DIAMは「成長型中小企業等研究開発支援事業」(Go-Tech事業)に採択され、ダイヤモンド電極による環境負荷の低い循環型電解硫酸生成システムの開発を行っています。電解硫酸は硫酸を電気分解したより強い酸化力を持つ物質で、金属や樹脂を分解することができます。CFRPリサイクルにおいてもこの強力な酸を利用し樹脂のみ溶解、繊維状を維持した炭素繊維の分離ができることを実証しました。
CFRPはさまざまな領域でさらなる利用拡大が見込まれている一方で、最適なリサイクル技術が課題となっています。今後は自動車部品など用途毎のCFRPテストを拡充し、ダイヤモンド電極の利用によるCFRPリサイクル技術の確立を目指します。
CFRPリサイクルについて
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は軽量で強度が高く、航空機や自動車などの製造に広く使用されており、今後も軽量化、低燃費化を実現する素材として需要拡大が予想されています。一方で、製品の寿命を終えた多くが廃材として埋め立て処分されている状況が課題となっています。これは、CFRP製造の多くに熱硬化性という性質の樹脂が使用されており、一度固まると溶かすことができず、リサイクルが難しい材料であるためです。
CFRPはその用途から複雑な形状のものが多く、製造段階でも大量の廃材が出るためサーキュラーエコノミーの観点からもリサイクルの取り組みが加速しています。すでにいくつかのリサイクル技術が開発され、PCなど身近な製品の部品として生まれ変わらせるケースも出てきていますが、性能はバージンに比べ劣化してしまうため、水平リサイクルでのCFRPリサイクル技術は確立されていない状況です。
ダイヤモンド電極による環境負荷の低い循環型電解硫酸生成システム
DIAMは令和4年度予算「成長型中小企業等研究開発支援事業」 (Go-Tech事業)に採択され、ダイヤモンド電極による環境負荷の低い循環型電解硫酸生成システムの開発を行っています。電解硫酸は硫酸を電気分解したより強い酸化力を持つ物質で金属や樹脂を分解することができ、現在は半導体の製造など特定の分野で使用されています。本事業では自動車の軽量化・電装化に必要な樹脂めっきを実現するための電解硫酸生成システムの開発を行っていますが、CFRPリサイクルにおいても本技術を応用できると考えビーカーテストの実施に至りました。結果、強力な酸により樹脂のみ溶解、繊維状を維持し炭素繊維の分離ができることを実証しました。
今後に向けた取り組み
今後は自動車部品など用途毎のCFRPテストを拡充し、ダイヤモンド電極の利用によるCFRPリサイクル技術の確立を目指します。DIAMではダイヤモンド電極によるCFRPリサイクルのテストサンプルを募集しています。ご興味のある企業のご担当者様は以下にお問い合わせください。
DIAM株式会社 担当:小谷 メール:k-kotani@dia-m.co.jp TEL: 043-216-2030
導電性合成ダイヤモンド(ダイヤモンド電極)について
ダイヤモンドは高い硬度や屈折率、熱伝導性、化学的安定性など特異な性質を有します。ダイヤモンドにボロンをドープすることで導電性を付与し電極として利用することが可能です。電位窓が広く、通常電気分解しにくい物質の酸化や還元反応が優先できるため、従来方法では不可能であった物質の分解や合成を実現します。主な用途として、成分分解による各種溶液・廃液の水処理、オゾン水や電解硫酸の生成など新しい工法開発による環境負荷低減を実現します。その他、次世代パワー半導体材料や有機電解合成による医療への応用や創薬など、高感度な電気化学センサとしても注目が高まる素材です。
■広い電位窓
通常電気分解しにくい物質の酸化や還元反応が優先でき、従来方法では困難であった物質の分解・合成が可能です。水を直接電気分解することでオゾンを発生させることができ、廃液のBODやCODといった水質汚染の指数を低減することが可能です。
■物理的・化学的な安定性
高硬度・高耐食性物質であり、汚れが激しい環境や、強酸・強アルカリ・有機溶媒中であっても長期間安定して使用可能です。硫酸などの強酸においても電極として利用することができ、これまでレア金属などを用いていた電解処理用電極の寿命を飛躍的に伸ばすことが可能です。
■小さなバックグラウンド電流
シグナル/ノイズ比が大きいため電気化学分析 における高感度センサとして使用が可能です。量子センサと呼ばれる、超高感度の磁気センサや電界センサを作ることができます。この量子センサは常温・常圧・大気中を含めたさまざまな環境下で機能させることが可能です。
DIAMについて
DIAM は合成ダイヤモンドの成膜・製造の技術を提供します。ダイヤモンド電極は金属などの電極材料と異なり、合成条件のパラメーターコントロールにより、用途に合わせた成膜が可能です。10年にわたる成膜条件の研究により、耐久性(厚いダイヤモンド膜)・高い導電性や大面積での安定的な成膜ノウハウを確立しました。ニーズに合わせた特性の異なるダイヤモンド電極の受託成膜や量産が可能な企業は未だ世界でも数社しか存在しておらず、今後も高まる需要に対し生産体制を増強し量産を目指します。「ダイヤモンド電極とはどのようなものなのか」「一度実験がしてみたい」という要望に応え、標準品も販売しています。
DIAM株式会社
本社:千葉県千葉市花見川区三角町65-1