※ぶち海とは 海の中でもとてもきれいで豊かな海のことを指す。「very」を表す山口弁「ぶち」を元にした造語。ぶち海体験隊は、一昨年度の下関市、昨年度の周防大島町の体験学習に続き3度目の開催です。
- イベント概要
・開催概要 講義聴講、潜水調査、サザエ捕獲体験・実食
・日 程 2022年7月29日(金)9時~16時15分
・開催場所 山口県萩市 萩・明倫学舎、阿武町清ヶ浜遠岳、阿武町町民センター
・参加人数 山口県内の小学5・6年生 20名
- 萩ジオパークと豊かな海を復習、更に学んで問題を知る
DAY2のスタートは、前回同様萩・明倫学舎。体験1日目(DAY1:7月3日実施)では、マグマの活動を物語る白と黒のストライプとなったダイナミックな海岸の景色を、イカ釣り漁船に乗船してのクルージングや現地踏査で確認し、その成り立ちが豊かな海につながっていることを学びました。今回は座学で復習。ホルンフェルスの現地踏査でも講師を務めていただいた萩ジオパーク専門員の白井孝明さんに、改めて資料をもとに講義を受けました。隊員たちは、DAY1で現地で見た景色を今日は写真で改めて見て、地形がどのようにして生まれたかの説明を受けました。現地を見て学んだことに加え、改めて復習をしたことで、隊員たちの萩ジオパークの海に対する理解はより深まったようです。
講義の中盤以降は、その豊かな海を脅かす存在についての説明が行われました。スクリーンには、ある日突然海面を覆ったおびただしい数の白いものが映されます。「これ何かわかりますか?」「発泡スチロール!」プラスチック等の人工物は、自然にかえることなく残り続けます。そこで白井先生から一言。これまで現地で見つかっていた化石は貝類などの自然のものばかり。ごみなどの人工物が見られるようになったことで、このままだと未来の人はどんな化石を見つけるんだろう…?隊員たちに考えて書いてもらいました。スマホ、カメラ、アクセサリーなど、身近なものが沢山出てきました。「こんな化石が将来見つけられないようにするためには、これから私たちはどうすればいいと思いますか?」「拾う!」「捨てない!」隊員たちにも、海を守り、次の世代に引き継ぐための心構えがしっかりと出来たようです。
講義の最後は、これからのことについて。人間たちは、自分たちが快適・便利に暮らすために自然環境を変えてきました。その結果、自然災害は減ったものの、山から栄養豊富な土砂が海に流れなくなり、豊かな海が失われてきているようです。「人に良いことは自然に良くないことかもしれない。わたしたち人間も自然の一部であることを忘れないでください。」白井先生の言葉に、隊員たちは大きくうなずいていました。
- 豊かな海で今起きていることを現地で確認、海士(あま)の仕事体験で苦労も体験
萩の海について学びを深めた隊員たちはバスで移動し、隣町・阿武町清ヶ浜にやってきました。水着に着替え、ここからは海での体験です。清ヶ浜も萩ジオパークの一角ですが、近年は海藻や藻場が減少する磯焼けが起きています。隊員たちは磯焼けの原因の1つが、本来冬場に水温の低下で活動を弱めるムラサキウニ(地元名クロガゼ)が温暖化の影響で活発に活動し、海藻を食べつくすことだと、阿武町奈古海士グループの國近照夫会長から教わりました。
また、50年も続けている海士の仕事のことや、磯焼けを防ぐために行っている活動について説明を受けました。隊員たちは「海の中で何分も息を止めて潜り続けるなんてすごい」「磯焼けを防ぐ活動に地元の子供たちも参加しているのは偉いなと思う」などといった感想を語ってくれました。次は実際に海に入り、磯焼けの様子や海士の仕事体験を行いますが、その前にもう少し勉強です。周辺地域の海の生き物について、そして注意しなければならないことについて資料をもとに監視スタッフから説明を受けます。「海には沢山の生き物がいますが、人間にとって危険な生物がいくつかいます。アンソンクラゲがいたらすぐに離れましょう」「ライフジャケットは必ず着用しましょう」といった安全対策をしっかり行い、いよいよ海へ向かいます。
