(主催:頼朝公像プロジェクト委員会 後援:京都市)
源頼朝公像は袍(ほう)と呼ばれる黒い上着と紫のはかま姿。しゃくを持って座った像は、高さ1メートル10センチ、幅1メートル47センチの等身大の坐像。征夷大将軍となった頃の頼朝が表現されています。
- 現代仏教美術界の重鎮、江里康慧仏師による制作
江里仏師が約9か月かけて向き合った源頼朝公像の姿は、独自の頼朝をイメージ。 京都・神護寺の伝源頼朝像、山梨県・甲斐善光寺の頼朝像に加え、東京国立博物館の伝源頼朝坐像の三体を独自に調査・研究し、頼朝の中にある「神性」を見出して現代に甦る源頼朝公像が生み出されました。「坂東武者にもまれながら、数々の苦難を経て大願を果たした頼朝の人生を通して、現代の人にも勇気を感じてもらえたら」と話しました。
- 像が納まる厨子(ずし)は截金師 江里朋子氏が担当
像と同じ頼朝杉で制作された厨子の正面と両脇の扉の内側には、伊豆に流された頼朝が政子と共に韮山(にらやま)から眺めたであろう伊豆の風景が截金(きりかね)細工で描かれています。截金とは、数枚焼き合わせた金箔を竹刀で極細の線状に切り、それらを筆先で張りながら文様を描き出すという、独特の技術を要する伝統工芸。 さらに下手扉の内側には、いずれ成し遂げる「天下治平」への大願成就を心に秘めて眺めたであろう富士山がプラチナの截金で細工されています。 「約800年前に頼朝と妻の政子が眺めた静岡県・伊豆の山並み、対岸を遠景にみる富士山の風景を表現しました」と江里朋子氏。
- 容姿は征夷大将軍 装束は徹底的に時代考証
源頼朝公像がまとう装束は、京都の老舗装束店の当主で装束司の黒田幸也氏により有職故実に則った考証がなされました。神護寺の伝源頼朝像と同様に、位の高さを表した強(こわ)装束で、黒い袍(ほう=格式の高い上着)にはつる草の茂った様子をかたどった輪無唐草(わなしからくさ)という文様が描かれています。指貫(さしぬき=裾をくくったはかま)は藤色の地に八藤丸(やつふじのまる)の文様が刺繍風に描かれ、木彫とは思えない布の質感が伝わってきます。お披露目で黒田氏は、「実際の装束を着たモデルと比較しながら昔の決まり事や“ならわし”である有職故実に則り、当時のままということを念頭におかれた表現をされている」と解説されました。
- 源頼朝公像の今後の予定
像は今後、2022年11月23日(水・祝)に静岡県伊豆の国市の「韮山文化センター(韮山時代劇場)大ホール」にて1日限りの特別公開を行うほか、2022年12月7日(水)~9日(金)に東京都江東区の東京ビックサイトで「エコプロ2022」に出展予定。その後、頼朝ゆかりの地である神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮へ奉納します。
- 頼朝公像プロジェクト委員会
お披露目では、委員会の事務局長を務める銘木総研株式会社(本社:大阪府大阪市)代表取締役 前井宏之が挨拶。「本日が源頼朝の功績を広く国外の方まで知っていただくスタート地点になる。まさに初代将軍らしい迫力ある像を、頼朝ゆかりの地である神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮へご奉納するまで責任をもって対応したい」と語りました。
左から、黒田基起(頼朝公像装束モデル)、黒田幸也(株式会社黒田装束店 代表取締役)、前井宏之(頼朝公像プロジェクト委員会 銘木総研株式会社 代表取締役 )、江里康慧(平安佛所 仏師)、江里朋子(平安佛所 截金師)、北川教裕(千葉山智満寺 住職)※敬称略
- 登壇者情報(※敬称略)
◆彫刻家・仏師 平安佛所代表 江里 康慧(えり・こうけい)
