世界三大感染症(エイズ、結核、マラリア)対策、新型コロナの影響から回復するも、SDGs目標達成に向けた軌道には、まだ乖離あり

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本日、世界エイズ・結核・マラリア対策基金 (グローバルファンド、事務局ジュネーブ) から2023年の成果報告書が発表されたことを受け、グローバルファンド日本委員会(公益財団法人 日本国際交流センター内、東京)は、補足として以下を発表いたします。

本日、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド、事務局:ジュネーブ)から2023年版の成果報告書が発表されました。

2020年以来、新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた三大感染症の治療や予防、検査のサービス提供が回復し、2022年はこれまでで最も高い成果を達成することができました。ただし、2030年のSDGs目標に掲げられる三感染症流の流行収束に向けた軌道に達するまでには、まだ大きな乖離があります。気候変動、紛争、経済の低迷と債務、人権侵害、国内および国家間で広がる不平等など、様々な危機が互に作用し複合的な危機となり、感染症対策の推進を妨げる要因となっています。本報告書は、感染に拍車をかける不平等を解消し、技術革新による新たな医療製品を用いた取り組みに資金を投じていく必要がある、と訴えています。

◆報告書 (英文) https://www.theglobalfund.org/en/results/
◆概要(和文) 

 https://www.theglobalfund.org/media/13276/corporate_2023resultsreport_summary_jp.pdf
◆グローバルファンドのプレスリリース (英文)

 https://www.theglobalfund.org/en/news/2023/2023-09-18-climate-change-and-conflict-slow-down-progress-despite-record-results/

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[成果報告書の主なポイント]

救われた命の数5900万人、死亡率は55% 減

グローバルファンドのパートナーシップの支援により、2002年の設立から2022年末までに5900万の命が救われました。グローバルファンドの支援対象国(約100カ国)では、エイズ、結核、マラリアによる合計死亡率は2002年以降、55%減少しました。これらは、コミュニティ、低・中所得国の政府、民間セクター、市民社会、そしてグローバルファンドの技術パートナーである国際機関などとの協働により達成できたものです。

1年間の成果:過去最高、コロナの影響から回復

2022年の1年間で、グローバルファンドの支援によるプログラムの三大指標の成果は、以下の通りです。いずれも過去最高となりました。

• 抗レトロウイルス治療を受けている HIV 陽性者: 2450 万人
• 結核治療を受けた人数: 670万人
• マラリア予防のため配布された蚊帳の数: 2億2000万張

以下の図に例示されている通り、2020年、21年は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてグローバルファンド支援による治療や検査の提供に中断や遅れが生じ、その件数は2019年より下回る、あるいは多少の増加にとどまる状態でしたが、2022年は最も影響を受けていた結核も力強く回復し、2019年の件数を上回りました。

SDGsまでの軌道

上記の進捗にもかかわらず、SDGs達成年である2030年に向けて国連機関が定めた目標に向けた軌道(以下緑色の線)には乗っておらず、大きな乖離があります。

複合的な危機

報告書は、対策の進捗を妨げる原因として、気候変動、紛争、経済の低迷と債務、人権侵害、国内および国家間で広がる不平等などを挙げています。例えば気候変動の影響としては、今までは温度が低くマラリアを媒介する蚊が生息していなかったアフリカの高地でマラリアが広がっていたり、マラウイやパキスタンのように異常気象のサイクロンや洪水の発生によりマラリア感染が急増したり、保健医療のインフラが被災し命にかかわる医療サービスの提供が中断されるなどの例が見られます。食糧難や水不足も集団での移住を促す原因となり、結核ような感染症に感染する脆弱性が高まることになります。

■世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)について
グローバルファンドは、低・中所得国の三大感染症対策を支える官民連携基金。G7を初めとする各国の政府や民間財団、企業など、国際社会から大規模な資金を調達し、低・中所得国が自ら行う三疾病の予防、治療、感染者支援、保健システム強化に年間40億~50億ドルを支援しています。2002年の設立以来、グローバルファンドのパートナーシップの支援により5,900万人の命が救われました。2020年以降の新型コロナ対策では、検査、治療薬、医療用酸素等の供給、保健システム強化で重要な役割を担いました。2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています。https://www.theglobalfund.org/en/

 ■グローバルファンド日本委員会(FGFJ)について
グローバルファンド日本委員会は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)を支援する日本の民間イニシアティブ。グローバルファンドに対する理解を促進するとともに、感染症分野における日本の役割を喚起し、政策対話や共同研究、国際シンポジウム、視察プログラム、一般向けの意識啓発などを実施しています。

(公財)日本国際交流センターのプログラムとして運営されています。

グローバルファンド日本委員会 http://fgfj.jcie.or.jp/
(公財)日本国際交流センター https://www.jcie.or.jp/japan/

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