準備運動をし、ライフジャケットを着用。この日の気温は既に30度。「気持ちいい~」と言いながら隊員たちは海に入り、國近先生や監視スタッフの手ほどきを受けながら海底の様子を確認したり、実際にサザエを捕獲する海士体験を行いました。今回は体験という事で特別にサザエを事前放流しましたが、生き残るためにサザエも必死。「見えん~」「全然わからん」隊員たちは中々見つけることが出来ません。岩場を探したり潜ったりしながら、何とか30分間で17個のサザエを捕獲することが出来ました。
体験が終わったらちょうどお昼時。マグロ、カツオ、ケンサキイカといった地元のお魚いっぱいの漬け丼と、獲ったばかりのサザエのつぼ焼きが今日の昼食、黙食でいただきました。隊員たちは「魚の味が濃いような気がする」「自分が獲ったサザエだと思うと美味しい」と感想を教えてくれました。その後、磯焼けの原因となるウニを観察。國近先生がウニを割ると、増えすぎてエサを満足に食べていないためか、身が詰まっていないものばかり。「普段見るのと全然違うね」「ウニを減らすために何か出来ることはないのですか?」と質問する隊員もいました。
- ワークショップ:イカす海を未来につなぐため、商品づくりのアイディアを絞りだす
清ヶ浜を後にした隊員たちは、最後の学習地、阿武町町民センターに移動。山口県の熱源人材でもある船崎美智子さんから、これまで学んできた萩の豊かな海が、ひょっとすると未来にはなくなっているかもしれないこと、豊かな海を未来につなぐための1つの方法として、いろんな形の発信をして、多くの人に海に関心をもってもらうことが大切なことだと教えていただきます。そして、その発信のひとつとして「ぶち海体験隊」は”イカすお取り寄せ”商品を考えていくことを目的としていることを、隊員たちに改めて理解してもらいました。
食べた人が萩ジオパークの海やケンサキイカに思いを馳せ、美しい豊かな海を、大切に未来につないでいこうと思ってもらえるような”イカすお取り寄せ”商品をどうやったら作れるのか…。
それを教えていただくために、萩市須佐のイカ料理の専門店「梅乃葉」代表、福島淳也さんにお話しいただきました。福島先生は、自身が20年にわたりケンサキイカを使った料理を考え続けていることや、DAY1でも勉強した、ブランドとしてのケンサキイカを作り出すまでの苦労などを改めて教えてもらいました。またオリジナル商品を作るにあたっては、自分が好きな食べ物や既にある商品などの食材を、イカに変えたりイカを足してみるとイメージが付きやすいことや、ネーミングはわかりやすい方が良いこと、イカは過熱すると縮むので、他の食材と合わせてボリュームを出す方が良いことなどのアドバイスをいただきました。
お話の後は、早速商品開発のアイディアを出します。ワークシートを前に格闘する隊員たち。中々筆が進まない隊員もいれば、船崎先生、福島先生をはじめスタッフに質問する隊員、追加のワークシートをお願いする隊員もいて、時間はあっという間に過ぎていきました。最後に途中経過という事で、隊員全員にアイディアを発表してもらいました。色々なアイディアが出る中、福島先生もメモを取りながら時々うなずいていました。これで本日のプログラムは終了、隊員たちは参考資料として様々なイカの商品を自宅に持ち帰り、更にアイディアをブラッシュアップすることを心に誓い、帰路につきました。
- 商品化企画や県知事訪問などに向け、これからも体験隊活動は続く
リアルでの体験隊活動は今回で終了ですが、これからは体験をもとにした、オンラインによる学びの共有を行い意見交換をしていきます。隊員たちは各自でイカを使用した”イカすお取り寄せ”商品案の製作、手作り新聞の作成、そして「うみぽす」の製作を行い、出来上がったものをオンライン上で共有、隊員同士で意見交換を行う予定です。更に、体験隊で得た成果を手に県知事に報告訪問、”イカすお取り寄せ”案をもとに商品化、読売新聞タブロイド判特別号を発行し、県内の小学5・6年生全員に配布する予定です。
<団体概要>
団体名称:海と日本プロジェクトinやまぐち実行委員会
URL:https://yamaguchi.uminohi.jp
活動内容:山口県は三方を瀬戸内海、日本海、響灘という異なった特色のある3つの海に開かれた「海口県」です。「海と日本プロジェクトinやまぐち実行委員会」では、ふるさとの海の現状を一人でも多くの人に知ってもらい、海口県を未来につなぐ行動を拡げていくことを目的に活動しています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/