高齢者の骨折の多くは、骨の強度が低下し、わずかな外力により引き起こされる脆弱性骨折で、骨粗しょう症が要因となっています。また、一度脆弱性骨折をした骨粗しょう症の患者さんは、適切な治療を受けないと短期間のうちに二次骨折を引き起こすリスクが高まるとともに、骨折を原因に要介護になるリスクも高まります。
大阪市の国民健康保険被保険者のデータを分析すると、骨粗しょう症の患者さんの約7割が薬物療法を受けていないと推定されています(*2)。本事業は「二次骨折予防を目的とした骨粗しょう症疾患啓発」を目的として、地域における疾患啓発と、行政と医療の連携支援を並行して行い、二次骨折予防のための環境づくりを目指して実施しました。
■事業実施概要
対象者 : | 40~74歳の大阪市の国民健康保険被保険者のうち、過去に脆弱性骨折の既往があるにもかかわらず骨粗しょう症の治療歴がない市民520名 |
勧奨方法 : | 骨折歴(骨折傷病名と最終診療年月)を記載した案内状、医療機関リスト、リーフレットを封入した勧奨通知を送付 |
勧奨資材発送日: | 2021年3月17日※再勧奨通知の効果検証を目的として、520名のうち、約半数には4月13日に再勧奨通知を送付 |
効果検証期間 : | 2021年3月から2021年10月まで |
■主な結果(*2)
● 通知送付7ヵ月後の骨粗しょう症に関する医療機関受診率は9.8%であり、比較群の1.8倍の受診率でした。(対象者520名のうち通知送付前に骨粗しょう症に関する診療記録があった9名を除いた511名を結果解析の対象としました。また、比較群として、前年同時期の同定義の対象者の受診状況を設定しました。比較群の受診率は5.4%でした。)(図1)
● 個別受診勧奨は骨粗しょう症診療の受診率を向上させ、またアプローチ回数を増やすことでさらなる受診者増に繋がることが示唆されました。(図2) ● 2021年は、コロナ禍の影響で医療機関への受診率の低下が確認されました。一方で、骨粗しょう症関連の受診は増加しており、今回の通知勧奨によると推察された。(図3) |
図1:事業実施群と比較群の新規受診者数と受診率の推移(累計)
*比較群:2015年12月審査分~2019年12月審査分のレセプトデータによる「脆弱性骨折の既往歴がある骨粗しょう症未治療者」の、2020年3月~2020年10月の骨粗しょう症を目的とした受診の状況(大阪市健康局健康づくり課: 大阪市における二次骨折予防を目的とした骨粗しょう症疾患啓発事業報告書より一部改変)
図2:送付群毎の通知発送後の新規受診者数と受診率の推移(累計)
*2021年3月17日に勧奨通知を送付し、2回送付群には4月13日に再度勧奨通知を送付後、10月診療分(11月審査分)までのレセプトデータを解析(大阪市健康局健康づくり課: 大阪市における二次骨折予防を目的とした骨粗しょう症疾患啓発事業報告書より一部改変)
図3:対象者の医療機関受診状況と骨粗しょう症診療受診状況の分析
(大阪市健康局健康づくり課: 大阪市における二次骨折予防を目的とした骨粗しょう症疾患啓発事業報告書より一部改変)
本事業を通じて、過去に脆弱性骨折の既往にかかわらず、骨粗しょう症の治療歴のない骨折リスクが高い方に個別の受診勧奨通知を送付することで、骨粗しょう症の受診率の向上に繋がることがわかりました。また、通知の中に市内の居住地域にある骨粗しょう症の診断や治療に対応可能な医療機関リストを同封したことで、通知を受け取った市民の多くが適切な医療機関への受診に繋がりました。一方、骨粗しょう症の診断・治療を専門としない医療機関を受診した方も多く、行政と医療機関とのさらなる連携強化や、住民への骨粗しょう症啓発など今後も継続して取り組むべき点として考えられます。
本報告書の詳細は、大阪市ホームページをご参照ください。
ウェブサイト:https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000570308.html
脆弱性骨折について
