ソニーが提供する生物や価値観の“多様性”を学ぶ環境教育プログラム「シネコポータル・ワークショップ」開催レポート

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 ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)が提供する教育プログラム「CurioStep with Sony(キュリオステップ)」は、2022年5月~11月の約7ヶ月間を通して、今年度の新たな試みとして、「生態系をつくって、育てて、考える『シネコポータル・ワークショップ』を全国6ヵ所の小学校・中学校で実施しました。

 

《シネコポータルについて》
 「シネコポータル」は、小さな「拡張生態系*」を実際に人間の手でつくりながら、環境とのつながりを感じて学んでいく「入り口」となるものです。この小さな生態系は、近くの植物や動物、雨や風や光、そして遠く離れた場所にある別のポータル、まだ会ったことのない人々との交流を通じ、誰もが生態系の豊かさにつながれるきっかけになるようデザインされています。
作物を収穫することが主目的ではなく、生態系の拡張原理を学ぶことに主眼が置かれており、果樹を中心に一年草や多年草、苔、シダなど多種多様な植物を混ぜて育て、それぞれの相互作用を観察します。また、生態系の循環を阻害しないために肥料や農薬は使用せず、表土の破壊をもたらす耕起なども行いません。他の場所での実践と比較できるよう、こうした一定の条件に沿ってシネコポータルは構成されています。
(シネコポータルに関する詳細はこちらをご覧ください:https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/12113/

 

《シネコポータル・ワークショップについて》
 本ワークショップでは、全国6ヵ所の小学生・中学生に今年5月から11月の約7ヵ月間、シネコポータルづくりに挑戦してもらいました。子どもたちは、シネコポータル内で成長する植物や生息する生物の観察記録を日々行い、全5回のオンラインワークショップで学びや気づきを発表しました。

 CurioStepでは、このワークショップを通じて子どもたちが多様な植物や生物を観察し、自身で収穫した果実や野菜を食べる体験から、自然の豊かさや生態系の存在を意識し、生物多様性を高めるために人間ができることを考えるきっかけを提供しました。
 また、地球の歴史や文化などに関する学びの機会も提供し、子どもたちが好奇心を原動力に自ら学びのサイクルを拡げていけるようにプログラムを設計しました。さらに日常生活では交わることのない全国の子どもたちとの交流機会を提供することで、自然環境の多様性のみならず、価値観の多様性を体感してもらうことにもつながりました。

シネコポータル・ワークショップ公式サイト:
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/curiostep/activity/synecoportal/
(各校がインスタグラムに投稿したシネコポータルの画像も公式サイトよりご覧いただけます)

《ワークショップ・レポート》
■第1回:5月25日(金)「シネコポータルをつくろう」

ナビゲーターの福田さんからシネコポータルの作り方や、シネコポータルと一般的な畑の栽培方法の違いなどをお話しました。シネコポータルのお世話の仕方に「正解」はなく、自分たちで考えて試してみて、どうしてそうなったのかを考えるのがこのワークショップの特徴というお話を聞き、子どもたちからは水やりの方法や植える植物の種類など、いろいろな質問が飛び出しました。福田さんからは「どうなるか実際にやってみて、僕にも結果を教えてね」とまずは試してみることが大事というお話がありました。植物が育つ様子はタブレットで撮影してコメントと共にインスタグラムに投稿してもらいました。

<児童の感想>
色々な学校と交流できてうれしかったです。どんな感じで育つのかすごく気になります!他の学校がどんな風に育てるのか気になります!(小学6年生)

■第2回:6月24日(金)「発見をシェアしよう」

約1か月育てたシネコポータルの様子を学校ごとに発表してもらい、
また他の学校の発表についての感想も一言ずつお話してもらいました。「複数のポータルをつくり、水やりの条件を変えて観察していることに驚いた」などの感想もあり、他の学校の発表から新たな気づきもあったようです。

<児童の感想>
色んな学校の育ち方や大きさが知れてよかった。学校によって天候や環境がちがっていたので、どんなふうに成長するか楽しみ(小学6年生)

■第3回:8月4日(木)「シネコポータルについて、もっと知ろう」

夏を迎え、各校のシネコポータルは花が咲き、野菜の実がなり、収穫して食べた学校もありました。
第3回では、「生態系」や「生物多様性」など、シネコポータルから広がる複雑な世界について福田さんからお話がありました。植物から「みのり」を得られるのは、植物や生物が互いに複雑に関わり合って生態系を形づくっているからこそ、というお話に子どもたちは真剣に聞き入っていました。

<児童の感想>
生物多様性という意味が自分の知っていたものとは少し違い、とても幅広いものだということに驚いた(小学6年生)
生き物がすべてつながっていることに驚いた(小学6年生)

■第4回:10月14日(金)「学びを生かして、もう一度挑戦しよう」
9月に各校では秋の植物の植え付けを行いました。事前に福田さんから「植え替えの前に予想を立てて、結果がどうなったかを教えてほしい」という宿題があり、第4回では、予想が当たったかどうかではなく、どうしてこの結果になったのかを考えて発表してもらいました。シネコポータルに集まる生き物を観察して発表した学校もあり、ワークショップを通して植物や生態系への理解が深まっている様子がうかがえました。

<児童の感想>
地方によっての違いが生まれていておもしろかった(小学6年生)
他の学校の育て方や見方もまねしていきたいと思った(小学5年生)

■第5回:11月25日(金)「学んだこと・感じたことを振り返ろう」
最終回の特別ゲストとして、シネコポータルの基礎となっている「協生農法™(Synecoculture™)をはじめとする拡張生態系」の研究者、舩橋真俊博士が登場。事前に寄せられた質問をもとに、アフリカでの活動や、子ども時代の話などを聞きました。

