このたびの建替え事業は、2032年に早大創立150年、2033年に理工創設125年を迎えるにあたり、西早稲田キャンパスにおいて、近年の大学院生や研究者の増加と研究活動の高度化を背景に、喫緊の課題であった施設の狭隘化を解消し、研究環境の改善に向けた施設面積の増床を目的としています。さらに、既存キャンパスに不足していた学生アメニティ機能の拡充および、COVID-19以降の教育のあり方を見据えた教室の収容人数・仕様・室数等の見直しを行います。今回の建替え事業は、この西早稲田キャンパス再整備の第一期工事であり、その後、第二期として59号館の建替えが計画されており、世界で輝くWASEDAの理工系の研究教育施設の実現を目指します。
【本リリースのポイント】
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早大創立150周年(2032年)、理工創設125周年(2033年)に向けて、約10年間(2023年~2032年)に及ぶ西早稲田キャンパス再整備工事の第一期となります。
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日本建築学会賞を受賞している既存の52号館を生きた教材:ヘリテイジとして継承するため完全に保存し、これを跨ぐように新52号館を建設します。
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52・53・54号館の延床面積が約3倍に増床(約9,000㎡⇒約27,000㎡)し、施設の狭隘化解消と研究教育環境の改善を図ります。同時に、地域の緑と連続性のある景観を形成しつつ、利用者である学生や研究者、また地域の方々にとっても、集いの場としての空間の確保も両立するランドスケープデザインを採用しています。
※当日の様子は、早稲田大学公式WEBサイトで掲載しています。ご覧ください。
https://www.waseda.jp/top/news/93550
<配置とスパンの継承>
大隈記念講堂の塔の伝統に呼応し、理工学部の新しさの象徴として、さらにキャンパスの建物構成の核としてキャンパス中央に51号館は配置されています。この51 号館とその建物群にはキャンパスを設計した安東勝男教授の思想が深く刻み込まれています。このたび、一連のキャンパス再整備計画を検討するにあたり、二面採光の教室やその構造が極めて特徴的である現52号館を、生きた教材:ヘリテイジとして残すこととしました。この52 号館の空間性の基軸となる通り芯寸法(スパン)を下敷きとして継承します。2,300 mmのスパンを踏襲することで空間スケールとシステムの保存へつながる第一歩として考えています。
既存52号館を跨ぐように新52号館を増築します。構造は既存52号館を挟んで立つ新設コアを結ぶ最上部のハンガートラスから各階床を吊り下げる架構形式とし既存52号館に荷重をかけないダイナミックな構造を用いて既存52号館自体をヘリテイジとして残す計画です。
既存52号館上部5階に設けられるラーニングコモンズです。 学生(学部生を中心とした)院生・教職員が自然と交流する西早稲田キャンパスの新たな学生の居場所となります。
<仮設校舎なしの計画>
学生にとっての重要な4年間(または6年間以上)過ごすことになるこのキャンパスを整備するにあたり、建設工事期間は、短くても9年になります。学部生が大学院修士課程に進学したとしても、そのキャンパス生活は6年間です。そのためこのキャンパス整備にあたっては、入学して仮設校舎で学び、仮設で学生生活を過ごし、卒業してしまう学生がいること、しかも数年間に渡りその状況をつくりだしてしまうことは避けるべきと考えました。本来の教育空間で本当の教育を受けるべく、仮設教室なし、かつ今建っている52 号館を使いながらのローリング計画とします。
地下鉄西早稲田駅から直結する新53・54号館地下1階のステージです。 地下レベルにありながら自然光が降り注ぐ開放的な吹抜け空間です。
新53・54号館に位置する新教室です。 既存52号館にある架構を見せる意匠を継承しつつ、自然光を取り入れながら日射遮蔽のための庇を設け、快適な教室環境を整備します。
<5つの空間性の保存と再解釈>
「51 号館(塔)を核とした建物群の構成」、「中庭とそれを構成する校舎配置」、「規律あるキャンパスグリッド」、「バッファーゾーンとしての隙間空間」、「ネットワーク動線(立体街路)」を個々に解くのではなく、総合的に再解釈し新たな空間として提案します。正門と51 号館の中心性から計画建物配置を検討し、旧52 号館の通り芯(2,300 mm)を踏襲し、各建物との接続、特徴ある4F(パークフロア)の230 mの連続空間などはいずれもこの5つの空間性の保存と強く結びつきます。
