連結子会社におけるスターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」に関するLaboratoires KÔLとの供給およびライセンス契約締結に関するお知らせ

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 窪田製薬ホールディングス株式会社(本社:東京都港区、以下「当社」)の連結子会社であるKubota Vision Inc. (所在地:アメリカ合衆国・ワシントン州シアトル、Director of the Board, Chairman, President, and CEO;窪田 良、以下「Kubota Vision」)は、スターガルト病を対象とした治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」について、コンパッショネート・ユース・プログラムに基づく提供を目的として、2026年3月2日付けで、Laboratoires KÔL(本社:フランス・クレルモン=フェラン、Founder and CEO; Sophie Momège、以下「KÔL社」)との間で、供給およびライセンス契約(Supply and Licensing Agreement)を締結しましたので、下記の通りお知らせいたします。

調印式会場にて(左:Laboratoires KÔL Founder and CEO Sophie Momège氏、真ん中:Laboratoires KÔL Business Development and Industrial Operations Director Rudy MARTEAU氏、右:当社代表取締役 窪田良)

                      記

1. 本契約の目的

 本契約は、Kubota VisionおよびKÔL社が、フランス(以下「本地域」)において、コンパッショネート・ユース(人道的使用)承認のもと、スターガルト病を対象とした治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」を提供することを目的として、協業するものです。

2. 本提携の概要

 Kubota VisionおよびKÔL社は、以下の内容について合意しています。

  • Kubota Visionは、エミクススタト塩酸塩の最終製剤を独占的に製造し、KÔL社に供給する。

  • KÔL社は、エミクススタト塩酸塩の最終製剤をKubota Visionから購入する。

  • KÔL社は、本地域において、コンパッショネート・ユース承認のもとでエミクススタト塩酸塩を流通・供給する独占的権利を有する。

  • 金銭条件として、KÔL社からKubota Visionに対し、エミクススタト塩酸塩の製造の進捗等に応じた製造支援に係る対価および製品の純売上高(Net Sales)に基づくロイヤルティが支払われる。

 Kubota Visionは、原材料の調達、医薬品有効成分(API)の製造、最終製剤(経口錠)の製造および包装、ならびに規制当局による審査対応業務を担当します。

 一方、KÔL社は、エミクススタト塩酸塩の製造を除くすべての業務、主として保管、流通、フランス医薬品・医療製品安全庁(ANSM)との現地対応、医療情報提供およびメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)関連業務が含まれます。

 金銭条件の詳細は非開示ですが、製造支援に係る対価は今期中にも複数回受領見込みであり、進捗について適時開示規則に基づき速やかに開示してまいります。また、コンパッショネート・ユース承認後に得られるロイヤルティの料率は相応に高く、将来的な累計収益の大半はロイヤルティ収入が占める見込みです。今後、KÔL社と連携してコンパッショネート・ユース承認に向けて申請の準備を行います。申請から承認までは、ANSMの状況や対応次第ですが、数か月程度の予定です。

 本件について、当社グループの代表取締役会長、社長兼最高経営責任者の窪田良(眼科医、医学博士)は次のようにコメントしています。

「このたび、スターガルト病を対象としたエミクススタト塩酸塩の開発、供給および流通に関し、KÔL社と契約を締結できたことを大変嬉しく思います。KÔL社は、眼科領域における深い専門知識に加え、フランスにおけるコンパッショネート・ユース・プログラムでの豊富な実績、ならびに欧州における着実なプレゼンスを有しており、希少網膜疾患におけるアンメット・メディカル・ニーズに応えるという、私たちの共通の使命をさらに前進させる理想的なパートナーです。本協業を通じて、視力の維持および回復の可能性を有する革新的な治療法への世界的なアクセスを加速させることを目指します。Kubota Visionの臨床開発力および視覚サイクルモジュレーション技術と、KÔL社の希少角膜・網膜疾患領域における経験、ならびにコンパッショネート・ユース・プログラムに関する知見を融合させ、患者さん、ご家族、そして世界の眼科医療コミュニティに意義ある貢献ができることを期待しています。」

 また、Laboratoires KÔL社の創業者兼CEOソフィー・モメージュ(薬学博士)は、次のようにコ

メントしています。

「現在、有効な治療法が存在しないスターガルト病に対し、Kubota Visionと協業できることを大変光栄に思います。当社の専門知識とKubota Visionの確かな臨床開発力を組み合わせることで、世界中の患者さんに初めてとなる有効な治療選択肢を届け、子どもから成人に至るまでの視力低下の軽減に貢献することを目指します。」

3. Laboratoires KÔLの概要(2026年3月現在)

(1)名称

Laboratoires KÔL

(2)所在地

22 allée Alan Turing, 63000 Clermont-Ferrand, France

(3)代表者の役職・氏名

Founder and CEO, Sophie Momège, PharmD

(4)事業内容

角膜移植拒絶、角膜血管新生、角膜幹細胞欠損などの角膜関連疾患を中心とした眼科領域における医薬品の研究開発・製造・販売を行う。特に、希少角膜疾患を対象とする治療薬の開発を強みとしており、独自のアンチセンスオリゴヌクレオチド技術「Olisens®」を基盤に、前臨床から臨床試験段階に至るまでの開発を推進している。

(5)設立年月日

2020年2月

(6)当該企業との関係

資本関係:該当事項はありません。

人的関係:該当事項はありません。

取引関係:該当事項はありません。

関連当事者への該当状況:該当事項はありません。

4. Kubota Vision Inc.の概要(2026年3月現在)

(1)名称

Kubota Vision Inc.

