回答いただいた1, 020社(7月4日~8月1日時点)のうち、全体の80%以上が少なからず原油・原材料高騰の影響があると答えており、会員企業の多くが経済的な負担を強いられていることがわかりました。さらに、昨今の不安定な社会情勢においてこの影響は今後も長期化することが予想されています。
レポート全文は以下からご確認ください。
https://prtimes.jp/a/?f=d29825-20220906-a4bb634677b27c10a6e36a7aeedbf80c.pdf
※1 弊社が提供している中小企業の労働生産性向上を支援する公的制度・人事・労務・財務・IT活用のサブスクサービスの名称
「原油・原材料高騰等は業況に影響はどの程度ありますか?」という質問に対して、」という質問に対して、474社が「大きな影響がある」、377社が「どちらかといえば影響はある」と回答し、全体の46%もの企業が大きな影響を受けているということだけでなく、少なからず影響を受けている企業は実に83%にも及ぶことがわかった。 原油・原材料高騰の影響が一部のものではなく、とても広範囲に及ぶものであり社会的な問題となっていることがわかる。
業種別に回答をみると、製造業、運輸業は特に影響が大きいと感じていることがわかる。製造業では全体の91.7%、運輸業では全体の90.1%の企業が少なからず影響があると回答している。 製造業はエネルギー高騰の影響もそうだが、コロナ禍による物流網の混乱を起因とする供給不足によって半導体をはじめ、アルミニウムや鋼材等の幅広い原材料が値上がりしており、影響が大きい。
更には部品不足により、そもそも受注自体が延期や停止になるというような影響も出ている。 また運輸業においては、燃料費の高騰に加え、タイヤ・オイル等の石油製品の値上がりもあり、広い範囲に値上がりの影響が出ていることも要因といえる。 ただ一方で、情報通信業は半数以上の企業が「大きな影響はない」「どちらかといえば影響はない」と回答している。
経済全体としての不況の影響は多少あるものの、コロナ禍による移動の制限でも影響を受けにくく、人が資本のため原油や原材料の高騰でもそこまで大きい影響はないようだ。
2.原油・原材料高騰に対する中小企業の対応方法
「原油・原材料高騰の対策について、具体的な取り組みと状況を教えてください」(複数回答可)という質問に対しては、53%が取引先に対しての値上げ交渉を行っていると回答した。 次いで、「業務改善などの効率化に取り組んでいる」と回答したのが28%、「取引先に対しての値下げ交渉」「材料の調達先など取引先の変更」を行っているのがそれぞれ約15%で、「人員削減でのコスト削減を行っている」と回答したのはわずか3%にとどまった。
基本的には商流の変更や人員整理等の大きな動きはせず、コスト高を販売価格へ転嫁することや業務改善によるコスト減を主な取り組みとしている。また人員の削減は行っていないものの休業に関する助成金である、「雇用調整助成金」を活用しながら人員のコントロールを行っているという回答も多かった。
※業種別の取り組みについては、PDFファイルをご参照ください。
全体として半数以上の企業が値上げをしている一方で値上げに踏み切れていない企業や交渉が難航している企業もあるのが実情だ。 そのためここでは取引先に値上げ交渉する際の基本を改めて押さえていきたい。
値上げ交渉の基本
事前準備
■ 価格根拠の資料を作成
価格交渉では、価格の根拠となる客観的なデータを提示する必要がある。
原材料費・エネルギーコスト・労務費について、これらの上昇を取引価格に反映しない取引は、独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがある。値上要求にあたっては、たとえば以下のような価格根拠の資料を作成して、交渉に臨んでいただきたい。
・ 原材料の内訳と、それぞれの原材料価格の推移資料
・ 電気料金・ガス料金、燃料調達費などエネルギーコストの推移資料
・ 最低賃金の引上げ、人手不足による労務費の上昇資料説明
・ 上記の外的なコスト増加に対応するために企業努力で対応可能な範囲及びこれまで実施してきた
企業努力をアピールする資料
・ 価格変更は安定供給や品質安定にどのような影響があるかをアピールする資料
■ 競合に対する自社の強みの把握
競合(同業他社)と比較した場合の自社の強みを整理しておく。価格だけでなく、品質・納期・機能など価格以外のメリットについてもまとめておくと良い。
競合と比較して
・ 価格は安いのか、高いのか
・ 製品、サービスの品質はどうか
・ 納期対応力・生産能力はどうか
・ 製品、サービスの機能・技術力は優れているか
■ 提示価格・目標価格・最低価格等の設定
最初に取引先に提示する「提示価格」、自社として納得できる「目標価格」、これ以上は譲歩することができない「最低価格」の3種を設定する。
場合によっては価格交渉のテクニックとして目標価格よりも上の提示価格を決めておく必要である。
また価格以外に、自社で受け入れることができる取引条件についても整理しておきたい。
価格交渉
価格・取引条件の交渉
事前に準備した客観的かつ合理的なデータを提示しながら、値上交渉を進めていく。
ポイントとしては、最初に提示価格を提示し、相手の反応を見ながら「目標価格」での妥結を目指す。
また必要に応じて、価格以外の対案・取引条件を提示していく。たとえば、以下のようなものが考えられる。
・ 加工方法や原材料、設計の変更
・ 包装方法や納品頻度の変更
・ 検査方法の見直し、変更
・ 支払い条件や保証期間の見直し
・ サービス体制の変更
・ 固定費の変動化、自社調達から材料支給の取引への変更
文書化
■ 取引条件・ルールの文書化
取引条件・ルールについて、議事録・見積書・契約書などで文書化しておくことが望ましい。
取引条件に関するルールとしては、以下のような例が考えられる。
・ 製品単価の算出ルール
・ 追加費用の負担ルール
・ 型等の保管・廃棄ルール
・ 補給品の支給条件・単価算出ルール
・ 運送経費の算出ルール
・ 図面・ノウハウの開示ルール
※ 出典:中小企業庁「ミラサポPlus」マンガでわかる「価格交渉」をもとに弊社作成
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/18596/
上記に挙げたものは基本的なポイントのため、自社の状況に合わせて取り組む事項は判断していただければと思う。 特に今回のような突発的な高騰で価格変動が不安定な中では本来の価格・料金とは峻別し、変動分のみを上乗せするサーチャージ制は比較的有効である。 また価格交渉は根拠・裏付けとなる資料の用意が大変重要であるため、十分に準備した上で望んでいただきたい。
3.まとめ
コロナ第7波の拡大やウクライナ情勢の長期化により、原油・原材料高騰は今後も長引くことが予想される。
さらに、10月には大幅な最低賃金引き上げも検討されているため人件費増加にも備えなければならない。
急激な経費増加の対応策として販売価格に転嫁することは第一に考えられるが、値上げ交渉に難航した場合に備えて今のうちから運転資金となるキャッシュを十分に確保しておくことが重要である。 原油・原材料高騰対策のための融資や補助金を設けている自治体もあるため、状況に応じて活用を検討することも良いだろう。
◆中小企業の原油・原材料高騰に関する実態調査
https://prtimes.jp/a/?f=d29825-20220906-a4bb634677b27c10a6e36a7aeedbf80c.pdf