思想として感じられるもの、空間として感じるもの、時間が経ってから気づくものなどさまざまだと思います。早大校歌にうたわれるように、「集まり散じて人は変われど 仰ぐは同じき理想の光」 をそれぞれの学生が感じ、共有し、実現に向かう始まりの場を計画します。
最終的に第2期59号館完成後に4階パークフロア(延長230m)が完成し、西早稲田キャンパスのアメニティ空間として新たな学生・教員・研究者の集いの場を創出します。この4階の壁面緑化も環境に配慮した 緑化計画の一つとなります。
キャンパス南側(コズミック通り)に向けて、植栽、ベンチ、傾斜面の緑地を設けることで周辺に対して圧迫感を軽減します。地域の在来種を中心に歴史的に大久保地区に所縁のあるツツジ類などの園芸種も取り入れる予定です。現在の敷地境界から約1mセットバックして、既存の歩道と合わせた安全な歩行空間を確保します。また、すれ違いスペースも兼ねるベンチのある滞留スペースを設けることで、地域に親しみある歩行空間を提供します。
早稲田大学西早稲田キャンパスについて
西早稲田キャンパスは、戦後の高度経済成長期を迎え、大学への進学者が増大した時期に、早大としても総合大学として発展を遂行しようとした創立80周年事業の中核事業として、戸山キャンパスとともに整備されました。国有地の旧陸軍戸山射撃場跡地を取得し、建築学科の安東勝男・松井源吾両教授の設計により1967年に完成した西早稲田キャンパス(当初は大久保キャンパス)に、早稲田キャンパスから理工学部が全面移転を行いました。同年(第19回)の日本建築学会賞を受賞しています。キャンパス開設当時、霞が関ビルが完成するまでの期間に東京で一番高い高層ビルであり、当時は東洋一速いエレベーターを擁した51号館(高さ70.4m、地上18階建て)は、今もなお、同キャンパスの象徴としてそびえ、日々約1万人の学生や研究者が勤しむ姿を見守っています。2009年からは「西早稲田キャンパス」に名称を変更しています。
沿革
1882年 東京専門学校創設
1902年 早稲田大学と改称
1908年 理工科を設置
1963年 52,53,54,56,57号館竣工 (第一期建設)
1965年 58,59,60,61号館竣工 (第二期建設)
1967年 51号館竣工 (第三期建設)
1967年 大久保キャンパス(現:西早稲田キャンパス)へ移転
1979年 65号館竣工
1982年 大学創立100周年
1993年 55号館竣工
1997年 62号館(E棟)竣工
1999年 62号館(W棟)竣工
2002年 66号館(ロバート・J・シルマンホール)開所
2007年 理工学部再編(3学部3研究科へ分割)
2008年 理工学部100周年、63号館竣工、東京メトロ西早稲田駅が開業、キャンパス構内にも出入口が設置
2009年 「西早稲田キャンパス」へ改称
2023年 新52・53・54号館建替え 起工
2029年 新52・53・54号館 竣工予定
2032年 大学創立150周年、新59号館竣工予定
2033年 理工創設125周年
現在の建物 |
52号館 |
53号館 |
54号館 |
59号館 |
竣工年 |
1963年 |
1963年 |
1963年 |
1965年 |
階数 |
地下1階地上3階 |
地下1階地上4階 |
地下1階地上4階 |
地上4階 |
延床面積 |
約3,892.32㎡ |
約2,693.32㎡ |
約2,693.32㎡ |
約7,359.66㎡ |
参考)現在の西早稲田キャンパスドローン映像はこちら
西早稲田キャンパス整備 第1期 概要(予定)
所在地 東京都新宿区大久保3-4-1
施設名称 早稲田大学/西早稲田キャンパス52・53・54号館(仮称)
敷地面積 44,353.82㎡
建築面積 4,170.30㎡
延床面積 27,058.10㎡
高さ 39.99m
階数 地下2階/地上9階
構造形式 鉄骨造・鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造
建築主 学校法人早稲田大学
総合監理 学校法人早稲田大学キャンパス企画部
設計管理 株式会社 日建設計
施工 清水建設 株式会社
電気設備工事 株式会社 九電工
空調設備工事 新菱冷熱工業 株式会社
衛生設備工事 株式会社 城口研究所
工事期間 2023年7月上旬から2028年11月下旬
主な利用者 早稲田大学理工学術院所属の学部生、大学院生、研究者、教職員