このイベントでは、児童虐待被害者のうち、児童養護施設や里親などの社会的養護に繋がることのなかった児童虐待被害者683名のアンケート統計データを初公開いたした。この統計データは、国も把握していなかった日本で初めてのものとなり、支援の輪から漏れてしまった虐待被害者に待ち受ける苦悩溢れる未来が数字となって明らかとなりました。そして、統計データと共に要望書を牧島かれん衆議院議員(元デジタル大臣、児童養護議連前事務局長)へ託し、自民党「児童の養護と未来を考える議員連盟」に提出いたしました。
社会的養護からもれた児童虐待被害者の日本初統計データ発表
一般社団法人Onaraが、2023年9月9日(土)~30日(土)に行ったアンケート調査(回答人数:683名)についての統計データを初公開いたしました。
子どもの頃に受けた虐待は、大人になってもその影響を大きく残すことが、明らかとなりました。
・精神科の受診歴あり 84.3%(日本全体では、3.9%)
・可処分所得140万円以下 63.8%
・生活保護受給率 16.4%(日本全体では、1.6%)
・自殺願望率 91.1%
・自殺未遂率 61.3%(日本全体では、コロナ禍(令和3年度)において、2%)
「社会的養護未経験児童虐待被害者の実態調査アンケート統計データ」は、こちらから
https://prtimes.jp/a/?f=d127756-3-e1c29281ba25cc30e3f9fa093f3eb252.pdf
政治家・専門家・支援者・当事者を交えたパネルディスカッション
見えなかった子どもたちが抱える問題、問題解決に立ちはだかる課題について、政治家、医師、支援者、当事者のそれぞれの立場からディスカッションを行いました。
山口有紗(小児精神科医)さんへの質問
―――虐待によるトラウマを抱えている方たちに、どのようなサポートやケアなどができる体制が整うと回復につながるか、教えて下さいますか?
「予防」という観点からすると、子どもたちが須らく持っている尊厳を子どもも大人も知っているということが大切。
トラウマを抱えている方が「気付く」から、医療に「繋がる」までに、精神的にも、アクセスとしてもいくつもの段階、ハードルがある。トラウマインフォームドへのアプローチが、須らくいろんなところである、できることが大切。
高橋亜美(アフターケア相談所ゆずりは所長)さんへの質問
―――「ゆずりは」さんにてアフターケアを行う支援対象者を、社会的養護退所者に限定せずに、社会的養護未経験者へも広げた理由を教えて下さいますか?
始めた時は、施設を出た方たちの相談を受け入れる予定でいたが、始めてみたら、施設退所者ではない方たちからも「一時保護だけで介された」「生きているのが凄く苦しい」「家がない」などの相談がたくさん寄せられ、「対象ではないから相談受けられません」とは言えないというところから始まった。
牧島かれん(衆議院議員)さんへの質問
―――社会的養護に繋がらなかった方たちへの支援が進まない要因として、どんなことが考えられますか?
