新型コロナウイルス感染症は日本国内、海外共に生活様式や働き方、医療体制に亘り様々な影響を及ぼしています。2021年11月21日に順天堂大学とメディカルローグは医師や医学生を対象に感染症に対する正確な知識の提供を行うべく、日本国内でLINEを活用した感染症専門教育プログラム「Infection Buster」(https://juntendo-infectionbuster.com/)の提供を開始し、現在までに1,300名を超える医師、医学生が利用しています。LINEを使用した教育システムは時間、場所を選ばず学習できるため利便性が高く、国境を越えての提供が可能なことから、この度タイ、マヒドン大学と共同で海外版「Infection Buster Global」の教育プログラムの提供を開始することとなりました。
本事業は順天堂大学医学部総合診療科学講座(内藤俊夫 教授、森 博威 准教授)が医療技術等国際展開推進事業(https://kyokuhp.ncgm.go.jp/activity/open/index.html)の一環として行っています。順天堂大学の監修のもと、メディカルローグが開発したLINEシステムをタイ国内で提供し、感染症診療教育の環境を構築します。
地域、診療科を問わず、医師852名、医学部生504名が参加し
感染症診療教育に関する問題を1日1問の形式で提供
「Infection Buster」は、2021年に提供開始以来、複数の地域、診療科に亘って1,300名を超える医師および医学部生がLINEを活用した感染症診療の知識向上のために利用しています。実際に臨床現場の経験に基づいた症例問題を1日1問解き、一部動画を織り交ぜた解説を読むことで感染症に関する知識を広く深く習得できます。解析結果からは継続して利用することで感染症の知識向上に繋がることが分かりました。
LINEを活用した医療情報の提供モデル
2022年1月時点で、タイの総人口7,001万人に対してソーシャルメディアユーザー数は前年比+3.4%増加して5,685万人に到達しており「LINE」の利用者も4,600万アカウント(利用率92.2%)と多くのユーザーに利用されている現状があります。先行して実施した日本でもLINEの利用率は92.5%となっており、タイ国内でも感染症に対する正しい知識の提供としてLINEを活用した教育方法は有効であると考えられます。
タイ、マヒドン大学:東南アジアで感染症、熱帯医学をリード
タイでは感染症による死亡原因が15%と日本に比べて高く、感染症対策が喫緊の課題です。加えてタイでは、一般感染症に加えマラリアやデング熱、寄生虫疾患等の熱帯病も流行が続いています。今回、共同でInfection Buster Global を開発したマヒドン大学は東南アジアの感染症、熱帯医学の研究、教育において指導的な役割を担っており、国際的な学会やDiploma等のコースを主催するなど、日本人医師を含めた多くの外国人医師がマヒドン大学で学んでいます。
一方でタイの医師人口は1,000名の国民に対して0.8名と、医師不足が深刻な課題となっています。またタイの地域医療は研修医が主に従事していますが、感染症に関する十分な教育体制が整っていないことから、時間や場所を選ばない質の高い感染症教育が求められています。
プロジェクトリーダーからのコメント
森 博威:
順天堂大学 医学部総合診療科学講座准教授、マヒドン大学熱帯医学部・医学部ラマティボディ病院客員教授
近年、医学教育が大きく変わりつつあります。新型コロナウイルス感染症の影響で対面の授業や実習が難しくなる中、ITを使用した医学教育が注目を浴びています。モバイル端末のアプリケーションを使用した医学教育は時間、場所を選ばず提供できる利点があります。世界各国で感染症に対応できる医療人材の育成が求められており、Infection Buster Globalは画期的な教育ツールとして世界各国の医師、医学生の感染症の知識習得に役立つことを期待しています。今回感染症、熱帯医学の教育で指導的な立場にあるマヒドン大学と共同でInfection Buster Globalの教育プログラムを開始します。タイでも使用頻度の高いLINEのシステムを使用し、感染症教育を行います。モバイル端末は世界中で利用可能であり、このプロジェクトが医療の届きにくい場所にスタンダードな医学教育を届けるきっかけとなることを強く期待しています。