日本企業「脱ロシア」後退 ロシア事業撤退、主要国で最低水準 ロシア事業停止は4割止まり、撤退続く欧米との温度差鮮明

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<調査結果(要旨)>

  1. ロシア事業見直しの動き、後退局面に 6月は3社の増加にとどまる

ロシアでのビジネスから撤退=日本企業の「脱ロシア」の動きが止まった。2022年2月時点でロシアへの進出が判明した国内上場企業168社のうち、6月19日までにロシア事業の停止や制限・撤退を発表・公開した企業は前月から3社増え、全体の4割に当たる74社が判明した。4月時点でゼロだったロシアからの完全撤退を表明した企業は、新たに1社判明した。一方、受注残といった理由や、ロシア国内での新規事業の投資負担から現地事業を当面継続する企業も判明した。

ロシア事業の停止・撤退を巡っては、3月時点で全体に占める割合は22%だったものの、4月時点では36%に急増。3~4月にかけて、ロシアに進出する主要な日本企業でロシア事業の停止や撤退といった「脱ロシア」の動きが相次いだ。その後も脱ロシアの動きが加速するとみられたが、5月時点でロシア事業の停止を表明した企業は前月から11社の増加にとどまり、4月時点の増加数(+23社)に比べ半数以下と大幅に減少。6月は3社とさらに減少し、前月(+11社)の半分以下、4月時点から約1割の水準にとどまった。将来的な事業再開・撤退についても言明を避けるケースが多く、ロシア事業に対する姿勢は各社で温度差が見られるものの、総じてロシア事業を見直す動きはここにきて後退局面入りがみられる。

事業の停止や中断となった企業の内訳では、製品の出荷・受注などを含む「取引停止」が35社で最も多く、事業停止・撤退企業のうち約半数を占めた。次いで現地工場の稼働停止など「生産停止」(14社)、店舗営業や現地の販売活動などを含めた「営業停止」は10社で、ともに前月から変動はなかった。ロシア事業からの撤退は4社となり、前月から1社増加した。

ロシア事業の撤退割合、主要国で最低水準 欧米企業との温度差鮮明に

帝国データバンクが米エール経営大学院の集計をもとに、各国の「ロシア事業撤退(Withdrawal)」の割合を分析したところ、全世界の主要企業約1300社のうち24%に当たる300社超がロシア事業撤退を表明したことが分かった。ポーランドやフィンランドのほか、主要国では英国で半数の企業がロシアから撤退、米国企業も約3割がロシア事業から撤退しており、これらの国では早期の段階で「脱ロシア」の動きが進んでいた。ウクライナ侵攻に国際社会の非難が集まるなか、欧米企業ではロシア撤退を求める圧力が強まり、米マクドナルドや仏ルノー、当初事業を継続してきた米スターバックスなども撤退を決断するなど脱ロシアの動きが加速している。

一方、日本企業の事業撤退割合は帝国データバンクの調査で2.4%、エール大の調査でも1.7%と、イタリア(5%)を下回り主要7カ国中最も低い水準だった。日本企業でもロシア工場の操業停止や同国との製品輸出入停止といった、ロシアと距離を置く動きが進むものの、ロシアビジネス撤退には慎重姿勢をみせる企業が多い。ロシア事業を見直した企業でも、将来的な事業再開の可能性を含む取引の停止などにとどめたケースは多く、ロシア事業をめぐり欧米企業との温度差がより鮮明になっている。ただ、ロシア市場を重要な新興市場として注力してきた多くの日本企業にとって、同国ビジネスは「市場再参入のハードルが高い」など容易な撤退は難しいのも事実で、事態の見極めとロシア事業の将来性を鑑みた難しい判断が引き続き求められる。
 

  • 対象は、帝国データバンクが保有する企業データベースに加え、各社の開示情報を基に、工場や事業所、駐在員事務所などの設備・施設、直接出資などでロシア国内に関連会社を有するなどの形で、2022年2月時点に進出が判明した上場企業168社
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