このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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イベント概要
・開催概要:県内在住の小学5・6年生が、宮崎最大の離島・島野浦島で2日間、そこで獲れる魚のことや、島民の生活、島を取り巻く問題の他、郷土料理「たたっこ」作り体験を通じ、宮崎の海を楽しみながら学ぶイベントです。
・日程:2023年8月2日(水)・3日(木)
・開催場所:島野浦島
・参加人数:小学5・6年生 20名
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島野浦島ってどんなところ?島野浦島について学ぶ
延岡市の阿蘇港からチャーター船で10分ほど行くと、2日間の拠点となる島野浦離島センターに到着しました。オブザーバーとして見守ってくださる宮崎大学農学部海洋生物環境学科准教授の村瀬敦宣先生からの挨拶で始まり、プロジェクトサポーターのさかな芸人ハットリさんが登場し、子供たちの緊張をほぐしてくださいました。
最初の授業では、東京での大学時代以外は島野浦島で暮らし、元漁業協同組合の職員で、島野浦のことなら何でも知っている結城豊廣さんに、2日間学んでいく島野浦島がどんな所なのかを教えていただきました。
島野浦島は県内最大の有人島ですが、その人口は2,600人をピークに減少し、今は693人です。
タイトルにあるように、かつては「イワシの舞う島」と呼ばれるほど、マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシなどが獲れましたが、イワシは環境の変化を敏感に感じる魚で、島野浦近海ではあまり獲れなくなっています。ただ、島野浦島は昔から「風待ち潮待ちの島」と呼ばれるほど穏やかな海で最高の漁場なのは今も変わらず、そこでタイやカンパチの養殖を現在も行っています。
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島野浦島の恵みをいただこう!
結城豊廣さんに島野浦の海の恵みについてお話しいただき、九州でナンバーワンと言われている日向灘の海水で作る塩で海の恵みたっぷりのおにぎりを自分たちで握りました。おにぎりの具材は、島野浦で獲れるタイで作った「鯛ほぐれ」。ふわふわとした弾力と口触り、絶妙なほぐれ感が魅力の一品です。マダイ一匹から6個分しか作れず、醤油と塩は地元で丁寧に作られた物を使用した、シンプルだけど濃厚な味わいです。子供たちにも大人気で、おにぎりの中と表面にまぶして贅沢に使っていました。その他にも島野浦の鰹節や、シンプルに塩むすびなどを一人3個ほど作って実食し、「おいしい!鯛ほぐれでおにぎり何個でも食べられる!このタイが島野浦で育っているんだ。すごい!」と言いながら食べていました。また、島野浦で獲れたカマスの干物や、島野浦の郷土料理「あげみ」もいただき、島野浦の海の恵みを存分に堪能しました。
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日向灘に生息する魚を知ろう!
本来タイ・カンパチの養殖場を見学するスケジュールでしたが、台風6号の影響で海が時化て船を出すことが出来ず、離島センターで村瀬先生による魚の授業が行われました。村瀬先生は、延岡市の土々呂にある宮崎大学の延岡フィールドで勤務されており、宮崎県の魚類の多様性に関する研究をしながら、宮崎の魚図鑑や、学習用カルタを制作しています。そのカルタを使って、日向灘に生息する魚を「暖かい海に住む魚」、「冷たい海に住む魚」、「中間の海に住む魚」で分類するゲームをしました。わからないことは、村瀬先生やさかな芸人ハットリさんに質問し、それぞれが予想した後、図鑑を使って正しい生息エリアを導き出しました。黒潮と親潮の栄養を含んだ海が混ざり、多様な魚が生息することを知ることができ、子供たちはそれぞれ文章や絵で考えをまとめ、学習ノートに記入していました。
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マリンクラフト作り
離島センターに移動し、シーグラスやサンゴ、貝殻など、海に漂着したものを使ってアート作品を作るマリンクラフトを行い、2日目のシュノーケリング時に撮影する写真を入れるフォトフレーム作りを行いました。
講師は、延岡の海を知り尽くしたパイオニアショップ・延岡マリンサービスの高橋真由美さんと、NPO法人ひむか感動体験ワールドの馬場和久さんです。シーグラスは、元々海岸に捨てられたガラス製の容器などのごみです。それが割れて、長い年月をかけシーグラスへと変化します。近年、世界中で飲み物などの容器がビンからペットボトルへ変わってきていたり、昔よりごみのポイ捨てが減り、シーグラスは段々減少しているそうです。子供たちも、きれいなシーグラスが元々はごみだったことを知り驚いていました。また、サンゴは温暖化等による海水温の上昇で白化して死んでしまうことを学び、環境の変化と海は関連があり、「ごみを捨てない、ごみを拾う、ごみを捨てる人を注意する」など、自分たちが日頃から気を付けることで、海の環境が良くなると感じたようでした。
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さかな芸人ハットリさんによる魚クイズ
