- シリア北西部に対する援助の不足
MSFは10年以上前からシリアで活動しており、震災発生後すぐに緊急対応を開始した。現地活動責任者を務めるハキム・ハルディは、「MSFはすぐさま医薬品や医療機器約12トンを地域の病院に寄贈、3日間で防災在庫は空になりました。物資が底を突くまで支援を続けましたが、国外からの援助は今のところごくわずかしか入ってきていません」と懸念を示す。
現地のMSFチームは、救援面の圧倒的な不足を指摘する。同地には12年間の戦争で既に不安定な生活を送る人びとが200万人おり、地震によって新たに避難民となった18万人が適切な避難所や衛生設備を利用することは不可能に近い。MSFは現在、イドリブ県北部の5カ所の避難者受付センターに住む人びとに対し、移動診療を提供し、テントや水、パン、毛布、マットレス、消火器といった救援物資を配布している。来週からは、被災者と一般人を対象とした医療活動を始める予定だ。
- 昨年の平均を下回る越境支援のトラック台数
地震発生から2月17日までの11日間で、6つの国連機関から提供された援助物資を積んだトラック計178台が、バブ・アル・ハワとバブ・アル・サラム越境地点を通ってシリア北西部に入国した。しかし、2022年の1年間では、援助物資を積んだ7566台のトラックがトルコからシリア北西部に入っており、平均の台数を同じ日数で換算すると228台となる。
さらに、この178台のトラックの一部は、地震対応ではなく既に計画されていた輸送であった。3日間の国境閉鎖を考慮しても、震災で甚大な被害が出ているシリアに対して援助物資を運ぶトラックの台数は増えていないことが分かる。
- ニーズに見合った援助活動と物資の搬入を
今回のMSFのシリアに対する援助物資の越境輸送は、MSFが提携するシリアのNGO「アル・アミーン」の支援により実現した。これは世界保健機関(WHO)が調整する国連の越境支援の枠組みとは別であり、テントなどの物資も輸送可能となった。
MSFは、シリア北西部にいる震災被災者への援助を直ちに拡充するとともに、戦争による人道ニーズと地震による新たなニーズの双方に対応するよう求めている。特に、避難所や給排水設備、術後ケアや治療継続の確保に必要な医療物資など、緊急に必要なものを優先して供給しなければならないと訴える。