■食の領域拡大で攻めるドラッグストア
新型コロナ感染者数の減少傾向を受けて人流拡大が続いています。その効果でほぼすべてのリテイル・サービス業態で利用が拡大してきました。中でも長く不振が続いた外食は全国的に利用が拡大し、行列が出来る業態も散見されるようになっています。依然としてディナー利用はやや重い動きながら、全時間帯で利用拡大傾向にあり、多くの外食企業が朝食~ランチ時間帯の利用増に向けたメニュー強化、フェアによる集客力アップなど、反転攻勢の動きを強めているところです。
多くのリテイルがコロナ禍による人流低下で利用を大きく落とす中、当初から好調を維持しているのがドラッグストアです。新型コロナ感染者数が増加すると、マスクや衛生関連商品を中心に利用客数を大幅に伸ばしました。繁華街立地やオフィス立地は他の業態と同様に利用が大きく落ち込んだものの、住宅街立地や郊外ロードサイド立地では他の業態を大きく引き離し、好調ぶりが際立ってきました。
ドラッグストアの利用を詳しくみていくと、コロナ禍によりマイナス影響が見られるのは化粧品・ビューティー関連用品です。このジャンルはドラッグストアのインバウンド利用を引き出す要素となっていましたが、コロナ禍によるインバウンド利用の低下、外出機会の減少などを受けて、販売アイテムも大きく様変わりしてきています。徐々に同ジャンルの売り上げも回復傾向を示していますが、コロナ禍影響が色濃くなって以降、ドラッグストアの集客に大きく貢献してきたのがフードジャンルです。ドラッグストアのフードは安価な価格設定で他業態との集客競争の源泉となっており、その中心は加工食品・菓子類でしたが、コロナ禍以降、生鮮・日配品など、ジャンル強化の動きが強まっています。北陸を基盤とするゲンキーや「フード&ドラッグ」の代表企業であるコスモスなどが食品ジャンルの強化により集客力アップに成功する中、調達や商品管理に大きな障壁があると言われていた生鮮品の取り扱いにチャレンジする企業が郊外立地から増加していきています。生鮮品の取り扱いに踏み出せない企業でも冷凍食品などの取り扱いを拡充させ、食品スーパー、ホームセンターなどの他業態との競争力アップを図り、確実に効果を上げてきています。
さらに食品ジャンル取り扱いの動きは拡大してきており、配送体制の課題からドラッグストア業態が苦手としてきた中食・惣菜ジャンルに取り組む企業も出てきています。利用客数減で業績悪化していた都心部店舗では中食・惣菜ジャンルは利用機会を引き出す上で効果もあり、今後の動きが注目されます。
コロナ禍によりリテイルの利用状況は大きく様変わりしていますが、その中でドラッグストアは着実に市場拡大を続けている業態です。他のリテイルよりも“必需”の需要を持つという点で競争力を持つドラッグストアは、さらなる利用拡大に向け、食品ジャンルの取り扱いを広げ、食品スーパーやコンビニエンスストアとの競争を本格化しようとしています。
以下にレシーカ※で21年4月以降のドラッグストアチェーンの動きをみてみました。直近の数字と21年4月の数字を比較した際に5ポイント以上、食の構成比を上げた企業が7社ありましたが、そのうち5社は21年4月時点では食の構成比は40%以下にとどまっており、この1年で食ジャンルを着実に拡大してきたことが伺われます。ドラッグストア業界では食ジャンルは集客装置の一つとして、もはや不可欠な要素となってきており、コロナ禍による追い風を受けて、食ジャンルを拡張する動きはさらに加速する傾向にあります。食ジャンルの中では配送体制の課題からドラッグストア業態が苦手としてきた中食・惣菜ジャンルの取り扱いを開始・拡大する企業も出てきています。利用客数減で業績悪化していた都心部店舗では中食・惣菜ジャンルは利用機会を引き出す上での効果もあり、今後の動きは要注目です。
コロナ禍によりリテイルの利用状況は大きく様変わりしていますが、その中でドラッグストアは着実に市場拡大を続けている業態です。他のリテイルよりも“必需”の需要を持つという点で競争力を持つドラッグストアは、さらなる利用拡大に向け、食品ジャンルの取り扱いを広げ、食品スーパーやコンビニエンスストアとの競争を本格化しようとしています。ドラッグストアのフードジャンル強化の動きは、今後の業態間競争をますます過熱させ、次世代業態を生む起点になるかもしれません。
※レシーカとは、CCCマーケティング株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。
- ■2022年4月の「産業天気予報」
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設立:2020年7月21日
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生活者の消費データ、インサイトや心の変化、さらには社会環境や経済情勢などを踏まえ、生活者のみなさまの「ちょっといいな」を実現するために、2020年に発足しました。我々は『生活者の皆さまと共に歩み、共に考えるシンクタンク』として生活者の意識把握に努め、その声をもとに「データ」×「クリエイティブ」×「コンサルティング」のチカラによって皆さまの未来創造に伴走します。