1943年生まれ。1962年京都市立日吉ヶ丘高等学校美術課程彫刻科卒業。仏師松久朋琳師・宗琳師に入門。独立後、父・宗平とともに仏像制作に専念。これまでに全国各地の寺院に納めた仏像は約1,000体。三千院や大本山瀧光徳寺から大仏師号を賜っている。2003年京都府文化功労賞受賞。2007年財団法人仏教伝道協会より仏教伝道文化賞受賞。龍谷大学客員教授、同志社女子大学嘱託講師等を歴任する。著書に『仏師という生き方』(廣済堂出版)、『仏像に聞く』(K.K.ベストセラーズ)、『仏師から見た日本仏像史 一刀三礼、仏のかたち』(ミネルヴァ書房)。
◆截金師 平安佛所 江里 朋子(えり・ともこ)
1972年生まれ。仏師・江里康慧と重要無形文化財「截金」保持者・江里佐代子の長女として京都で生まれる。京都芸術短期大学(現:京都芸術大学)日本画専攻。卒業後、母に截金を習い始める。2001年夫の郷里の福岡へ移り京都と福岡で制作活動を行う。2011 年第58回日本伝統工芸展で截金飾箱 「皓華」が日本工芸会新人賞受賞、2013年第48回 西部伝統工芸展で截金飾筥 「碧梁」が九州朝日放送賞受賞。2015年日本工芸会正会員認定。2019年第27回伝統工芸諸工芸展 日本工芸会賞を。2020年には京都府文化賞 奨励賞受賞。
◆黒田装束店 黒田 幸也(くろだ・ゆきや)
1960年京都生まれ。立命館大学経済学部卒業後、実家の黒田装束店に入社。2011年に代表取締役に就任。装束司として19代目の当主を承継。有識故実に則った装束を調進する傍ら、京都芸術大学非常勤講師など装束文化の普及に努める。現在、伝統服飾工芸協同組合・代表幹事をはじめ、京都神紙調度装束協同組合・専務理事、一般財団法人伝統文化保存協会・評議員。
◆千葉山 智満寺 住職 北川 教裕(きたがわ・きょうゆう)
◆平等院 住職 神居 文彰(かみい・もんしょう)
◆京都女子大学名誉教授 杉研究の第一人者 高桑 進(たかくわ・すすむ)
◆二胡奏者・シンガーソングライター 里地帰(さとちき)
- 源頼朝がお手植えしたと伝承される「頼朝杉」とは
静岡県島田市の千葉山 智満寺の境内で10年前に空洞化が進み自然倒木した、元国指定天然記念物「頼朝杉」。推定樹齢800年、かつて源頼朝が挙兵前に天下治平の大願成就を祈念して植えたと伝承される樹高約36メートルにもおよぶ大杉でした。樹高の三分の一ほどが空洞になっていたのが豪雨に耐えかね、根元から南側の急斜面に向かって倒木。本来なら傍らの薬師堂を直撃しても不思議でない位置にありながら、なぜか避けるように倒木しました。
- 樹木は倒木しても木魂は永遠に・・・
源頼朝が生涯を賭けて実現した天下治平。その大願成就を祈念して手植えたという伝承のある頼朝杉は10年前に倒木し、残念ながら樹木としてはもう存在しません。しかし「800年生きた樹木は新たに800年の生命を持つ」と言われます。頼朝杉もお像に姿を変え、今に甦りました、まさに、今に生きる私たちの歴史遺産、文化遺産です。これらの遺産を、未来にどのように紡いでいけるか。衆生を救済する未来仏の弥勒菩薩像にしても、「武家政権樹立」「天下治平」の大願を成就させた頼朝公のお像にしても、心豊かな未来へ紡ぐシンボルです。
頼朝杉プロジェクトの活動には、まだ続きがあります。これらのお像の端材や残材の有効活用をいたします。頼朝公が歴史に刻んだチャレンジ精神、諦めない心・・・そんな木魂が宿る木製品を製作し、多くの方に愛用していただくことこそ、私たちがめざす心ゆたかな未来への一歩です。
- 銘木総研株式会社
伝承とともに人々の生き方に寄り添ってきた名木がもつ史実やいわれを調査研究し、伝統文化・歴史の継承、名木の利活用につながるご提案、その実践を行う。今後は源頼朝公像の端材や残材を活用した記念品「頼朝杉の木魂(こだま)」など、名木を利活用する商品を販売する予定。
【会社概要】
社名:銘木総研株式会社
本社所在地:〒530-0001 大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス 26F
代表取締役:前井 宏之
事業内容:名木調査・研究、名木イベント開催、名木商品木企画、名木情報発信
設立:2020年9月
HP:https://meiboku-souken.co.jp/