この成果は、2023年9月4日~7日に開催された化粧品技術者の国際学術大会「33rd IFSCC Congress in Barcelona」にて技術発表しました。今後、本成果をもとに当社の製品開発に応用していきます。
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研究背景
真皮内においてコラーゲンを合成し、肌のハリや弾力に対して重要な役割を果たしている線維芽細胞は、加齢に伴って老化細胞に変化し、皮膚内に蓄積していきます。細胞老化に伴って、様々な炎症性サイトカインや増殖因子を分泌する変化があり、これを細胞老化随伴分泌現象(SASP: Senescence associated secretary phenotype)と呼びます。分泌されるタンパク質群はSASP因子と総称され、その分泌機構を明らかにすることは、肌の老化を予防する面からも重要であると考えられます。しかしながら、その機序はほとんど明らかにされておりません。そこでSASP因子の一つであるEREG(エピレグリン)が、真皮老化に関わっているのかを探るべく、本研究を行いました。
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研究結果
1. 高齢者の真皮組織において、EREG発現が亢進していることが示唆されました。
20~80代女性6名の皮膚を解析したところ、コラーゲン量が減少していた高齢者(70代以上)の真皮において、EREGの蛍光強度の平均値(%)が若年者(20代)に比べ高い傾向が認められました(図1)。
2. EREGを介して、線維芽細胞はECM産生能が低下していることが示唆されました。
次に、EREGの組換えタンパク質を用いて、線維芽細胞のECM産生能へ及ぼす影響を検討した結果、コラーゲン繊維の構成成分であるCOL1A1の産生について、EREGによって濃度依存的に抑制される傾向が認められました(図2)。
3. パールグリコーゲン及びヒシ果実エキスが、老化線維芽細胞におけるEREG発現を抑制することで、コラーゲン産生が促進されることを見出しました。
最後に、EREG発現を抑制できる機能性素材を探索した結果、パールグリコーゲンとヒシ果実エキスが、老化線維芽細胞におけるEREG発現を減少させることを見出しました(図3)。
さらに、40代以上の女性14名に対して、試験品(0.01%パールグリコーゲン配合ローション)を1日に2回、連日塗布したところ、2週間後に真皮のコラーゲン量が、プラセボローション(無配合ローション)を塗布した場合に比べ、有意に増加していることが確認されました(図4)。
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33rd IFSCC Congress in Barcelona(2023)にて発表
発表タイトル:New findings of a novel target for the skin’s chronological aging: Suppressing expression of the SASP factor EREG in senescent fibroblasts improves ECM deterioration
和文: 加齢による皮膚老化の新たな標的に関する新知見: 老化線維芽細胞において、SASP因子であるEREGの発現を抑制することで細胞外マトリックスの劣化が改善される
発表者:御木本製薬株式会社 秦野 衛
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