【みんなの介護】最期は自宅か施設か…全国の8割の老人ホームで実施される「看取り」の実態が調査で判明

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掲載施設数No.1の老人ホーム検索サイト「みんなの介護」を運営する株式会社クーリエ(本社:東京都渋谷区、代表取締役 安田 大作)では、サイト運営で得た知見を基に介護事業の課題や社会的事象を調査・研究しています。
今回は、看取りニーズ増加に伴う介護施設の課題を調査しました。
  • 老人ホームでの看取り実施が増加

近年、老人ホームで最期を迎える方が増加傾向にあります。

(図:『人口動態調査』(厚生労働省)を基に作成)

この流れを受け、2020年に厚生労働省は介護施設でも利用者が人生の最期まで尊厳ある生活が送れるような方針を発表しました。
看取りケア専用の個室確保を目的とし、特別養護老人ホームや介護老人保健施設をはじめとした施設を対象とし、補助単価は1施設当たり最大350万円となっています。

これまでにもさまざまな看取り施策が打ち出されてきましたが、なかでも「ユニットケア型個室」の増加で利用者側の心理的ハードルが下がったことと、新たに制定された「看取り介護加算」により施設側の増収が見込まれるようになったことが、大きな後押しをしている背景もあります。
 

  • 理想は「最期は家で…」。現実は「施設での看取り」

制度的な後押しもあり、介護施設での看取りが増加する一方で、医療費の負担が立ちふさがります。
日本では、一人が一生のうちに使う医療費の約半分が死亡前の2ヵ月に使われると言われています。

病院で終末期医療のターミナルケアを行う場合、最期を迎えるまでにかかった治療費の1割は自己負担となり、手術を伴う場合は数十万円かかることもあります。
加えて、個室の場合は健康保険の適用外で全額自己負担となり、病院で「理想的」な最期を過ごすにはそれなりの費用がかかります。

病院側にも在院日数を短期化させなければならない苦しい台所事情があります。
かつては、入院日数や治療行為が多いほど病院側が受け取れる報酬が多くなる体系でしたが、2000年代に政府が医療費適正化政策を導入したことで短期化せざるを得ない状況となりました。

病院では、避けられない状況でない限りは長期的な入院ができず、看取りまで対応してもらうことも難しい傾向にあります。

自宅での看取りは、病院や介護施設と比べれば費用は掛かりませんが、介護する家族の負担が大きくなります。最期が近づき、ターミナルケアをしようとすると、家族だけでは対応できないことが多く、医師や看護師の訪問回数を増やさざるを得なくなることもあります。

施設での看取りニーズが増加する傾向にありますが、看取りに対応している施設数はどの程度なのでしょうか。

「みんなの介護」が保有するデータを基に、看取りに対応している施設数の割合がこちらです。

 

(図:「みんなの介護」保有のデータを基に作成)
 

  • 現場が抱える問題

約8割の老人ホームで看取りが受け入れられ、施設での看取り環境は整いつつあります。
環境が整う一方、現場の施設職員のケアが追い付いていない状況が問題視されています

看取りケアは、その性質から心理的な負担が大きく、介護職員が不安に感じることが多いと報告されています。

調査論文『介護職員の看取りに対する認識と認識に影響する要因─混合研究法を用いた探索的研究─』によると、看取り対応で不安に感じることは「利用者の容態が急に変化し、亡くなること」が53%、「利用者がいつ亡くなるのか、判断できないこと」が45%という結果も出ています。

経験がある介護職員からは「お世話して看取りたい」「今後も看取りを続ける」という意見が出る一方、経験がない職員からは「利用者の死はショック」「利用者の死に接したくない」という意見が出ています。

一人で対処・判断する状況への不安、経験不足、死と向きあう難しさなど、職員にとって看取りの不安は尽きません。
経験者・未経験者問わず、職員が最も重視しているのは「高齢者施設の看取りに対する方針」で41%の方が不安に感じています。
次いで、看護師やスタッフとの連携を38%の方が不安に感じている状況です。

(図:『介護職員の看取りに対する認識と認識に影響する要因─混合研究法を用いた探索的研究─』(川上嘉明、浜野淳ほか)を基に作成)

介護職員は、施設方針に基づき看取り対応をしていることがわかります。
次いで、「看護師やスタッフとの連携」も多くの介護職員が重要視しています。

つまり、施設経営者・現場のリーダーには、職員に対して看取りケアの方針を明確に示すとともに、看護師・医師との連絡方法や協力体制について整備し、看取りに取り組むことが求められています

医療機関との協力体制の構築に必要なポイントは以下の4点があげられます。

1.医師・看護師・ケアマネジャー・介護士などの職種間、さらに入居者の家族を含めたコミュニティ作り

2.強化型在宅療養支援診療所(24時間体制)を協力医療機関にし、ターミナル期の入居者に対しては【診療所】の医師と【施設】の看護師が訪問診療の時に情報交換できるようにする

3.多職種が参加する会議に診療所の職員参加も促し、急変時の対応を取り決める

4.医療職から介護職へ容体がいつごろ変化しそうか予測を共有する

利用者のニーズはもちろんのこと、かかわりを持つ誰もが適切な能力を発揮できるような環境作りがこれからの介護施設には求められていきます。
 

  • 本記事は「経営オンライン 第6回」を基に加筆修正を行った記事です

 

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