2024年4月1日以降、働き方改革関連法により自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。正社員・契約社員として働くドライバーの労働環境が改善される反面、時間外労働の上限規制による運送物流会社の売上やドライバーの収入減少、労働力不足といった「2024年問題」と呼ばれる負の側面もあります。
上限規制により、現在雇用者として活躍するドライバーの労働環境が改善する一方で、労働力が削られることになるため、朝から夜の時間帯指定や繁忙期の配達に対応するためには、個人事業主として稼働するドライバーへの委託が増加するのではないかと予想されます。個人事業主の場合は労働時間の管理が不要なため、中には長時間労働を続ける事業者もいると言われており、軽貨物配送全体の慢性的な長時間労働や人材不足といった点は引き続き課題となっています。
そこで、207では当社のプロダクトである「TODOCUサポーター」を利用している個人配送ドライバーを対象に、就労状況の実態について独自調査いたしました。
■調査概要
- 調査期間:2022年12月12日(月)〜12月25日(日)
- 調査機関:自社調査
- 調査対象:TODOCUサポーターアプリをご利用中の配送ドライバー
- 有効回答数:361
- 調査方法:webフォームによるアンケート調査
<現状の働き方>
週での勤務日数について調査を行なったところ、週6日で勤務すると回答した人が半数を占めました。さらに週6日勤務している配送員が一日にどのくらいの時間勤務しているか注目すると、半数以上の52.4%もの人が12時間以上労働している現状がわかりました。
時間外労働時間が年間960時間を上限とする法改正が適用された後は、現在雇用されているドライバーの稼働が制限されることになり、その穴埋めとして個人事業主ドライバーへの負担はさらに増加するものではないかと考えられます。
<スキマ時間で活躍するドライバーに期待?>
配送業務を本業とするか副業とするかについて調査したところ、本業で働く人に対して副業で働くのは16.1%という結果でした。副業として配送を行う人が運ぶ荷物は、EC荷物(BtoB)、宅配 (C to C)、フードデリバリー、スポット・チャーター便といったものが挙がりました。
近年、フードデリバリーや荷物を送りたい人と配送する人を繋ぐプラットフォームによって単発の仕事を受ける「ギグワーカー」と呼ばれる働き方にも注目が集まっており、空いた時間を有効活用して副業として活躍するドライバーも増加傾向にあります。労働力不足を補う一手になれる面に期待も寄せられていますが、これには配送品質の低下も懸念されています。
<増え続ける荷物とドライバーの高齢化、人材確保の一手は>
配送会社は通常、一定数の人材を確保しておくことで365日荷物の配送を可能とする体制をとっており、さらに教育・研修によって質の高いプロの配送を行なっています。しかし、物流業界の仕事はいわゆる3K「きつい・給料安い・帰れない」といったイメージを持たれやすく、人材の確保は容易ではありません。
荷物数は、多様化するライフスタイルとともに電子商取引(EC)が急速に拡大し、年々増加傾向にあり、2021年までの直近5年では取扱個数が約9.3億個増加し、2021年度の取り扱いは約49.5億個と、5割以上増加と急速な伸びを示しています。
その一方で、日本の生産年齢人口は中長期的に減少傾向にあり、 宅配ドライバーの高齢化が進んでいる現状があります。現状、配送業務は長い労働時間や業務負荷と比較的体力を必要とするため、労働環境の厳しさから65歳以上のドライバーが働き続けることは難しく、ドライバー人材不足は今後急速に深刻化する見込みです。
荷物量が増加する一方で物流を支える配送ドライバーの人手不足は深刻であり、現状ペースで宅配需要の増加が続けば、“運ぶモノはあっても運ぶ人がいない”という需給インバランスが早晩発生し、私たちが当たり前のように利用している「配送無料」や「当日・翌日配送」といった対応は、”当たり前” ではなくなる日も近いのかもしれません。
<配送ドライバーは魅力的な仕事になれるか>
年々増え続ける荷物に対応するためには、ドライバー人材を確保し続けなくてはなりませんが、運賃の高騰や配送の品質低下は避けたいところです。そのためには、テクノロジーによる配送業務の効率化や、賃金・勤務時間といった労働環境を整え、未経験ドライバーや女性、高齢者等あらゆる人材が活躍できるよう、業界全体のホワイト化・イメージアップに努めることが求められています。