世界的に、50歳以上の女性3人に1人、男性5人に1人が骨粗しょう症による脆弱性骨折を起こすとされており、高齢化に伴いこの数はさらに増加する見込みです。また、骨粗しょう症による脊椎や大腿骨近位部骨折は、日々の活動に著しく影響し患者さんのQOLを低下させ、救急病棟を含む通院を増やし、治療費の増加につながります(*3)。大腿骨近位部骨折患者さんのその後の生存率は、一般人口より低い推移を示します(*4)。こうした状況にもかかわらず、日本の骨粗しょう症患者さんのうち治療を受けている割合は、わずか20%程度(推定)に過ぎません(*5,6)。また、脆弱性骨折は介護や寝たきりの要因でもあります。官公庁統計を基にした試算では、骨折・転倒を要因とする介護サービス負担は2018年には1.9-2.8兆円、その中でも家族による介護負担は0.8-1.7兆円と、最も大きな要素となっていることが報告されています7。
アムジェン株式会社について
アムジェン株式会社は、世界最大規模の独立バイオテクノロジー企業である米国アムジェン社の日本法人です。2013年10月にアステラス製薬との合弁会社であるアステラス・アムジェン・バイオファーマとして事業を開始し、2020年4月1日にアムジェン社の完全子会社となり商号を変更しました。アムジェン株式会社では、循環器疾患、がん、骨疾患、炎症・免疫性疾患、神経疾患を始めとするアンメット・メディカル・ニーズが高い領域に焦点を絞り、現在約700人の従業員が、「To serve patients – 患者さんのために、今できるすべてを」というミッションのもと、臨床開発から販売までの活動を行っています。
詳細については www.amgen.comをご覧になるか、www.twitter.com/amgenをフォローしてください。
株式会社キャンサースキャンについて
キャンサースキャンは、「人と社会を健康に」というミッションの達成に向け、データサイエンスとマーケティング、行動経済学、公衆衛生の専門知識を掛け合わせ、特定健診の受診勧奨や生活習慣病の重症化予防を目的とした受領勧奨、がん検診の受診勧奨、予防医療にかんする新たな事業開発等、日本の予防医療の推進を支援する各種事業を展開しております。
累計700以上の市町村での各種保健事業の実施支援を通じて、コミュニケーションを変え、社会の仕組みを変えながら、健康になるための行動変容にフリクションがない世界を目指しています。
ウェブサイト:https://cancerscan.jp/
注意事項(アムジェン株式会社)
このニュースリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的とするものではありません。
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この件に関するお問い合わせ先
アムジェン株式会社(東京)
コーポレート・アフェアーズ
TEL 03-5293-8610
株式会社キャンサースキャン
塚田 善紹
TEL 03-6420-3390
Mail info@cancerscan.jp
References
1. 令和元年度 大阪市高齢者実態調査報告書(介護保険サービス利用者調査編)
2. 大阪市健康局健康づくり課: 大阪市における二次骨折予防を目的とした骨粗しょう症疾患啓発事業報告書より
3. Fujiwara, S, et al. J Bone Miner Metab. 2019; 37(2): 307-318.
4. 折茂肇: 日本臨牀. 2004; 62(増刊2):1-6.
5. International Osteoporosis Foundation. Patient Brochure.
http://share.iofbonehealth.org/WOD/2012/patient_brochure/WOD12-patient_brochure.pdf.
Accessed December 6, 2018.
6. Tsuboi M, et al:J Bone Joint Surg Br 89(4):461, 2007
7. ミリマン・インク 日本における骨折による介護負担とその推移‐官庁統計を用いた分析.
https://jp.milliman.com/-/media/milliman/importedfiles/uploadedfiles/insight/2019/client-report-fracture-care-cost.ashx