分析の背景
ふるさと納税は寄付者の意志を表すことができます。いわゆる寄附の使い道を選択することができます。年々寄付額が増加するにあたり、寄付者の選択も増えてきます。また、自治体はその産業規模や人口に関わらず、創意工夫や努力によって、ふるさと納税額を増加させることができます。今回は総務省から発表されている令和2年度地方財政状況調査から令和2年度歳入額、令和3年度ふるさと納税に関する現況調査の結果から令和2年度ふるさと納税額を抽出し、分析することにいたしました。その割合が特段に大きければ、自治体財政規模にも関わらず、自治体に出来ること以上の全てを出し切って結果を出した、と言えます。結果として依存度が高いと指摘される可能性もあります。
「令和2年度地方財政状況調査、令和3年度ふるさと納税に関する現況調査の結果(総務省発表)を独自に分析」の主な結果
■1位から20位
1位から10位までに北海道の4自治体が入りました。白糠町、紋別市、根室市、弟子屈町です。特に白糠町は人口8,000人弱の町でありますが、自治体職員と返礼品提供事業者との信頼ある関係を軸に、豊富な地域産品のブランド化や在庫拡充など、で毎年上位となる自治体です。5位の鹿児島県大崎町も人口約12、000人の町ですが、マンゴーやパッションフルーツ等の様々な農産品やうなぎの養殖の生産量はトップクラスになっています。戦略的な視野と突破力がある自治体職員が事業者やパートナ企業との有機的なネットワークを構築し、また本来の強みである資源リサイクル率14回日本一のノウハウを活かしSDGs産官学の取組みとも連携することで、寄付額もファンも大きく増やしました。
■21位から40位
25位の長崎県波佐見町町は波佐見焼が名産です。返礼品は2,000以上と豊富ですが、一つ一つの返礼品を丁寧に写真撮影し、コメントもシンプルにわかりやすくなっています。ブランドをしっかりと育てていきたいという自治体と中間事業者の戦略が明確です。40位の福島県磐梯町は約3、300人の小さな町です。農山村地帯で山紫水明な地域です。リゾートエリアでもあるこの町に、カメラ・レンズで世界的に有名な株式会社シグマ唯一の生産拠点があります。ほとんどの部品をこの工場で製造する、まさに「MADE IN AIZU」のシグマ製品が人気になっています。ふるさと納税等の関係から発展し、磐梯町と株式会社シグマは2020年に地域活性化を目的として包括連携協定を結んでいます。
■41位から60位
50位の長生村は千葉県唯一の村ですが、人口は1万人を超えています。ふるさと納税は地域産品が豊富な町が有利になっています。しかし、加工割合(付加価値)が50%以上であれば地域産品として認められますので、加工会社とうまく連携し、返礼品の競争力をつけているようです。このようにルール内でいかに魅力付けをするかは、通常のECビジネスでは一般的ですが、自治体という組織内で柔軟に対応するのは容易いことではありません。
■全国自治体の歳入額と寄付額について
これまで上位の自治体を分析してきました。全自治体で分析すると、以下のグラフの通り全国自治体の歳入額のうち、ふるさと納税額の割合は0.85%と非常に小さな数値になっています。
今回の分析を通じて
ふるさと納税の総額が1兆円に届こうとしているタイミングにて、ふるさと納税の寄付額が歳入額に対して、どれほどの影響があるのかを分析しましたが、自治体によって非常に大きな差がありました。しかし全体で見ると1%に満たない割合です。大切なことは、今すでに実額で約8,300億円の寄付が集まっており、その寄付の返礼品が約3割とすると約2,490億円の返礼品が生産、加工、またはサービス提供されており、その何倍もの追加的な経済波及効果が地方に広がり、また雇用を創出していることを、忘れてはならないと再確認をする機会となりました。
社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/