一般社団法人日本モバイル建築協会(本部:東京都千代田区、代表理事:長坂俊成、以下「当協会」)は、2025年11月18日に発生した大分県大分市佐賀関の大規模火災を受け、本日12月11日、大分県知事および大分市長に対し、被災者の生活再建支援として「移設可能な木造仮設住宅(モバイル建築)」の導入に関する提案書を提出いたしました。
本提案は、2025年7月17日に当協会と大分県との間で締結された「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定」に基づくものです。既存の賃貸型応急住宅(みなし仮設)では対応が困難な「職住近接」を必要とする漁業従事者や、地域コミュニティでの生活維持を望む高齢者世帯に対し、旧県立佐賀関高校跡地等を活用した移設可能な木造仮設住宅の整備を推奨する内容となっております。
■提案の背景:佐賀関特有の課題と「みなし仮設」の限界
今回の大規模火災では、約180棟が焼失(空き家を含む)し、多くの住民が住まいを失いました。佐賀関地区は高齢化率が約58%と高く、また「関アジ・関サバ」ブランドを支える漁業従事者が多く被災しています。 市営住宅等を活用した「みなし仮設住宅」は迅速な住居確保に有効ですが、佐賀関においては以下の3つ深刻な課題が生じる懸念があります。
-
産業存続の危機:
漁業従事者では約25人が被災しており、海から離れた内陸部への移転は、早朝出漁や漁具管理に支障をきたし、廃業や伝統産業の衰退に直結します。 -
コミュニティの分断:
高齢者が散り散りに入居することで、長年培われた近隣の相互扶助(共助)が失われ、孤立死などの二次災害のリスクが高まります。 -
医療・福祉・通学環境への影響:
住み慣れた地域を離れることは、高齢者の通院や介護サービスの継続、子どもたちの通学環境を断絶させ、生活基盤そのものを揺るがす恐れがあります。

■提案内容:モバイル建築による「地域内再建」モデル
当協会は、被災者が「佐賀関に戻りたい」という願いを叶え、安心して暮らせる環境を整備するため、以下の3つの施策を提案します。
-
「快適性」と「持続可能性」を両立するモバイル建築の導入:
工場生産される「モバイル建築」は、耐震等級3(最高等級)・断熱等級6(ZEH水準)の高い性能を有し、冬の厳しい寒さや結露から高齢者を守ります。また、従来の「使い捨て」となる仮設とは異なり移設が可能なため、供与終了後は大分市や被災者へ譲渡し、復興公営住宅等として再利用(本設移行)することで、SDGsの観点からも環境負荷と財政負担を大幅に低減します。 -
旧県立佐賀関高校跡地等の有効活用によるコミュニティ維持:
まとまった敷地を確保できる旧高校跡地等を活用し、団地形式で整備することで、コミュニティ単位での入居を可能にします。これにより、被災前の近隣関係を維持し、精神的な安らぎと相互扶助の基盤を提供します。 -
地元工務店との連携による地域経済への貢献:
施工は当協会に加盟する地元工務店が担当します。復興予算を地域内で循環させ、大分県の地域経済活性化に寄与するとともに、工場並行生産により約2ヶ月という短工期での迅速な入居を実現します。
■実績:令和6年能登半島地震での展開
当協会は、令和6年能登半島地震において、災害救助法に基づき261戸の移設可能な木造仮設住宅を整備しました。住居のみならず、伝統工芸「輪島塗」の職人のための仮設工房や、長期ボランティア支援拠点、仮設宿泊施設なども建設し、被災地の「住まい」と「なりわい」の双方を支援し続けています。この知見を、佐賀関の地域復興にも最大限活用します。




■一般社団法人日本モバイル建築協会 代表理事 長坂俊成 コメント
「民間賃貸住宅や公営住宅の空室を活用することは、避難所生活を短縮する上で重要な選択肢です。しかし、佐賀関のような漁村集落において、コミュニティや医療・福祉のケア、そして地域の『なりわい』を維持するためには、建設型応急住宅もまた、不可欠な選択肢として提示されるべきです。 避難所の早期解消を急ぐあまり、『みなし仮設』のみに依存するのではなく、建設型が完成するまでの間、既存ストックを避難所を補完する『2次避難所』として活用する柔軟な運用を提案します。これにより、コミュニティを維持しながら避難所を解消することが可能となります。 本協会のモバイル建築は恒久仕様であり、供与終了後は自治体に無償譲渡して市有住宅にしたり、被災者が譲り受けて自宅再建に活用したりできるため、国や自治体の財政負担を軽減します。能登半島地震でも実証されたこのスキームを、行政評価の対象としている総務省や財務省の評価も踏まえ、ぜひ住民の皆様への選択肢として提示していただきたいと願っています。」


