「街の豆腐店」大豆高騰でピンチ 赤字4割超え、豆腐原価は過去最高水準 豆腐の大豆原価、輸入品で平均1割超え試算

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帝国データバンクは、豆腐製造業界の現状と今後の見通しについて調査・分析を行った。
<調査結果>

  1. 「街の豆腐店」2021年度は赤字割合4割超え 市場は持ち直しも利益で苦戦
  2. 豆腐1丁当たりの大豆原価は1割超え 外国産大豆の価格、15年から1.7倍に
  3.  「このままでは厳しい」との声相次ぐなか、安定供給に向けた今後の動向に注目集まる

「街の豆腐店」2021年度は赤字割合4割超え 市場は持ち直しも利益で苦戦

「街の豆腐店」市場規模推移「街の豆腐店」市場規模推移

1丁100円以下、ディスカウントストアなどでは特売品として30円前後で販売されることも多い「豆腐」。卵やもやしと並ぶ物価の優等生として長年日本の食卓を支えてきたが、ここにきて大豆などの原材料価格高騰の波が押し寄せ、経営に大きな影響を及ぼしている。

「街の豆腐店」損益状況「街の豆腐店」損益状況

帝国データバンクが国内の豆腐製造・販売業者を対象に調査した結果、2021年度の、「街の豆腐店」市場(事業者売上高ベース)は約3000億円規模に達することが分かった。市場は16年度をピークに5年連続で減少を続けるものの、減少ペースはコロナ禍の20年度以降は小幅にとどまった。外食向けなどの販売量は低調に推移した一方で、巣ごもりによる自炊機会の増加から家庭向けが好調だった。なかでも「低脂質・高タンパク」といった健康食品としての新たな付加価値創出により、「プロテインバーなど新タイプの豆腐製品が好調」といった理由から増収につながった豆腐店もみられた。

他方、損益面では苦戦が続いている。2021年度の損益が判明した豆腐店のうち、赤字の割合は42%に達し、前年度(47%)に続き2年連続で赤字の割合が4割台となった。主原料となる大豆、特に米国・カナダ産大豆の仕入価格が高騰したことで調達コストが大幅に膨らんだ一方で、スーパー向けなどでは販売価格に十分な転嫁ができず、赤字に転落するといった事例も散見された。

 
豆腐1丁当たりの大豆原価は1割超え 外国産大豆の価格、15年から1.7倍に

「豆腐1丁」当たり 価格・原価推移「豆腐1丁」当たり 価格・原価推移

背景には、豆腐の原材料である大豆価格が急上昇している点がある。国産大豆は近年の収穫量減少が影響しているほか、輸入大豆ではウクライナ危機に伴う需給逼迫に加え、中国などの大豆輸入量増加で国際市況は高止まりが続くなどの影響に加え、急速に進んだ円安も重なって価格が押し上げられている。帝国データバンクが推計した1kg当たりの外国産大豆価格は、2022年は15年から75%上昇、前年からも3割増加した。一方、豆腐の平均単価はほぼ変化がなく、22年も豆腐1丁(300g)あたり平均60~70円と、15年の水準からほぼ横ばいで推移している。

この結果、豆腐1丁当たりの販売価格に占める大豆原料価格の割合は、2022年は外国産ベースで推計12%に達した。20年までは6~7%前後で推移していたものの、21~22年にかけて急激な原価上昇がみられた。大豆価格の急激な上昇を販売価格に転嫁できない状況が鮮明となっている。

「このままでは厳しい」との声相次ぐなか、安定供給に向けた今後の動向に注目集まる
原材料高騰を受け、食品業界では値上げ機運が高まっている。上場する食品メーカー105社を対象に実施した調査では、値上げする食品数は年内に累計2万品を超えることが予想されている。一方で、豆腐などの日配品ではもともと安価なところに低価格競争が激化しており、卸先となるスーパーなどの価格交渉はハードルが高いことが長年の課題だった。

こうしたなか、豆腐メーカーなどの業界団体では昨年、スーパーなど小売業界に対し窮状を訴える文書を14年ぶりに連名で打ち出した。原料となる大豆価格に加え、電気代など豆腐を作るためのコストが急激に上昇しているなか、「コストに見合った価格の変更ができなければ、経営が立ち行かなくなる」など、努力や工夫で吸収できる限界を超えているとの指摘もある。日本の食卓に欠かせない豆腐の安定供給を維持する中で、豆腐店の今後の動向が注目される。

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