WWF『生きている地球レポート2022』発表

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公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、本日、地球環境の現状を報告する『生きている地球レポート2022』を発表し、生物多様性の豊かさを測る数値が、1970~2018年の過去約50年間で69%減少している最新の報告をふまえ、気候と生物多様性の両方の危機を同時解決する変革の重要性と、ビジネスや政治のリーダーによる喫緊の対策の必要性を訴えました。

【報告書の要旨】
●自然と生物多様性の健全性を測る指標「生きている地球指数(LPI)」は、地球全体で脊椎動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類)の個体群で構成され、継続的な減少が続いています。最新報告では、1970 年から2018 年の間に平均69% 減少。今回のLPIは、5,230種、約32,000個体群という過去最大のデータを基に、ZSL(ロンドン動物園協会)と共に調査。

●最も深刻な打撃を受けているのは、世界の淡水域の野生生物個体群で、そのLPI は平均83% 減少。

●LPI は、世界の地域ごとに生物種の個体群の変動を分析。地域別に見ると、最も減少率が大きかったのは中南米(94%)で、次いでアフリカ(66%)、アジア・太平洋(55%)、北米(20%)、ヨーロッパ・中央アジア(18%)と続く。

●世界中で野生動物の個体数が減少している主な要因は、生息地の劣化と損失、乱獲、外来種の持ち込み、汚染、気候変動、疾病である。

●生物多様性の損失は、農林産品の供給を維持して温室効果ガスを吸収する生態系の能力をさらに低下させる。気候と生物多様性の危機は相互に影響し合って悪化するため、同時解決が重要。対策には、特定の地域の貴重な陸上・淡水・海洋生態系を守ったり、森林破壊を防いだりするような地域ベースでの保全活動、生産や消費のあり方を根本から変革するような対策を組み合わせていくことなどが必要。

●現在、地球の「バイオキャパシティ」に対して「エコロジカル・フットプリント」は75% も超過し、人類は地球1.75 個分に相当する自然資源を過剰に消費。人類は生態系に過剰に依存し、地球環境を維持する生態系サービスを乱用(出所:National Footprint and Biocapacity Accounts)。

●2030 年までに生物多様性の損失を反転させ、ネイチャー・ポジティブな世界を確立することが不可欠。これまでの生産・消費、政策決定、金融における仕組みを根本から戦略的に変革していくことが求められ、政府、企業、社会の指針となる共通の生物多様性の回復を目指す世界目標の国際合意が必要。

■松田英美子 WWFジャパン 自然保護室 生物多様性グループ長

2022年11月国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトで開催されます。気候変動は、生物多様性損失の5大要因のひとつで、近年、国際的な気候関連議論においても生物多様性への配慮が大きく取り上げられています。気候変動と生物多様性の損失は表裏一体。統合的なアプローチによる両課題への解決策が強く求められており、今回の『生きている地球レポート2022』でも提案しています。
新型コロナウイルス感染症のような人獣共通感染症と生物多様性の損失は密接な関連がありますが、皮肉にもコロナ対策で開催が大幅に遅れていた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、今年12月ようやくカナダで開催されます。生物多様性の損失を反転させ、ネイチャー・ポジティブな世界を確立するため、2030年生物多様性枠組みの合意を目指しています。

■足立直樹氏 株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役

これは不運な生きものたちや地球の現状を案じるレポートではなく、このままでは私たちの生活が立ち行かなくなるという警告。解決するためには、気温上昇を1.5度未満に、自然を今より増やさなくてはいけないが、そのためにはこれまでのような自然保護だけでは不十分で、経済の仕組みを変える必要がある。そして、経済や金融システムを変える動きはもう始まっており、それに乗り遅れれば企業は競争上不利になる。そのことがほとんど知られていないことが、日本にとっては最大の問題。次に絶滅するのは日本企業かもしれない。

 

WWFジャパンは、10月13日、東京都千代田区の星陵会館で『生きている地球レポート2022』の発表記者会見を行ないました。企業活動と生物多様性の分野で日本の第一人者として知られる株式会社レスポンスアビリティ代表取締役の足立直樹氏と、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定を受け、環境問題や生物多様性について学んでいる都立日比谷高校の生徒も登壇し、私たちの社会や暮らしと生物多様性危機との関わり、ビジネスや政治のリーダーへ向けた期待について共にメッセージを発信しました。

 

【本日公開した資料一覧】
(日本語版)

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(英語版)

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