しかし、芸術が人間の知的実践である以上、批評から創造性が失われることは、すなわち芸術創造の形骸化に帰結することになります。批評をめぐるこの困難な状況において、批評とはどのような創造的実践であり、そして、どのような生産的活動でありうるのかを議論することには意味があるはずです。
今後の芸術の未来に向けて、批評はどのような役割を担うことができるのか――。
Yumiko Chiba Associatesと文化庁の共催による本シンポジウム「生産/実践としての批評」では、イギリス、フランス、日本の各国で、批評的実践に携わってきた論者が集まり、各国で積み上げられてきた批評的実践の蓄積と、現代社会におけるその現状について問題を共有し、新たな思考、文化的な回路を開くための意見交換を行います。
< 概 要 >
開催日程| 2023年3月12日(日)
開催時間| 14:00〜17:00
開催会場| 六本木ヒルズ ハリウッドビューティプラザ ハリウッド大学院大学 7F 教室(東京都港区六本木6丁目4−1)
参加方法| 現地聴講のみ(参加無料/事前申込/空席があれば当日参加受付も可能)
▶︎▶︎申込URL:https://www.hollywood-jp-online.com/view/item/000000001092
使用言語| 日本語(英日逐次通訳あり)
共 催| Yumiko Chiba Associates / 文化庁
会場協力| ハリウッドビューティーグループ
「生産/実践としての批評」
本企画は、文化芸術の世界的な発展を実現するために、トップレベルのアーティスト等の人材育成、及びキャリア形成支援を通じた国際的なネットワークの構築を目指す上で、「批評」という軸を不可欠な要素として位置づけています。国際的影響力を持つ批評の充実を図るため、有望な批評家を海外に派遣し、その育成に取り組み、また国内においてもシンポジウム等で批評への関心拡大、実りある議論を促進します。本シンポジウムでは、国内外の批評家を招き、現在の国際社会において美術批評が置かれた現状について議論し、国内向けに批評の理解を深めることを目的としています。
(※)本シンポジウムは、文化庁による「我が国における文化芸術のグローバル展開を支える批評力の強化のための準備事業」の一環として企画されました。また、ハリウッドビューティープラザを舞台に、幅広い分野の専門家を招き、ひらかれた観点から議論するプログラム“六本木アルスクーリア”のVol.3として開催します。
(※)六本木アルスクーリア(Roppongi ArsCuria)とは、ハリウットビューティープラザ内のスペースを舞台に、批評家や研究者、キュレーターらによる連続講座やシンポジウム、アーティストによるトークイベントなどを開催するほか、芸術・美術分野以外の専門家や研究者の方々を招き、幅広い問題を議論するプログラムです。
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<登 壇>
ダンカン・ウッドリッジ|Duncan Wooldridge
ロンドンを拠点に活動するアーティスト、批評家、キュレーター。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでオリバー・リション、イヴ・ローマックス、スーザン・バトラー、ジョン・ステザカーの指導を受け、大学院修了後、ロンドン芸術大学カンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツ写真学科のコースディレクター/パスウェイリーダーを務める。著書に『John Hilliard: Not Black and White』(Ridinghouse、2014年)、『To Be Determined: Photography and the Future』(SPBH Editions、2021年)近刊『Writer Conversations』(1000 Words、2023年)、『Routledge Companion to Global Photographies』(Routledge、2024年)をルーシー・ソウターと共同編集。
マーク・フォステル|Marc Feustel
パリを拠点に活動するインディペンデント・キュレーター、批評家、編集者。日本の写真を専門とし、これまでに「Tokyo Stories」(Kulturhuset、ストックホルム)、「Eikoh Hosoe: Theatre of Memory」(Art Gallery of New South Wales、シドニー)、「沖縄:une exception japonaise」(Le Plac’Art Photo、パリ)などの展覧会を企画。また、批評家、編集者として鷹野隆大『ca.ra.ma.ru』(ライブラリーマン、2022年)、柴田敏雄『Boundary Hunt』(プルスイート、2021年)、普後均『BLACKOUT』(ラルチエール、2018年)など現代美術や写真の出版物を手がける。フォトフェスティバルやイベントでの講演や審査の経験も多く、2019年より、パリ・フォトのアーティストトークの司会を務めている。2009-2013年まで写真について執筆するブログeyecurious.comを運営し、現在は写真とフォトブックについての執筆活動を国際的に展開する。
