the Children (2021) 
    https://resourcecentre.savethechildren.net/pdf/SWOC-5-5th-pp.pdf/

  2. 2022年末の時点で、世界で2億5,800万人が緊急の食料支援を必要とする急性食料不安の状態にありました。これは2021年から5,000万人以上増加しています。2023 Global Report on Food Crises: Joint Analysis for Better Decisions (May 2023) 
    https://www.fsinplatform.org/sites/default/files/resources/files/GRFC2023-brief-EN.pdf

  3. The world is failing 130 million girls denied education, OHCHR (23 Jan 2023)
    https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/01/world-failing-130-million-girls-denied-education-un-experts

<セーブ・ザ・チルドレンとは>

 セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもにとって、生きる、育つ、守られる、参加する、「子どもの権利」が実現されている世界を目指して活動する子ども支援の国際 NGO です。1919 年に英国で創設され、現在、日本を含む 30 の国と地域の独立したメンバーが連携し、約 120ヶ国で子ども支援活動を展開しています。

https://www.savechildren.or.jp/
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