全国的に少子高齢化が進む中、高齢化率が比較的低い刈谷市においても、健康づくりや医療体制の充実については市民の関心度が非常に高く、また、団塊の世代が75歳以上となる 2025 年以降は、高齢化率の急速な上昇が見込まれています。中でも、急性期医療から介護・在宅までのシームレスな連携は、より快適に医療福祉サービスを享受するための重要な課題の一つです。本実証では、スマートデバイスで取得したライフログデータ※を活用して、施設間の患者転院時等における患者情報の連携向上の効果を検証するとともに、在宅における遠隔診療や見守りなどの実施による新たな患者・市民サービスの有効性について検証を行いました。
※ 睡眠計測センサーを活用し、利用者の一日の行動から取得できるデータ(呼吸数・心拍数・睡眠覚醒など)の収集・蓄積された情報
2.取り組み概要と得られた成果
①概要
睡眠計測センサーを活用し、在宅患者の体調把握のため、ライフログデータを日々収集。また、日々の見守りや、夜間に長時間ベッドから離床されている患者・在宅高齢者等の訪問判断等を実施しました。
実証期間:2022年11月1日~2023年1月31日
場 所:医療法人豊田会(刈谷豊田総合病院、刈谷訪問看護ステーション、高浜訪問看護ステーション)
図1 ライフログデータ収集イメージ
②成果
最近はさまざまな見守りツールやスマートデバイスがあるが、今回使用したシート型の睡眠計測センサーは、マットレスや敷布団の下に敷くもので身体に何も装着することなく睡眠状態が把握できるため、身体への負担や抵抗感が少なく長期にわたる患者の状態把握に有用であることが検証されました。
また、従来「定性的な観察結果」として得ていた睡眠情報が「定量的な連続情報」となって得られることで、在宅における患者の睡眠サイクルの把握につながり、患者や家族にとっても在宅生活をつづける上での安心材料になることが分かりました。医療従事者側も、独居や認知症等で本人・家族からの正確な情報収集が困難である場合でも、睡眠に関わる療養上の課題が明確になり、処方を含むケアプランの変更に役立てることができ、在宅におけるケアの質の向上にもつながったと考えられます。
今後、在宅医療が進む中でこのようなセンサーデバイスから得られる情報(ライフログデータ)は患者本人・家族と医療従事者をつなぐハブとしての活用が期待できます。
図2 本実証に関する本人/家族/医療従事者へのアンケート結果
3.実証関係者の体制と役割
・刈谷市:刈谷スマートウェルネスプロジェクト代表
・豊田会:データ取得協力、在宅医療に関するノウハウの提供
・NTT西日本グループ(NTT西日本、NTT ビジネスソリューションズ株式会社)
:データ取得、分析、分析結果の可視化
・パラマウントベッド:睡眠計測センサーを活用した取り組みノウハウの提供
4.今後の展開について
必要な医療や介護を適切に安心して受けられる地域医療福祉体制の充実に向け、本実証により得られたノウハウ等を活用し、在宅における遠隔診療や見守り等の新たな患者・市民サービスの有効性について、各社で連携しながら検討を進め、刈谷市が掲げるスマートシティの実現をめざしてまいります。