「医師の働き方改革」に関するアンケートを全国の病院向けに実施―施行まで半年に迫る中で見られる医療機関の動きとは

医療総合人材サービスの株式会社メディカルリソース（東京都千代田区、代表取締役社長：小林信幸）は、「医師の働き方改革についてのアンケート」を医療機関で実施し、170施設より回答を得ました（調査期間：2023年8月1日～8月10日）。

【調査背景】

「医師の働き方改革」施行まで、残り約半年と迫る中で、施行に向けた準備状況について、医療機関1,999施設を対象に、現状と今後の対応について調査しました。

【調査結果サマリー】

■ 「宿日直許可申請」に向けた取り組みについて

・約8割が申請済ないしは申請中という結果に

・回答の内、約1割の医療機関では、診療科や時間ごとに、限定した宿日直許可の申請を行うケースも

・医師数が少ない医療圏については、規定よりも宿直・日直の回数を増やして申請を行い、準備を進める

■「給与水準の見直し」について

・「検討していない」と答えた医療機関が約6割

・「未定」と答えた医療機関は約3割

・「検討している」と答えた医療機関は、全体の1割にも満たなかった

■月100時間の時間外労働を超える見込みの医師への面接指導医師選定について

・約5割が産業医の選任済みであり、その約8割が”院内の産業医”を選任している

・検討していないと答えた医療機関は約3割

【調査結果】

１、時間外労働規制水準について把握

回答のあった医療機関の内、94％がA水準を予定

回答のあった医療機関の内、大多数となる94％の医療機関が「A水準を予定している」と回答がありました。

医師の確保に苦戦する一次医療圏～二次医療圏の病院からの回答が多く、既存の在籍医師の時間外労働を減らす他、減らす分を補填する医師・スタッフの確保など、医師の働き方改革に向けた早急に解決すべき課題がいくつも見られているようです。

２、7割以上の医療機関が宿日直許可申請について「申請済み・対応中」

宿日直許可申請について、「申請済み」「申請中」を合算すると、合計して77%の医療機関が、

対応済み・対応中であると回答がありました。回答の中でも約1割の医療機関より、診療科毎の申請や、

輪番日の特定の時間を除く時間帯に絞ったものなど、限定的な申請を行うといった回答を得られました。

３、施行に際した給与見直しについては6割以上の医療機関が検討していないと回答

給与水準の見直しの有無については、93％の医療機関が「検討していない」「未定」との回答でした。

働き方改革施行により、医師や医師のタスク・シフト/シェア先となるスタッフの増加により、従業員数が増えて人件費がかさむことが見込まれます。これにより、給与水準を上方に見直しづらい状況が予想されるでしょう。

しかし、「給与を下げる予定」と回答する医療機関はなく、「給与を上げる予定」と回答する医療機関が見受けられました。これらは、医師不足が課題となる医療圏の医療機関に多いため、人材確保に向けた周囲施設と差別化を図るには、好条件求人を出す必要性が出てくることが予想されます。

４、月100時間を超える見込みの医師への面接指導については過半数が選定済みであると回答

院内・院外に関わらず、合計して52％の医療機関より、医師の面接指導における産業医は選定済みであると回答がありました。一方、「検討していない」は38％。このように回答した医療機関からは、「元々100時間の時間外労働を超過する医師はおらず、今後も見込みがない」とのコメントが複数見られました。

【まとめ】

2024年4月施行の「医師の働き方改革」まで残り約半年に迫る中、医療機関側の時間外労働の対策に向けた動きも徐々に進んでいます。課題の一つである宿日直許可申請においては、各医療機関が早急に解決すべき課題として、申請済・申請中の医療機関が急増している印象を受けます。

人材紹介会社として医師の対応を行う中でも、常勤先からの外勤規制がより厳しくなり、収入減少が見込まれることを危惧・懸念に思う医師の方が増えています。特に結婚・子育てといったライフスタイルに大きな変化が起きうる若手医師については、どのように外勤先の収入で給与・生活の質を担保するかが課題になりつつあります。

そうした医師に対し、常勤先の医療機関側は、勤務条件を緩和しつつ待遇は落とさないように業務効率化を行えるか、非常勤先の医療機関側は、宿日直許可申請により、受け入れ体制を整えられるか、具体的な取り組みの検討・強化がより必要になるのではないでしょうか。

当社としても、各医療機関が医療を円滑に進められるよう、医師のみならずタスク・シフト/シェア先となる看護師や薬剤師といった総合的な人的リソースを活かし支援を行っていきます。