一般的に、高撥水・超撥水効果を持つプラスチック部品を製造するためには、射出成形したプラスチック部品に撥水剤の塗布や撥水シートを貼る等の二次加工を施す必要がありました。このため、二次加工のための資材および作業コストが余分にかかるだけではなく、塗装時の作業者に対する有機溶剤の影響など環境面での問題が懸念されています。
この問題を解決するため、IBUKIは、二次加工なしに射出成形により、成形するだけで超高い撥水効果が得られる金型製造技術を開発しました。つまり、「射出成形打ちっぱなし」でプラスチック部品に撥水機能を付加することができる技術です。
IBUKIは、従前より精密切削技術による射出成形金型を得意としており、これまでは主に加飾(プラスチック表面に多様な柄を施す)を目的として射出成形金型の表面に微細な柄を加工してきました。この技術により、ヘアライン柄、千鳥模様、切子模様、植物模様や石材の模様など、多様な柄を射出成形だけで実現してきました。IBUKIはこの技術を活用し、自動車内装部品や家電製品など幅広い分野で加飾成形金型を提供してきました。
ここで、IBUKIの開発チームは、柄の加飾目的だけではなく、同じ技術を活用して機能性のあるプラスチック部品が製造できないかと考えました。そこで生まれたのが、「精密加工技術を用いた撥水機能を持つプラスチック部品」でした。プラスチック部品の物質の表面に微細な凹凸加工を施すことで撥水機能が得られることはロータス効果として知られていますが、この原理を用い通常の射出成形設備で容易に撥水性の高いプラスチック部品の実現に取り組みました。2年に及ぶ研究開発の結果、サンプル品ではありますが、PP(ポリプロピレン)樹脂を用いて超高い撥水効果が得られることを実証いたしました。
凹凸加工を施さない通常のプラスチックの場合、撥水角は90-100度程度ですが、IBUKが開発した超撥水プラスチック部品は撥水角が140度からさらに成形条件を好適化することで150度を超え、「超撥水」と呼ばれる高い撥水性を持つことを確認しました。
左:通常のプラスチックの撥水角サンプル、右:撥水プラスチック部品サンプル
この技術を用いることにより、これまで実現できなかったさまざまな課題が解決されます。
・二次加工が不要になる
これまで追加作業として行っていた二次加工である撥水剤の塗布や撥水シートの貼り付け作業がなくなります。追加素材や工数が削減されます。
・撥水剤が塗布しにくい、撥水シートが貼りにくい形状でも撥水性を得られる
射出成形時に凹凸を成形するため、曲面上にも撥水効果を一律に与えることができます。
・二次加工によるミスがなくなる
撥水剤の塗布や撥水シートの貼付は作業ミスによる失敗が発生する可能性があります。射出成形のみで加工できればこれらの二次加工ミスは発生することはありません。
本技術を利用したプラスチック部品の用途としては、自動車内装部品やエアコン関連部品、家電関連など、広い分野で適用できると考えています。また本技術は反射防止やしっとりとした触感の付与などの効能もあることがわかってきました。PPだけではなく、さまざまなプラスチック素材で実現できるように研究開発を継続してまいります。
IBUKIは、今後も撥水性だけではなくさまざまな機能的特徴を持つプラスチック部品金型を研究開発し、日本だけではなく世界に高機能な金型を提供する会社として成長していきます。
株式会社IBUKI
代表取締役社長執行役員 :中東秀喜
本社 :山形県西村山郡河北町谷地字真木160-2
設立 :1956 年8月
資本金 : 7,800万円
事業内容 :
◆射出成形金型の設計、製造
◆各種プラスチック成形品の試作及び量産
◆微細な特殊加工の研究開発
◆設計者/製造者向け金型・成形に関するノウハウの伝授及び指導
◆海外サプライヤー監査及び指導
◆海外金型立ち上げ及びメンテナンス