実証実験前後に計5回実施したアンケート検証結果より、瀬戸内でのワーケーションは、仕事のパフォーマンスやウェルビーイング指標などに改善効果がみられ、それらの効果は4週間持続することが確認されました。本検証では、ワーカーにとって定期的にこのような機会を持つことは、仕事とウェルビーイングの両面でエネルギーを満たす機会となり、 企業に有益性をもたらす可能性が十分あることを示す結果となりました。
- 調査ハイライト
1.仕事のパフォーマンスやウェルビーイング指標の改善効果がみられた。それらの効果は4週間持続。
2.クリエイター系の職種は「主観的幸福感」「心理的ストレス」「仕事での成長意欲」に、その他の職種では、「仕事での積極性」によりよい影響がみられた。
3.仕事のパフォーマンスは、行程の内容や働く場所の環境によって左右されると考えられる。
- 調査背景
2022年3月25日に公表された国土交通省の「令和3年度のテレワーク人口実態調査結果」によると、テレワークは感染症拡大以前の2019年では、自営業などを除く雇用型の就業者がテレワークを実施する割合は14.8%でした。しかし、2020年以降、増加し続け2022年には約12ポイント増加し27%まで拡大しています。
今後、働き方が多様化していくなかで、選択肢のひとつとしてワーケーション導入を検討する企業が増加することも考えられます。
イトーキは、昨年、新たな働き方をデザインする姿勢や、アートをオフィスに取り入れた活動に共感いただき、瀬戸内国際芸術祭2022のパートナーに選定されました。この機会において、”アートと自然”が融合した瀬戸内でワーケーションを実施することによってもたらされる効果や持続性を検証するための実証実験を実施しました。
- 調査概要
・ワーケーションの事前事後の変化を観察するため、2泊3日(一部、3泊4日)のワーケーション体験を実施し、その前後に計5回のWEBアンケート調査を実施。
・検証には3グループ計24名が参加し、グループ毎に異なる日程・行程でワーケーションを実施。
〇実施時期|2022年10月
〇検証手順|事前アンケート:1回(1週間前)、事後アンケート:4回(直後・1・2・4週間後)
〇調査機関|調査委託先:株式会社TATAMI(https://www.tatami-design.jp/)
〇実施場所|瀬戸内国際芸術祭のメイン会場である直島と豊島を中心に実施
〇実施風景|
〇ワーケーションスタイル|
瀬戸内の島々のサイトスペシフィック・ワーク(自然環境を含む)がもたらす非日常的な体験が、ワーカーにポジティブな影響を与えると仮説し、島々のアートに触れる時間を多く確保し、その間に日常業務を行うスタイルを採用。
〇参加グループ|
- 結果
1.成長意欲が実施前と比較して最大22%UP、心理的ストレスが最大38%DOWN。その他の効果項目においても実施4週間後でもベースラインよりも良い状態が維持。
自然に触れたことや質の高いアートを鑑賞したことは、88%の参加者が「仕事面」に良い影響を与えたと回答しました。自然に触れ心身をリフレッシュできたことや、アートからインスピレーションや刺激を受け取ったこと等が理由として考えられます。
体を動かす機会も、92%の参加者が「ウェルビーイング」に良い影響を与えたと回答しました。特定の要因ではなく、島での様々な体験の影響が積み重なって、ウェルビーイングの向上につながったと考えられます。
2.職種別にみると、クリエイター系の職種は「主観的幸福感」「心理的ストレス」に、その他の職種では、「仕事での積極性」によりよい影響を受けていると想定される。
主観的幸福感や心理的ストレスは、クリエイター系の職種(デザイナー等)の方がその他の職種と比べて、より良い影響を受けています。クリエイター職は、日頃から美術館に通っているなどアートへの関心・嗜好性が高かったことがよりポジティブな影響をもたらした可能性があります。
クリエイター職の方がその他の職種と比べて、ワーケーション後に、より自分の専門性を高めたいという成長意欲の向上がみられました。これはアート作品に触れたことで、自身のクリエイティブ活動へのモチベーションが高まったからではないかと推察されます。一方で、仕事での積極性はクリエイター職よりもその他の職種の方が、大きな向上がみられました。アートを観賞して、クリエイター職は専門性を追求しようと思うのに対し、その他の職種は、より新しく、面白いことに挑戦したいと思うようになるのかもしれません。
