○JR東日本では、架線設備※1の工事やメンテナンスにICTなどの先端技術を活用し、安全・安定輸送のさらなるレベルアップや将来の労働人口減少を見据えた業務のDXを推進しています。 ○架線設備の工事では、3Dレーザースキャナーや強度計算アプリを活用した測量や設計のDXを推進しています。 ○架線設備のメンテナンスでは、2021年10月より電気・軌道総合検測車(以下「East-i」)搭載のカメラおよびセンサーで取得した画像などのデータによる架線設備検査「架線設備モニタリング」の導入により、DXを推進しています。2023年度下期からは、取得した画像などのデータのAIによる画像スクリーニング※2を順次導入します。 |
※1 架線設備:トロリ線、ちょう架線、ハンガなどから構成され車両パンタグラフを介し電車へ電力を供給する設備
※2 AIによる画像スクリーニング:架線設備を画像から抽出する検知モデル、設備毎に応じた良否判定を行う判定モデルでスクリーニングを実施
1.架線設備の工事における取り組み
架線設備は、列車に電気を供給するトロリ線などの架線やそれらを支持する構造物などから構成されます。構造物には、架線自体の荷重や、架線を水平に保つための張力に耐え得る強度が必要です。従来、構造物の設計では、測量の結果から図面作成や強度計算などを個々に行っていたため多くの時間を要していました。現在は、3Dレーザースキャナーによって取得した点群データを基に、鉄道設備の3Dモデリング・寸法計測・レイアウト検討ができる「Railway-Eye※3」や、タブレット上で構造物を配置し、測量結果を入力すると、構造物の外観図の作成や強度計算を自動で完了する強度計算アプリ「JREDOCS(ジェイレドックス)※4」を導入し、設計業務のDXを推進しています。
※3 Railway-Eye:JR東日本と(株)富士テクニカルリサーチによる共同開発品
※4 JREDOCS:JR東日本と電気技術開発(株)による共同開発品
2.架線設備のメンテナンスにおける取り組み
2021年10月からEast-i搭載のカメラおよびセンサーで取得した画像などのデータにより架線設備の設備状態を確認する「架線設備モニタリング」を地方線区中心に在来線38線区、約5,500km(走行区間の約74%)で導入しています。導入した結果、夜間に電力係員が高所で行う目視検査に要する時間を削減するとともに、最大年4回の多頻度な検査を実現しました。今後、首都圏線区(約2,000km)への導入を目指しています。
「架線設備モニタリング」では、カメラで取得した画像データをオペレーターがスクリーニングを行っています。オペレーターによる画像スクリーニングについて、2023年度下期からAIによる画像スクリーニングを順次導入します。導入後は、オペレーターとAI※5を組み合わせた画像スクリーニングにより、生産性向上を実現します。
※5 AIは日本電気(株)のRAPID機械学習を活用
【参考1】
【参考2】
架線設備モニタリング導入エリアおよび拡大予定エリア図
導入済み区間:約5,500km
今後導入予定:約2,000km