ダリエン地峡を渡る子ども、昨年比7倍~年初2カ月としては過去最多【プレスリリース】

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ダリエン地峡を横断し、Lajas Blancasにたどり着いた家族。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793521_urdanetaダリエン地峡を横断し、Lajas Blancasにたどり着いた家族。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793521_urdaneta

【2023年3月30日 パナマシティ発】

コロンビアとパナマの間にある危険なダリエン地峡を徒歩で横断する子どもの数が、2023年初めの2カ月間に昨年同期比で7倍に増えたと、ユニセフ(国連児童基金)は本日警鐘を鳴らしました。

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今年1月と2月に、9,700人近い子どもたちがダリエン地峡を渡って北米に向かいました。そのほとんどが米国を目指していると思われます。これは、2カ月間の記録としては過去最多の数です。昨年の同期間、パナマ当局が登録した子どもの数は1,400人未満でした。
 

ユニセフとパートナーが支援する移民受け入れセンターで、安全な水を飲むベネズエラからの移民の3歳のアンドレちゃん。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793491_ユニセフとパートナーが支援する移民受け入れセンターで、安全な水を飲むベネズエラからの移民の3歳のアンドレちゃん。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793491_

暴力の脅威から逃れ故郷を捨てる人々やより良い機会を求めて移住する人々がダリエン地峡の熱帯雨林を歩いて越えようとします。その5人に1人が子どもであり、その数は各世代の中で最も急速に増えています。さらに、おとなの同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもの数が増え続けています。2023年の年初の2カ月間で、ユニセフは、パナマに一人きりで到着する子どもは毎日平均5人、少なくとも計200人はいると推定しています。昨年、ユニセフが同期間に登録したおとなの同伴者がいない、もしくは離ればなれとなった子どもは40人未満でした。特におとなの同伴者のいない子どもたちは、暴力、虐待、搾取に遭いやすいのです。

パナマシティより報告を行ったユニセフのラテンアメリカ・カリブ海諸国地域事務所のギャリー・コニーユ代表は、「私たちの現地チームは、単独で、あるいは両親と一緒にパナマのジャングルを横断する子どもの数がこれほど急増している状況をこれまで見たことがありません。ユニセフは、パナマ政府の対応を支援するため、人道支援を強化しています。しかし、水、母子保健、子どもの保護に関するサービスをすべての子どもが利用できるようにすることは、週を追うごとに困難になってきています。現在の傾向が続けば、今年パナマを通過し移動を続ける子どもの数は、昨年登録された総数をはるかに超えるでしょう」と述べています。

多数の死傷者を出した2月のバス事故の後、当局が国境から国境への人々の通過を一時的に停止した際、約1,300人の子どもを含む6,500人以上がダリエン(パナマ)のホストコミュニティや移民一時受入れセンターに取り残されました。その結果、ダリエンのシェルターに来る人の数は、時には収容能力を600パーセントも超えることがありました。現在も、飲料水、衛生、食料、医療といった基本的なサービスへのアクセスは不十分なままです。輸送サービスは再開されたものの、1日あたりの到着人数が多いため、子どもたちとその家族にとって適切な状態を保証することや、移動ルート上の国々で秩序ある安全な移動の流れを保証することは、難しくなっています。
 

移民受け入れセンターにあるユニセフの子どもにやさしい空間で、心のケアや就学前教育の支援を受ける、移民の子どもたちと地元の子どもたち。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793507_移民受け入れセンターにあるユニセフの子どもにやさしい空間で、心のケアや就学前教育の支援を受ける、移民の子どもたちと地元の子どもたち。(パナマ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0793507_

コロンビア、パナマ、およびその他の中米諸国において、ユニセフとそのパートナーは、人々の移動によって影響を受けているコミュニティに加え、移動してきた子ども、妊婦、家族に対して、命を守るための長期的な支援を行っています。ユニセフが行う支援活動には、心理社会的サポートと子どもの保護、ケースマネジメント、母子保健、水と衛生設備の利用、ジェンダーに基づく暴力を防止し対応するためのサービスなどがあります。

「ラテンアメリカとカリブ海地域では、多くの子どもたちが単に1つの国境を越えるだけでなく、極限の状況で複数の国を横断しているのです。そして、この数が増え続ける中、出身国、通過国、目的国の政府、市民社会組織、国際機関が協力して、移動中に子どもたち一人ひとりの権利が守られるよう担保する必要があります」と、コニーユ代表は付け加えました。

ユニセフは、受け入れ国政府に対しては増加する子どもの流入への対応を強化するよう、またドナーやパートナーに対しては、受け入れコミュニティや移動してくる家族の子どもや女性の増大するニーズによりよく対応するために、使途が柔軟な追加資金を投入するよう、要請します。対応内容は以下の通りです。

  • 水、母子保健、保護、食料、シェルターなどの重要なサービスの提供を維持・改善する
  • 移動する子どもの権利を保障するために、国境を越えた調整メカニズムを強化する
  • いかなる時も子どもの安全と保護を確保するため、移動中の安全対策を強化する
  • 移動する子どもたちの特定のニーズを考慮した長期対応計画を確立するための制度的能力を強化する

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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