早老症治療剤「ゾキンヴィ」の製造販売承認申請に関するお知らせ

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アンジェス株式会社(大阪府茨木市、代表取締役社長:山田 英。以下、当社)は、乳児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群とプロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチーの治療剤である「ゾキンヴィ」(一般名:ロナファルニブ)について、本日、厚生労働省に国内製造販売承認申請を行いましたのでお知らせいたします。

■「ゾキンヴィ」について

 「ゾキンヴィ」は、Eiger BioPharmaceuticals Inc.(本社:米国カルフォルニア州; 社長:デイヴィッド・コリー; 以下、「アイガー社」といいます)が米国において2020年11月に承認を得て販売されております。「ゾキンヴィ」は、当社が2022年5月に日本における独占販売契約をアイガー社と締結し、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品(オーファン・ドラッグ)に指定されました。

 ゾキンヴィ(一般名:ロナファルニブ)は、米国Eiger BioPharamaceuticals Inc.(アイガー社)が販売するハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)及びプロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチー(PL)の治療薬として、2020年11月に米国食品医薬品局(FDA)、2022年7月に欧州連合、2022年8月に英国で承認されました。

 ゾキンヴィは、HGPSやプロセシング不全性のPLの小児及び若年成人において、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害します。ゾキンヴィは、ファースト・イン・クラス(注1)の疾患修飾剤であり、小児及び若年成人のHGPS及びプロセッシング不全性のPLにおいてその薬効が検討されました。その結果、HGPSの患者において、ゾキンヴィは死亡率を60%減少し(p=0.0064)、平均生存期間を2.5年延長しました(p<0.0001)。多くの患者は、10年以上にわたってゾキンヴィ治療を継続しており、最も多く報告された副作用は消化器系(嘔吐、下痢、悪心)で、そのほとんどが軽度又は中等度(グレード1又は2)です。

当社では、日本国内においてゾキンヴィの使用が見込まれる患者数は数名程度と見込んでおります。

■HGPS及びPLとは

 ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロジェロイド・ラミノパチー(PL)は、それぞれが大変希少な致死性の遺伝的早老症で、若い時点から死亡率が加速度的に上昇します。HGPSは、LMNA遺伝子の点突然変異により、ファルネシル化(注2)された変異タンパク質であるプロジェリンが生成されることにより発症します。PLは、LMNAやZMPSTE24遺伝子の変異により、プロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質が生成され、老化が促進されます。いずれの病型ともに、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、関節拘縮、骨格形成不全、動脈硬化の促進などの早老症状が現れ、動脈硬化性疾患(心筋梗塞あるは脳卒中)により若年期に死亡するとされ、HGPSの平均年齢は14.5歳と報告されています。

■アンジェスの取り組み

 当社は、2022年5月10日にアイガー社と、HGPSとPLの適応症の治療薬であるゾキンヴィ(ロナファルニブ)について、日本における独占販売契約を締結しました。2023年3月に、ゾキンヴィは厚生労働省により希少疾病医薬品(オーファン・ドラッグ)(注3)に指定されました。

当社は事業目的として、治療法がない疾病分野や難病、希少疾患などを対象にした革新的な医薬品の開発を通じて、国民生活や医療水準の向上に貢献することを目標としており、そのためにも国際的に通用する革新的な医薬品を少しでも早く患者様にお届けすることを目指しており、今回のゾキンヴィの製造販売承認申請もこの目的に沿ったものです。

また、当社は2021年に開設した衛生検査所アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)で、新生児の希少遺伝性疾患のスクリーニング検査を受託しており、ACRLにおいてHGPS及びPLについて確定のための遺伝子検査を実施できるよう準備を進めています。

加えて、ファルネシル化した変異タンパク質の蓄積を阻害するというゾキンヴィの作用機序による効果が期待できる新たな疾患への適応も検討してまいります。

(注1)

ファースト・イン・クラス:新規性・有用性が高く、化学構造も従来の医薬品と基本骨格から異なり、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的医薬品を言います。

(注2)

ファルネシル化:タンパク質に行われる修飾の一種です。ファルネシル化酵素により、タンパク質の末端には疎水性のプレニル基が結合します。末端が疎水性になったタンパク質は、その疎水性の部分を細胞膜内に挿入するため、タンパク質は細胞膜あるいは核膜の内膜につなぎ留められます。つまり、ファルネシル化されたタンパク質は、細胞あるいは核の上に代謝を受けず存在するようになります。

(注3)

希少疾病医薬品:日本の対象患者数が 50,000人未満であり、重篤な疾病の治療手段として特に医療上の必要性が高いことなどを条件に、希少疾病用医薬品を指定します。希少疾病用医薬品の指定を取得すると、優先審査のほか、指定の適応症に対して承認を取得した場合には10年間の再審査期間が認められるなどのメリットや支援措置を受けることができます。

■アンジェスについて

・商号   :アンジェス株式会社

・本社所在地:大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ

・代表者  :山田 英(代表取締役 社長)

・事業内容 :遺伝子医薬品の研究開発

・資本金  :34,559百万円(2023年5月10日現在)

・設立日  :1999年12月17日

・証券コード:4563(東京証券取引所グロース)

・HP    :https://www.anges.co.jp/

アンジェスは、遺伝子医薬技術を活用し、革新的な医薬品開発に取り組むバイオ製薬企業です。遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指し、遺伝子の働きを利用した新しいタイプのバイオ医薬品である遺伝子医薬の開発を行っています。

また、希少遺伝性疾患のスクリーニング検査を中心として、検査受託サービスを実施しています。

さらに、当社子会社であるEmendoBio社では、究極の遺伝子治療であるゲノム編集について先進技術を保有しており、今まで治療法のなかった疾患の治療を可能にするゲノム編集製品を患者の方々に届けできるよう研究開発を進めております。

当社は大阪大学の基礎研究を基に1999年に設立されて以降、研究と開発の段階を経て、足の血流が極度に悪化する慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品については、2019年3月、国内における条件及び期限付製造販売承認を取得し、同年9月に田辺三菱製薬より製造販売を開始しました。これは国内では初の遺伝子治療用製品となります。またプラスミドDNAを使用した製品化は世界初となります。

当社は、その他にも、椎間板性腰痛症を対象とした核酸医薬「NF-κBデコイオリゴ」などの開発も進めています。

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