社会的養護の対象年齢を弾力化する法改正が行われ、令和6年4月より施行されるため、これがちゃんと動くようにしなければいけない。ただ、始まっても、制度が使い難い、アクセスし難いなどがあるかも知れないので、その時は、その意見を聞かせて欲しい。
自民党「児童と養護の未来を考える議員連盟」へ要望書の提出
アンケート統計データを根拠として、自民党「児童の養護と未来を考える議員連盟」に要望書を提出しました。
【要望の内容】
1.社会的養護未経験児童虐待被害者の実態調査の実施及び子ども家庭庁や政府有識者会議でのヒアリングの場にて当事者等を参画させること
2.社会的養護自立支援事業に係る生活相談等を社会的養護未経験児童虐待被害者に対して拡充すること
3.トラウマ治療促進を目的とした医療体制の見直し及び検討を行うこと
4.子どもの権利教育における「児童虐待」に関する内容を充実させること
一般社団法人Onara代表丘咲つぐみインタビュー
イベントを終了しての感想を聞きました。
〈今日の感想〉
今まで長い時間社会から切り捨てられてきた児童虐待被害者の方たちについて、やっとその苦しさや生き辛さを数字として表すことができました。このアンケート統計データの作成ができたことは、当事者の皆さまのご協力があってこそです。アンケートの量はとても膨大で、トラウマを抱えた状態で回答することが、どれ程にしんどく、苦しかったことか知れません。また、その苦しさを感じながらも声を届けたい一心で精一杯言葉にしてくれたことに、ただただ頭が下がります。まずは、皆さんにお礼を伝えたいです。ありがとうございました。
そして、日本で初めてとなる統計データを作れたこと、国に要望書を届けられたことは、スタート地点です。ここから、具体的支援制度が実現し、トラウマ治療へのアクセスがし易くなるまで、国の動向を見守り続けると共に、声を出し続けたいと思います。
登壇者 プロフィール
=牧島 かれん=
衆議院議員
国際基督教大学(ICU)卒・博士(行政学)。ジョージワシントン大学ポリティカルマネージメント大学院修了。2012年初当選。元内閣府大臣政務官。2021年10月~2022年8月、デジタル大臣、行政改革・規制改革担当大臣。「児童の養護と未来を考える議員連盟」の事務局長。被害を受けた子どもが、自分の受けた出来事について、安心して他者(司法関係者/医療従事者など)に伝えられるよう手助けをする「付添犬」の啓発にも努める。
=山口 有紗=
小児科専門医・子どものこころ専門医・公衆衛生学修士
高校を中退し大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部を卒業、山口大学医学部に編入し、医師免許取得。東京大学医学部附属病院小児科、国立成育医療研究センターこころの診療部などを経て、現在は子どもの虐待防止センターに所属し、地域の児童相談所や一時保護所での相談業務などを行っている。
国立成育医療研究センターこころの診療部臨床研究員、こども家庭庁有識者会議構成委員。ジョンズホブキンス大学公衆衛生学修士。
=高橋 亜美=
アフターケア相談所ゆずりは所長
1973年生。自立援助ホームのスタッフを経て、2011年ょりアフターケア相談所ゆずりはをスタート。著書に「子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援」(明石書店2015年)「はじめてはいた靴下」(百年書房 2018年)など。アフターケア事業ネットワークえんじゅ代表理事(2018年より)。楽しい酒、川沿散歩、風呂で海外ドラマ観るのが好き。将来は、臨時宿泊と花屋さんとちょい飲みできる場所を作りたい!
=丘咲 つぐみ=
一般社団法人Onara 代表理事
1975年生。児童虐待防止活動家、虐待サバイバー、一児の母。脊髄希少難病と虐待後遺症により、20年以上に及ぶ入院療養生活を送る。寝たきり・車いす生活、精神疾患による閉鎖病棟の経験、生活保護制度を頼って味わった糞尿まみれの生活を経て、再起。税理士資格取得後、デロイトトーマツ税理士法人での経験を経て、C&Yパートナーズ税理士事務所独立開業。2018年、児童虐待ゼロ協会を発足し、当事者支援活動をスタートする。江戸川区児童相談所元職員。グリーフ専門士。
主催 一般社団法人Onaraについて
毎年20万人以上の子どもたちが児童虐待を受けています。これは、100人に1人の子どもが虐待を受けている、という計算になります。また、5日に1人の子どもが虐待死しているという現実があります。児童虐待とは、狭い家庭の中で起こっている「戦争」です。
一般社団法人Onara(おなら)は、児童虐待の被害を受けながらもどうにか生き延びることのできた方たち(成人)の伴走支援(相談・居場所作り・長期的な寄り添い)を行っています。2018年に任意団体として活動をスタートして以来、1,200名以上の方の横を歩いて参りました。また、支援と同時に、児童虐待の実態を多くの方に知ってもらうための講演活動を全国で行っています。
Onaraの目指す世界は、児童虐待被害者が「生まれてきて良かった」と笑顔になれる社会の実現です。
社名:一般社団法人Onara
本社所在地:東京都江戸川区西小岩1-20-15 M・A101号室
代表理事:丘咲 つぐみ
事業内容: 児童虐待被害者の伴走支援、及び、周知活動
設立: 2022年3月
取材のお申込みは、メールにてお願いいたします。
宛先:info@onara.tokyo