東日本大震災からまもなく12年 被災地での防災意識調査 約8割が防災意識の薄れを感じている

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防災・減災事業、インフラ・メンテナンス事業等に取り組む応用地質株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締役社長 成田 賢、以下 応用地質)は、東日本大震災での被災地(岩手・宮城・福島)に在住している18歳~69歳、男女1500名を対象に「被災地での防災意識に関する調査」を行いましたので、調査結果を発表いたします。
未曽有の被害をもたらした震災から、まもなく12年を迎えようとしています。被災地においても高齢化や人の入れ替わりなどが進み、防災意識の薄れなども懸念されています。防災・減災に関わる事業を展開する企業として、逃げ遅れを最小限にし、あるべき災害への備えや、昨今取り組まれている防災のデジタル化を含めた防災の在り方を考えていく目的で、本調査を実施いたしました。

【調査概要】
調査時期:2023年2月17日~2月20日
調査対象:岩手・宮城・福島の18歳~69歳 男女1500名
調査手法:インターネットによるアンケート調査
※調査結果・データは四捨五入しており、合計パーセンテージが100%にならない場合がございます
 

  • 調査サマリー

■被災地での防災意識、約8割が「薄れている」
■防災意識が薄れている理由  高頻度の注意報や避難情報による「警報慣れ」が理由と約3人に1人が回答
■防災意識が薄れていない理由に「地震・津波の報道」や「経験を風化させない取り組み」
■千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震
   自身や家族・親戚が浸水エリアに住んでいるか把握していないと回答は4人に1人
■津波浸水エリアに住んでいると回答した人のうち、約4人に一人は「10分以内の避難開始」が難しい
■「体が不自由なため、 10分以内の避難開始は難しい」が最も多く、災害弱者等への支援が課題
■防災デジタル化、半数以上が「地震や津波の予測精度の向上」に期待

 

  • 被災地での防災意識、約8割が「薄れている」

被災地の防災意識について質問したところ、「薄れている(27.3%)」、「どちらかというと薄れている(50.1%)」と回答し、年数が経つにつれ、被災地での防災意識の薄れを感じていることが浮き彫りになりました。

■防災意識が「薄れていない」は若い世代の方が多い結果に
また、年代別で見てみると「薄れていない」との回答が若い世代に多い結果となりました。ただし、高い年齢層ほど、地域全体の防災意識が薄れていることに危機感をもって「薄れている」と回答している可能性もあるため、この結果には今後さらなる分析が必要と考えられます。

■「薄れている」との回答が最も多いのは震災時に3県に在住していて震災も経験した層
「薄れている」「どちらかというと薄れている」という回答が最も多いのは、震災時に3県に在住していて震災も経験した層でした。前の質問と同様、被災者自身の意識が薄れていると感じているのか、地域全体の意識の薄れに対する危機感の表れであるのかは、今後さらなる分析が必要です。

 

8割以上の人が震災時も「在住していて震災も経験した」と回答。一方震災後に移住してきた人が8.9%いることもわかりました。
 

  • 防災意識が薄れている理由 約3人に1人が注意報や避難情報が頻繁に続くことによる“警報慣れ”

防災意識が薄れている理由として、約3人に1人は「注意報や避難情報が頻繁で慣れてしまったから」と回答しました。被災地であっても、注意報や避難情報が頻繁に続くことで、 いわゆる“警報慣れ”という状況が生まれている実態が浮き彫りになりました。また、「被災経験を風化させない取り組みが十分でない/減ってきたから」や「被災経験者が減ってきたから」と回答した人もおり、継続的に被災経験を伝える取り組みが重要であることも示しています。
一方、「国や自治体の防災対策事業やインフラ整備が進み安心感が増しているから」との回答もあり、国や自治体の復興事業の成果に対し、一定の評価をしている様子も見受けられました。
 

  • 防災意識が薄れていない理由に「地震・津波の報道」や「経験を風化させない取り組み」

 

防災意識が薄れていない理由は「震災の悲惨さを実際に経験しているから(67.5%)」が最も多く、次いで「地震・津波に関する報道を目にする機会が多いから(41.1%)」となりました。「家族や自治体、学校での経験を風化させないように取り組みが行われているから(24.9%)」との回答も含め、報道や地域・学校等での取り組みが防災意識を高く維持していく上で重要な役割を果たしていることもわかりました。
 

  • 防災意識を薄れさせないために最も必要なのは「防災訓練など地域や自治体の取り組みの活性化」

防災意識を薄れさせないために必要だと思うことで最も多かったのは、「定期的な防災訓練やイベントなど地域や自治体の取り組みの活性化(51.7%) 」。次いで多かったのが「ハザードマップなど、災害リスクに関する情報の利便性向上(49.4%)」でした。
 

  • 千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震「自身や家族・親戚が浸水エリアに住んでいるかわからない」、「被害想定自体知らない」との回答は4人に1人

 

千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震の被害想定について「調べていないので、浸水エリアに該当しているかわからない(15.0%)」、「被害想定の発表自体、知らない(10.6%)」の合計は、4人に1人という結果でした。
また、世代別でみると若い世代ほどわからないと回答した人が多いことがわかりました。
 