(2)所在地

107 Spring Street, Seattle, WA 98104, USA

(3)代表者の役職・氏名

Ryo Kubota, MD, PhD

Director of the Board, Chairman, President, and CEO

(4)事業内容

眼科に特化した医薬品・医療機器の開発

(5)設立年月

2002年4月

(6)資本金

212,606千米ドル

5. 日程

(1)契約締結日

2026年3月2日

(2)業務提携効力発生日

2026年3月2日

6. 今後の見通し

 本契約の締結による当社の連結業績への影響につきましては、現在精査中であります。本契約に基づき、当社は今期以降にエミクススタト塩酸塩の製造の進捗等に応じた製造支援に係る対価およびロイヤルティ収入を受領する可能性がありますが、コンパッショネート・ユース制度に基づく供給であり、患者数、供給数量、規制当局の判断等の不確定要素が多いことから、現時点で合理的な業績予想への織り込みは困難であります。

 今後、当社の連結業績に重要な影響を与える事象が生じた場合には、速やかに開示いたします。

 なお、この度のKÔL社との契約締結に伴い、第38回新株予約権の行使が可能となりましたことをご報告申し上げます。

                                            以上

スターガルト病について

 スターガルト病は、目の網膜に障害をきたす稀少遺伝性疾患で若年者に発症し、緩やかに視力が低下していきます。スターガルト黄斑ジストロフィー又は若年性黄斑変性とも言われます。スターガルト病の主な要因とされるABCA4遺伝子異常により、徐々に光受容体が損傷し視力が低下します。スターガルト病患者には、視野の欠損、色覚異常、歪み、ぼやけ、中心部が見えにくいといった様々な症状が見られます。典型的なスターガルト病は、小児期から青年期にかけて発症しますが、中には成人期まで視力低下を自覚しない患者もいます。

 眼球の奥にある網膜には、脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」と呼ばれる仕組みがあります。この視覚サイクルでは、まず光が網膜の光受容細胞(視細胞)にあるレチナール(ビタミンAの一種)とオプシンと呼ばれるタンパクが結合した光受容タンパク(視物質)により吸収され、その視物質の構造変化が起きます。この構造変化が視細胞内のシグナル伝達系を活性化して膜電位を変化させ、生じたシグナルが脳へと伝わる、という仕組みです。

 この視覚サイクル中、光受容時に生じる構造が変化した視物質からビタミンA構造由来の有害代謝産物が生成されます。この有害物質が、後述の理由で網膜色素上皮(RPE)細胞内に蓄積されると、RPE細胞の機能喪失及びアポトーシス(細胞死)が起こり、ひいては視細胞の喪失による視力低下あるいは失明にいたります。この有害物質のRPE細胞内の蓄積がスターガルト病の直接的病因です。

正常の網膜には、こうした有害代謝産物の前駆物質を視細胞内から外に運搬する膜輸送タンパクがあるため、RPE細胞は守られています。スターガルト病は遺伝性の網膜疾患で、この視覚サイクルにおける視物質の膜輸送タンパクABCRをコードするABCA4遺伝子の変異があり、その変異が本疾患の根本原因と考えられています。現時点では治療法はありません。

エミクススタト塩酸塩について

 エミクススタト塩酸塩は、当社グループ独自の視覚サイクルモジュレーション技術(VCM技術)により視覚サイクル中の重要な酵素であるRPE65を選択的に阻害することで視覚サイクルによって生じる老廃物を減らす効果があり、スターガルト病の抑制が期待されています。

視覚サイクルモジュレーション技術(VCM技術)とは、視覚サイクル(眼球の後部にある網膜内にて光子が電気信号へと変換する仕組み)によって網膜に蓄積する有害副産物を減少させ、また酸化ストレスにより網膜の障害を低減し、光ダメージから網膜を保護する効果が期待される治療技術です。

 網膜色素上皮(RPE)細胞はその成長に伴い、光受容体の先端を(一定の速度で)侵食し続け、同時に視覚サイクルの有害副産物が蓄積されていきます。エミクススタト塩酸塩が視覚系に適用されると(桿体細胞のみを標的とし、錐体細胞には作用しない)視覚サイクルにおける重要酵素の生成が抑制されます。エミクススタト塩酸塩が酵素の生成を抑制することにより、桿体細胞の活動も抑制されると同時にRPE細胞での有害副産物の蓄積も緩徐になります。視覚サイクルを遅らせる(モジュレートする)ことにより蓄積される有害副産物が減少し、病状の進行が遅くなります。

医薬品有効成分(API: Active Pharmaceutical Ingredient)

 医薬品の主成分として有効な薬理作用を示す化学物質または生物由来成分を指し、最終製剤(スターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」の場合は経口錠剤)に配合される前の原薬段階の物質です。

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