夏目光学、東京大学 先端科学技術開発センターに「先端光学素子製造学」寄付研究部門を設置

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光学・レンズ技術の夏目光学株式会社(本社:長野県飯田市、代表取締役社長:細江国彦)は、2023年4月1日より東京大学先端科学技術研究センターに「先端光学素子製造学」寄付研究部門を設置いたしました。ナノメートル精度の光学素子製造プロセスの開発や、自動化に関する研究を通じて、高度化する光産業分野への貢献をめざします。
  • 発表者

細江 国彦 (夏目光学株式会社 代表取締役社長)

 

  • 発表のポイント

◆教育研究の進展および将来に向けて高度化する光産業分野への貢献を目的とし、夏目光学株式会社(以下、夏目光学)は東京大学先端科学技術研究センター(以下、東京大学先端研)に寄付研究部門を設置。

 

◆2023年4月1日より、「先端光学素子製造学」寄付研究部門として次世代光学素子のための先端的な製造プロセスを開発する。

 

◆主に、ナノメートル精度の加工・計測・転写による超精密な光学素子製造プロセスの開発、ロボット・AI導入による光学素子製造の自動化に関する研究に取り組む。

 

  • 背景

 夏目光学と東京大学先端研の三村秀和教授は2012年から共同で軟X線(注1)光学素子の開発と高精度化を続けており、従来にないタイプの高精度回転体X線ミラー(注2)の実現に成功しています。同グループは、極めて高い形状精度を必要とする軟X線ミラーの開発過程で「加工技術」「計測技術」「転写技術」のすべてをナノメートルレベルの超高精度にまで高めてきました。

 これらの研究成果を基に、更なる高度な科学的ニーズ・社会的ニーズに対応する研究の進展と若手研究者の教育機会の創生を目的として、東京大学先端研に寄付研究部門を設け、次世代光学素子のための先端的製造プロセスの研究をおこないます。

 

  • 発表内容

 テラヘルツ光からX線まで、すべての光は光学素子(レンズやミラーなど)によって制御されることではじめてその真価を発揮します。光利用技術の性能は光学素子のクオリティで決まると言っても過言ではありません。例えば、光通信技術、レーザー加工技術、そして国際的にも重要物資となりつつある半導体デバイスの重要な製造プロセスの一つである露光技術などは、光学素子の性能向上や活用方法の開発によって飛躍的な発展を遂げてきました。さらに将来の高度な科学的ニーズ・社会的ニーズに対応し続けていくためには、最先端の機能を有する光学素子が必要となります。

 夏目光学と東京大学では、2012年より光学素子においては最も高精度であるX光学素子の研究開発を共同で進めてきました。その研究過程において、「ガラス加工技術」「表面計測技術」「電鋳(注3)転写技術」をナノメートル精度まで高め、従来にないX線光学素子の実現に成功しました。(後述 図1、図2)

 同グループの研究成果を基に、夏目光学の寄付により東京大学先端研に「先端光学素子製造学」寄付研究部門を設置し、将来に向けて更なる高度化とともに多様化する光学システムの要求に応えるために、ロボット・AIなどの最新の学問に基づく光学素子製造プロセスを研究します。

 本研究部門の主な研究テーマは以下の4つとなります。

  ① 幾何光学・波動光学のハイブリッド光学設計理論の構築

  ② ナノ精度の加工、計測、転写による超精密な光学素子製造プロセスの開発

  ③ SDGsに対応した環境配慮型の光学素子製造プロセスの研究

  ④ ロボット・AI導入によるミラー・レンズ製造の自動化に関する研究

 本研究部門には東京大学先端研 三村秀和教授、本山央人特任講師を迎え、2023年4月1日に設置し研究を開始しました。

2023年3月31日に本寄付研究部門の発足集会を実施2023年3月31日に本寄付研究部門の発足集会を実施

左から:夏目光学 松澤係長/東京大学先端研 本山特任講師/東京大学先端研 三村教授

    夏目光学 細江社長/夏目光学 橋爪常務/夏目光学 平栗課長

 

  • 用語解説

(注1):軟X線

X線は、波長が非常に短い光である。波長が1nm(ナノメートル:1ナノメートルは10億分の1メートル)近傍のX線を「軟X線」、波長が0.1nm近傍のX線を「硬X線」という。軟X線は、材料の中でも酸素、炭素などの軽元素の分析によく使われる。

 

(注2):回転体X線ミラー

1点に集光する特性を持つ関数の軸を中心に、その関数を1回転して得られる立体形状を持つX線ミラー。主に楕円や、楕円と双曲線を組み合わせた関数を基に、必要とされる光学性能に合わせて回転体が設計される。回転体の内面にX線が照射され、1回もしくは2回の反射を経て1点に集光される。集光点に分析試料などを設置し、材料分析や観察などを行う。

 

(注3):電鋳

めっき技術を応用した形状転写手法。目的とする形状の反転形状を持つ「型」の表面に、金属を厚く電析し、それを分離して目的とする製品を得る方法。ニッケルや銅が電析の材料として用いられる。金型製造などにおいて不可欠な技術の一つ。

 

  • 添付図

図1:高精度軟X線用 回転体ミラー(左:X線顕微鏡用ミラー 右:X線望遠鏡用ミラー)

高精度軟X線用 回転体ミラー高精度軟X線用 回転体ミラー

図2:高精度軟X線用 自由曲面ミラー(左:シリコン材ミラー 右:ガラス材ミラー)

高精度軟X線用 自由曲面ミラー高精度軟X線用 自由曲面ミラー

 

  • 問い合わせ先

〈研究担当〉

夏目光学株式会社 テクノロジーセンター

技術本部長 橋爪 寛和

 住所:〒399-2431 長野県飯田市川路1200-29

 TEL:0265-27-5171 FAX:0265-27-6171

 E-mail:hirokazu.hashizume@natsume-optics.co.jp

 

〈広報担当〉

夏目光学株式会社

管理本部長 本田 英則

 住所:〒395-0808 長野県飯田市鼎上茶屋3461

 TEL:0265-22-2435 FAX:0265-22-2467

 E-mail:hidenori.honda@natsume-optics.co.jp

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