  • 千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震の浸水エリアに住んでいるが10分以内に避難可能もしくは自宅付近に避難施設のある人は約7割

千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震では、津波避難施設を整備することや、地震から10分ほどで人々が避難を始めれば、犠牲者は80%減らすことができるとも推計されています。浸水エリアに住んでいる多くの人は、「10分以内に避難開始できる準備は常にできている(74.1%)」、「自宅すぐ近くに津民タワーなどの避難施設がある(64.6%)」と回答しています。一方、「いずれにも該当しない」との回答は、34.6%となりました。次項では、その理由についての調査結果がでています。
 

  • 「体が不自由なため、 10分以内の避難開始は難しい」が最も多く、災害弱者への支援が課題

前の質問で「いずれにも該当しない」と回答した理由について、「体が不自由なため、 10分以内の避難開始は難しい(69.6%)」が最も多く、次いで、「高齢者や要介護者がいるため、 10分以内の避難開始は難しい(46.0%)」という結果になりました。
災害情報の充実など、防災意識を高める取組みやサービスだけでは十分ではなく、住民の逃げ遅れを無くすためには、いわゆる災害弱者にも配慮した、「誰も取り残さない」きめ細かな防災対策等が必要不可欠であると考えられます。
 

  • 確実に避難するために最も重要だと思うことは「正確な避難情報」

巨大地震や津波から確実に避難するために必要だと思うことで最も多い回答は「正確な避難情報(57.5%)」、次いで「避難施設の早期整備(44.0%)」、「高齢者や要介護者が確実に避難できるような行政の施策(41.7%)」が続き、行政の施策への期待が大きいことがうかがえます。
一方で、災害の教訓を風化させない地域の取り組みや有事に助け合える近所同士のコミュニティなど自助・共助の重要性を認識していることもわかりました。
 

  • 防災デジタル化、半数以上が「地震や津波の予測精度の向上」に期待

防災のデジタル化に対して期待することとして、「地震や津波の予測精度の向上(57.5%)」や「空振り※の少ない的確な避難情報の提供(36.9%)」など、情報精度の向上に期待する声が多い結果となりました。また、「避難物資などの在庫最適化(40.3%)」など、被災後の対応にもデジタル活用に高い期待があることがわかりました。

※地震発生後に自治体・メディア、防災アプリ等から避難の呼びかけがなされたものの、結果的に被害はなかったというような状況を「空振り」と称します
 

  • まとめ

今回の調査では、東日本大震災から12年を経た「被災地の防災意識の変容」や避難行動に対する考えなどの実態を調べました。

結果、多くの人が被災地での防災意識の薄れを感じていることがわかりました。
その理由として、「震災以降、時間が経過し、同規模の災害は起こっていないから」が最も多い結果となりました。また、「注意報や避難情報が頻繁で慣れてしまった」との回答も多かったことから、いわゆる「警報慣れ」と思われる実態も明らかになりました。
一方、約4人に1人が「国や自治体の防災対策事業やインフラ整備が進み安心感が増しているから」と回答しており、国や自治体の復興事業の成果に対し、一定の評価をしている様子も見受けられました。ただし、いわゆるハード対策ですべてのレベルの災害を防ぐことはできないため、災害の到来を「自分ごと」化し、いざというときに着実に避難を開始することができるよう、ソフト対策を含めたトータルでの事前防災の取組みが重要であると考えられます。

一昨年国から公表された千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震の被害想定に関しては、若い世代(18~39歳)で「調べていないので、(自身や家族・親戚が今住んでいる場所が)浸水エリアに該当しているかわからない」、「被害想定の発表自体、知らない」と回答した割合が高く、防災意識や避難行動に対する備えが低い状況が明らかになりました。
また、この地震では、発生から10分以内の避難開始により、犠牲者を80%減らすことができるとの見解が示されていますが、津波浸水エリアに住んでいると回答した人のうち、約4人に一人は「10分以内の避難開始が難しい」と回答しました。その具体的な理由については、「体が不自由」、「高齢者や要介護者がいる」、「ペットがいる」などの回答が多く集まりました。住民の逃げ遅れを無くすためには、単に防災意識や情報伝達だけを問題にするのではなく、災害弱者など多様性に配慮した多面的な防災対策の必要性を改めて認識いたしました。

応用地質では、防災に関わる業務を主たる事業の一つとしている弊社の今後のサービスの向上および、社会貢献活動の一環として本調査を実施しました。本調査結果が、少しでも社会の防災・減災力向上に貢献できれば幸いです。応用地質では今後とも、インフラや自然環境、災害などに関する独自調査を行ってまいります。
 

  • 会社概要

社名    :応用地質株式会社 (OYO Corporation) https://www.oyo.co.jp/
住所    :〒101-8486  東京都千代田区神田美土代町7番地
代表取締役社長  :成田 賢
設立    :1957年(昭和32年)5月2日
資本金   :161億7,460万円
株式市場  :東京証券取引所プライム市場
社員数   : 2,438名 (連結)、1、209名 (単体)(2022年12月31日現在)

■目からウロコな防災メディア「防災・減災のススメ」
https://www.oyo.co.jp/bousai-gensai/

 

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