続いては、魚を愛する水産系芸人で、食べた魚は516種類、釣った魚は384種類、日本さかな検定1級を持つさかな芸人ハットリさんによる授業です。島野浦島に渡る前、船を待つ約30分で大きめのオキゴンべを釣った話から、今まで釣った魚の話など、子供たちはその名前を当てたり、釣った魚は全ていただくがモットーのハットリさんに、「一番おいしかった・まずかった魚は?」や、「釣った中で一番大きい魚は?」と質問したり、その特徴を聞いたりするなどとても興味津々でした。
島野浦島にも色々な魚がいて、明日実際にシュノーケリング体験で見られることを子供たちはとても楽しみにしている様子でした。
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シュノーケリング体験
2日目も台風の影響はありましたが、安全なポイントに潜る場所を変え、海の中を見ることから始まりました。シュノーケリングは初めての参加者が多く、5人1組になり、それぞれインストラクターの方から海を安全に楽しむ方法を教えてもらいました。島野浦近海は透明度が高く、水質が良いことで知られています。この日も暑かったので、海に入ると「気持ち良い~!」という声が聞こえました。最初は緊張していた様子でしたが、海の中でもう一度シュノーケリングの方法を教えてもらい、それぞれが海の中を観察し始めると緊張もほどけ「きれいな青い魚がいる!何の魚ですか?」とインストラクターに質問しながら海の中を楽しんでいました。日本一と言われるオオスリバチサンゴの群生を見ることはできませんでしたが、細かい骨片を持つソフトコーラル(軟質サンゴ)を見ることができました。地元の透明できれいな海には、魚やサンゴが生息する豊かな環境があることを体感できたようでした。
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郷土料理「たたっこ」を作ろう
「たたっこ」は、島野浦島で古くから作られている郷土料理で、アジなどの魚を包丁で粘りが出るまでたたき、味噌とお好みで玉ねぎや生姜などとよく混ぜたものです。たたっこにはこの魚を使うという決まりはなく、おいしいのに「サイズが不揃い」「漁獲量が少ない」などの理由で、市場に出回らずに利用されない未利用魚を活用することが多いそうです。この日は島野浦で獲れたマダイ、ニベ、ヤリイカを使いました。また、台風の影響で野菜が手に入らず、みじん切りしたピーマンも入れました。子供たちは、順番に包丁を器用に使ってたたいていきました。すると粘りがでてきて一つにまとまっていきます。すり身状になったら完成です。このまま生で食べても、揚げてもたたっこはまた風味がかわってつくねのようになり、魚が苦手と言っていた子供も揚げたたたっこなら食べることができました。豊かな海の恵みを無駄なくいただく方法を先人たちが考え、それが今も続いていることを知り、自分たちもこの豊かな海を守り未来へ繋いでいきたいという思いを強くしたようでした。
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2日間のまとめ・発表会
2日間で学んだ島野浦島の過去と現在の変化について振り返りました。そして、もう一度「イワシの舞う島」に戻すためにできることは何かを絵で表現するために、ワークシートを使って考えを整理しました。2日間学んだ島野浦島の海の恵みを書き出し、一番心に残っている海の恵みを一つ選び、昔と今でどのように変化しているか、それはなぜか、その海の恵みを守るために何ができるかを考えてもらいました。
「水温が上がっているから、魚が減っている。水温を変えることはできないけれど、海にごみを捨てないようにすることはできる。知らない人に教えてあげる」や「温暖化にならないように、無駄な電気を使わない」「昔の自然を守るために行動する。友達と海を大切にする取り組みを広める」など学んだことを自分事として捉えられていました。それを踏まえ、学んだことを誰にでも理解してもらえるように、絵で表現しそれぞれ発表を行いました。子供たちが描いた絵は後日、宮崎サン・ソルトが発売している「満潮の塩」(1日目のおにぎりで使用)と、お風呂専用「海水浴の素」の商品パッケージになります。
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参加した子ども・保護者からの声
・海の生態を崩さないこと、一人ひとりがやれることは必ずあると思いました。
・たたっこ作りが楽しかった。島野浦島の郷土料理が知れたし、みんなで楽しく作れたから。生でも食べられるし、焼いても食べられるのが良い。自分で作った、たたっこが美味しかった。
・海の恵みを守るには、僕たちの力が必要だと思った。
・沢山の事を学び、貴重な体験もさせていただき、とても特別な夏休みの思い出ができ、親として感謝の気持ちでいっぱいです。
・専門的な先生からの話、シュノーケリングや郷土料理などの体験活動が、子供にとってとても充実したものであった。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人海と日本プロジェクトinみやざき
URL:https://miyazaki.uminohi.jp/
活動内容:日本財団「海と日本プロジェクト」の理念のもと、宮崎の実行委員会として宮崎の豊かな海を未来へ引き継ぐ活動を行っている。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。