山本浩貴|Hiroki Yamamoto
文化研究者、アーティスト。1986年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、ロンドン芸術大学にて修士号・博士号取得。2013-2018年、ロンドン芸術大学トランスナショナルアート研究センター博士研究員。韓国・光州のアジアカルチャーセンター研究員、香港理工大学ポストドクトラルフェロー、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教を経て、2021年より金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科芸術学専攻講師。『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社 、2019年)、共著に『トランスナショナルなアジアにおけるメディアと文化 発散と収束』(ラトガース大学出版、2020年)、『レイシズムを考える』(清原悠編、共和国、2021年)、『東アジアのソーシャリー・エンゲージド・パブリック・アート 活動する空間、場所、コミュニティ』(ベーノン・プレス、2022年)、『新しいエコロジーとアート「まごつき期」としての人新世』(長谷川祐子編、以文社、2022年)などがある。
中嶋 泉|Izumi Nakajima
主に現代美術、フェミニズム、日本の美術の領域で研究をおこなう。国際基督教大学卒業。リーズ大学大学院美術史学研究科修士課程修了後カリフォルニア大学バークレー校にて客員研究員。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。広島市立大学芸術学部准教授、首都大学東京人文科学研究科准教授などを経て、現在、大阪大学大学院文学研究科准教授。専門分野は近現代美術、フェミニズム美術、フェミニズム、ジェンダー理論。主な著作に『アンチ・アクション- 日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ、2020年)、Past Disquiet: Artists International Solidarity and Museums-in-Exile, (University of Chicago Press、2018年)、「問い直しの旅へ」(『渡辺泰子「A MAP THEY COULD ALL UNDERSTAND.」』、 2022年7月)、Anti-action: Atsuko Tanaka and the Aesthetics of Mass Culture in Postwar Japan(Les cahiers du musée national d’art moderne 159)などがある。
< 進 行 >
沢山 遼|Ryo Sawayama
美術批評家。1982年岡山県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程修了。2009年「レイバー・ワーク―カール・アンドレにおける制作の概念」で美術出版社主催「第14回芸術評論募集」第一席。単著に『絵画の力学』(書肆侃侃房、2020年)、主な共著に『絵画との契約 山田正亮再考』(松浦寿夫ほか、水声社、2016年)『現代アート10講』(田中正之編、武蔵野美術大学出版局、2017年)などがある。Yumiko Chiba Associatesが主宰する批評集『クリティカル・アーカイブ』のシリーズの監修も行う。令和2年度文化庁「新進芸術家海外研修制度」研修員としてニューヨークに滞在。
千葉由美子|Yumiko Chiba
Yumiko Chiba Associates代表取締役。1998年アーティストマネージメントおよびアートプランニングオフィスとしてYumiko Chiba Associatesを設立。高松次郎、吉田克朗、眞板雅文、柳沢信のエステートおよび2010年にオープンした自社ギャラリーの運営、アーティストのプロモーション・管理業務を手がける一方で、国内外の美術館での展覧会企画の他、アート・バーゼル香港、パリ・フォトなどの国際的なアートフェアへ出展している。またアーティストについての歴史的な理解を促し、社会的な認知度を高めるため、評論家のテキストを掲載した研究冊子を多く出版。2022年に六本木に移転するとともに、芸術・美術分野以外の専門家や研究者も招き、幅広い問題を議論する場、アルスクーリアを立ち上げる。