モンゴル国にてゲノム編集技術を用いたカシミヤヤギの品種改良に着手

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ゲノム編集受託サービスを提供する株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)は、モンゴル国(以下「モンゴル」)において、モンゴル生命科学大学獣医学部および動物科学バイオ技術学部、ならびに国立動物ジーンバンクセンターと共同研究を行い、ゲノム編集技術を用いたカシミヤヤギの品種改良を目指します。セツロテックが保有するゲノム編集技術を導入することで、世界第2位のカシミヤ繊維の供給国であるモンゴルのカシミヤ繊維の品質を世界最高質に高め、持続的なカシミヤ産業に貢献することを目指します。現在、セツロテックでは、この研究成果を活用して事業化を目指す、パートナー企業を広く募集しています。

 

【本件の背景】
カシミヤ繊維は、毛が細く、密度が高く、保温性と肌触りに優れていることから、「繊維の宝石」とも呼ばれています。モンゴルは、中国に次ぐ、世界第2位のカシミヤ繊維の生産国で、世界生産量の約30%を占めています。また、冬季にマイナス30度を下回る厳しい環境を生き抜くモンゴルのカシミヤヤギから採取されるカシミヤ繊維は、世界最高品質と言われています。
一方で、モンゴルにおけるカシミヤ繊維生産はいくつかの課題を抱えています。モンゴルでは、収量を重視した煩雑な交配によるカシミヤ線維の品質低下が懸念されています。また、カシミヤヤギの飼育頭数が増加しており、過放牧によって砂漠化が拡大するという環境問題を引き起こしています。こういった品質の低下や環境問題を解決するためには、カシミヤヤギの管理飼育や品種改良(高品質化)が必要と考えられました。
セツロテックは、徳島大学発のベンチャーとして、生物の遺伝子を自在に編集できるゲノム編集の独自技術を活用し、大学発の研究成果を社会に還元することに積極的に取り組んできました。近年SDGsの達成目標の中で「13. 気候変動に具体的な対策を」「15. 陸の豊かさも守ろう」などが挙げられていることもふまえ、これらの環境問題を解決する新たなカシミヤヤギ育種法について、現地大学・研究機関、モンゴル農牧業省、および自然観光省と協議を重ねてきました。

【研究開発の内容】
セツロテックは、モンゴル関係官庁からの実験承認とサポートを得て、現地研究機関であるモンゴル生命科学大学および国立動物ジーンバンクセンターと共同研究を行い、カシミヤヤギのゲノム編集を行います。その成果として、世界最高品質のカシミヤ繊維を生産するヤギ系統を確立することを目標とします。将来的には、環境に配慮したカシミヤ繊維生産によるモンゴルの持続的な畜産業の確立に貢献します。

セツロテックは、保有する2つの技術を活用して本研究開発に取り組みます。
1つ目の技術である「受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法、特許6980218号)」は、受精卵にゲノム編集因子を簡便かつ効率的に導入する手法です。従来法であるマイクロインジェクション法と比較して、機器が比較的安価なことから、実験設備が十分でない地域でもゲノム編集を実施可能となります。
2つ目の技術である「ゲノム編集因子ST8(特許7113415号)」は、セツロテックが独自に開発・改良したゲノム編集因子です。ST8は、CRISPR/Cas9システムが抱える課題(特許紛争・特許費用・オフターゲット変異)を解決する新規ゲノム編集因子です。
セツロテックでは、本研究開発のための予備的な研究行ってきました。高品質化を実現するゲノム編集対象遺伝子については、既存の文献情報を基に絞り込みを行い、実際にゲノム編集マウスを作製・評価することで独自に選定しています。このようなマウスでの研究成果を活用した標的遺伝子選定は、実験動物と産業動物の双方のゲノム編集ノウハウを保有するセツロテックだからこそ実現できる方法であると言えます。
今後は、ヤギ受精卵のゲノム編集を現地の研究者と共同で実施し、ゲノム編集ヤギの作出を目指します。

【事業パートナー募集中!】
セツロテックは、本研究により確立される高品質カシミヤ繊維を生産するゲノム編集ヤギを活用した事業を協働実施してくれる、パートナー企業を広く募集しています。本研究成果は、SDGsの達成に大きく貢献が見込まれるものです。ともにモンゴルで産業振興と持続性が高い畜産業づくりに取り組みましょう。

【用語説明】
1)     GEEP法:受精卵エレクトロポレーション法(特許6980218号)は、ゲノム編集因子およびgRNAといったゲノム編集ツールを、電気の力(エレクトロポレーション)によって受精卵に導入する方法です。GEEP法を活用することで、短時間で均一な条件下で、大量の受精卵に対して低侵襲にゲノム編集を行えるというメリットを産み出し、高効率なゲノム編集生物の作製が期待できます。

【セツロテックについて】
セツロテックは、徳島大学で培った技術とノウハウを基に2017年に創業した、徳島大学発ベンチャー企業です。徳島大学の竹本龍也(代表取締役会長CTO)らは、2015 年に「ゲノム編集マウスを簡便にかつ高効率に作製できる手法」を開発しました(特許6980218号)。また、徳島大学の沢津橋俊(取締役CSO)は、培養細胞で高効率ゲノム編集を実現するVIKING法を開発しました(特許6956995号)。さらに、独自の新規ゲノム編集因子ST8(特許7113415号)を開発し、医療分野のほか、農業や畜産分野において品種改良を高速化する研究開発を進めています。セツロテックは、これらの独自技術を活用し、アカデミア・企業の研究者向けのゲノム編集受託サービスを展開するほか、Cas9代替因子を活用したゲノム編集生物を広く産業界に提供し、ゲノム編集産業を開拓することを目指すPAGEs(Platform App(lication) using Genome Editing by Setsurotech)事業を展開しています。「徳島をゲノム編集産業発祥地に』というビジョンを掲げ、地域産業に貢献していきます。
 
◆株式会社セツロテックの概要
   1. 商号:株式会社セツロテック
   2. 代表者:代表取締役 竹澤 慎一郎
   3. 所在地:徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15 藤井節郎記念医科学センター
   4. 設立:2017年2月22日
   5. 主な事業の内容:ゲノム編集による研究支援サービスならびに新品種の事業化
   6. URL:https://www.setsurotech.com/

 

<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社セツロテック 担当:竹澤
E-mail:setsuro@setsurotech.com

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