3.仕事のパフォーマンスは、行程の内容や働く場所の環境によって左右されると考えられる。
仕事のパフォーマンスが、実施直後に一時的に低下している傾向は、グループ毎の結果をみるとグループAが影響を強く受けていることがわかります。グループAでは働く場所が確保できていなかったことで、ワーケーション中に仕事がしづらかったことが結果に反映されていると考えられます。また、グループCは他グループに比べて、実施後に仕事のパフォーマンスをより高い状態で維持していることが見てとれます。グループCは、88%の参加者が、地域の人々との交流時間を充実させたことが、仕事面への良い影響になったと回答しています。
〇測定指標|
瀬戸内でのワーケーション体験は、ワーカーの仕事とウェルビーイングの両面に影響を及ぼす可能性があると考え、「仕事のパフォーマンス、ワーク・エンゲイジメント、成長意欲、仕事での積極性、主観的幸福感、感情、精神ストレス」の7つの指標を設定した。
- 総括
・2泊3日(一部、3泊4日)のワーケーション体験を実施した結果、仕事のパフォーマンスやウェルビーイング指標の改善効果がみられました。それらの効果は、徐々にベースラインへ戻っていく傾向がみられますが、効果は4週間持続することがわかりました。
・効果は、大きなスケールのアートとそれにゆっくりと向き合える島の環境がもたらしたものであると考えられます。また、アートへの嗜好性が高いクリエイティブワーカーは、瀬戸内ワーケーションの恩恵をより大きく受けることができると考えられます。一方、クリエイティブワーカー以外の職種には、仕事での積極性に大きな向上がみられ、新たなチャレンジに意欲的になる効果があると思われます。
・ワーカーにとって、定期的にこのような機会を持つことは、仕事とウェルビーイングの両面でエネルギーを充電する機会となり、定期的に取り入れた働き方は企業に有益性をもたらす可能性が十分あることを、本検証結果は示しました。
【調査担当者 髙原 良氏のコメント】
COVID-19の流行が始まってから約3年が経過し、世の中の働き方は着実に変化してきました。企業文化やワーカーの価値観は一新され、遠隔コミュニケーション技術の発達なども重なり、今では働く場所に縛られない、より自由な働き方のオプションが企業に提供されています。本調査では、ワーケーションの活用が、ワーカーのウェルビーイングや仕事の活力を向上させ、企業のダイナミズムに繋がる可能性が示唆されました。今後、このような新しい働き方の活用がますます多くの企業に拡がると共に、本調査では、瀬戸内のアートとクリエイティブワーカーとの親和性など、職種やプログラムによる効果の違いについても示唆されたことから、今後、日本各地で地域の特色を活かしたオリジナリティの溢れるプログラムや施設の開発が進み、多様なワークプレイスが日本中に拡がることを期待したいです。
株式会社TATAMI代表取締役/エルゴノミスト 髙原 良
ワークプレイス構築におけるコンサルティングやリサーチを担当。専門は、ワークプレイスとワーカーのウェルビーイングに関する研究。桑沢デザイン研究所 非常勤教員、千葉県立保健医療大学 非常勤講師。
株式会社TATAMI ホームページ|https://www.tatami-design.jp/
【イトーキのワークプレイス事業について】
株式会社イトーキは、1890年の創業以来、ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、オフィス家具、物流機器、ICT・映像音響機器、建材内装設備など幅広いラインアップでさまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートしてきました。
コロナショック以降は働く空間全体を「働く環境」と捉え、ワーカーが”集合して働く”環境づくりのための製品・サービスのほか、在宅ワークや家庭学習のための家庭用家具などの”分散して働く”環境を支える商品、さらに企業の働き方戦略や働く環境整備のためのサーベイやコンサルティングサービスなどトータルで提供することで、あらゆる空間における「働く環境」づくりを支援しています。
【本リリースへのお問い合わせ先】
株式会社イトーキ CSR推進室 上原
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