「考えたことが間違っていたときはどうしたらいい?」という質問には、「科学者や研究者にとって考え方が正しいと証明するのは仕事の半分で、残りの半分はどれだけおもしろい失敗をできるかということ。失敗が大発見につながることもあり、間違いに見えていたけれど前提を変えたら正解だと気づいてもっとよい考えにつながることもある。だから、間違いは宝物」と、自身の経験をもとに答えました。
最後に福田さんから「シネコポータルの真ん中に植えた木は、とっても長生き。みんなより長く生きるかもしれない。地球は未来に向かって航海していく大きな船みたいなもの。みんなも僕も植物も、一緒の船に乗って航海をして行こう」とメッセージが送られ、7か月に渡ったワークショップは幕を閉じました。

<児童の感想>
考えが間違っていたときはどうしたらいいかという質問への回答が心に残った(小学6年生)
他の学校の人たちが、1年間どのような気持ちで取り組んできたかということが分かり、意見交換ができたことが楽しかった(小学6年生)

《夏休み特別編》
8月6日(土)には、参加校だけでなく、一般の方にも視聴いただけるオンライン・トークイベント『恐竜くんと考えよう!地球環境と生態系のふしぎ』を開催しました。
サイエンス・コミュニケーターの恐竜くんをゲストに迎え、福田さんと一緒に地球の生態系の歴史と恐竜についてお話しました。はるか昔の生き物だと思っていた恐竜が生きていた時代の地球環境を知ることが、今の私たちの地球環境を考えることにもつながっているなど、普段のワークショップとは一味違ったお話を聞くことができました。
<参加者の感想>
恐竜や今の地球になるまでのことがたくさん分かって楽しかったです。広い視野で地球や生き物について知る事は、自分を知る事にもなるしどう生きるかも考えられて有意義な時間でした。

■参加校児童の感想

・特におもしろかったことは、オンラインで他の学校と結果を発表しあったこと。育てる場所は違ってもはつか大根は虫に食べられていることや、他と違い自分の学校でよく成長している植物があることなど、それぞれ違う環境で育ったシネコポータルを知ることで、改めて自分のいる場所や環境を知ることができました。いろいろな学校の人たちと同じ目的で野菜や花を育てることは一体感があって嬉しかったし、楽しかった。この取り組みのおかげで、植物や生物を見る目が広がったと思う。(小学5年生、6年生)

・日の当たる場所と当たらない場所で比較して観察している学校もあったり、フラフープを紐で区切り植物を育てている学校があったり、いろいろな発想があっておもしろかった。このワークショップのすべてが楽しく、一番楽しかったことが決められない。(中学2年生)

・(シネコポータルが)普通のガーデニングとは違うことに驚いた。アサガオのツルがフェンスをつたっていたり、ミニトマトの茎が横へ伸びていたりビックリした。(小学6年生)

■参加校の先生の感想
・SNSへの投稿や植物のお世話など、始めた時はいつか(子どもたちの)熱が冷めててこ入れしなければいけなくなるのではと思っていたが、7か月間一度も注意などすることなく子どもたちだけでやり切れたことが印象深い。授業では、観察や世話をしやすいよう1種類を植えがちですが、シネコポータルを見ていると、むしろいろいろ試しながら自由に育てるのも「生きた学習」と言えるかもしれないと思った。予想をしながら植え、その結果を見るというのは刺激があって、子どもたちも意欲がわいていた。

・主体的に取り組む姿に(子どもたちの)成長を感じた。夏にミニトマトができると、「黒いビニール袋をかぶせて(光が当たらないようにして)みたらどうなるか調べたい」と話し、実践していた。

・水やりをしているときに「大きくなりなね~」と声をかけたり、台風の影響で早退する日に「シネコ、大丈夫かな?」と涙した生徒もいた。生き物を大切にする反応が多く、はっとさせられることが何度もあった。

* 「拡張生態系」は、ソニーコンピュータサイエンス研究所 研究員の舩橋真俊が2010年から進めている「協生農法TM (SynecocultureTM)をはじめとする拡張生態系」の研究に基づいています。生態系に人の手を加えることで、生物多様性や生態系機能が、自然状態を超えて高まった状態を「拡張生態系」と呼んでいます。
(拡張生態系の研究についてはこちらをご覧ください: https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/407/

※ イラスト提供:ソニーコンピュータサイエンス研究所/一般社団法人シネコカルチャー

<シネコポータル・ワークショップナビゲーター: 福田 桂プロフィール>
2018年より一般社団法人シネコカルチャーのナビゲーター。
協生農法、拡張生態系の普及を目指し、小さな拡張生態系(シネコポータルなど)をつくりながら、周囲環境との交流を体験し、学ぶための活動を展開中。

■「CurioStep with Sony(キュリオステップ)」とは
CurioStep with Sony は、ソニーグループの多様なテクノロジーとクリエイティビティを活かして、子どもたちの学びや好奇心をサポートする教育プログラムです。新型コロナウイルス感染症により子どもたちの学びを取り巻く環境にも様々な影響が生じる中、2020年よりオンラインワークショップの導入などの取り組みを行うことで、多くの子どもたちへ新たな学びの機会を提供しています。

◆「CurioStep with Sony」に関する情報や過去のワークショップの模様は、こちらをご覧ください。
公式ホームページ https://www.sony.co.jp/curiostep
公式Facebook https://www.facebook.com/curiostepwithsony
LINE公式アカウント https://lin.ee/PtWCqus3

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