■実証実験の背景
1.畜産業の人手不足
畜産業界は、少子高齢化の影響で、畜産業から退く方が増加する一方、新たに参入する方の確保が困難になっており、深刻な人手不足に直面しています。農林水産省の調査※1によると、基幹的農業従事者※2数は平成27年から令和4年にかけて50万人以上減少しました。
2.経験と知見を要する、属人的な牛の発情検知
牛の発情検知には、経験や知見に頼った目視による検知が主流です。ただし、夜間に発情することも多いため、人による目視では見逃すリスクがあることが課題となっています。一度発情を見逃すと、次の発情まで約3週間待つ必要があり、その間の飼育コストや飼料費が追加で必要となります。
3.高騰する輸入飼料と注目を集める放牧
世界情勢の変動は輸入飼料の価格を大幅に押し上げ、畜産農家の経営を圧迫しています。そこで、草地や野草をエサとして利用することで飼料購入費を削減できる放牧が、有力な選択肢の1つとして注目されています。
畜産業界の人手不足、属人的な目視作業への対策として、発情検知ソリューションは既に存在しています。しかし、牛舎での飼育牛に加えて放牧牛に対応したものは、あまり市場に出ていないのが現状です。
放牧における発情検知を自動化し畜産業界の課題を解決するため、uprは葛巻町畜産開発公社の協力を得て、2022年10月に飼育牛の放牧地における所在管理の検討を開始しました。その後、牛舎にいる飼育牛を対象に「DXタグ」の振動センサーによる発情検知の現地調査を経て、2023年8月より放牧牛を対象に実証実験を開始することとなりました。
■「DXタグ」を使用した発情検知システムについて
「DXタグ」は、物流現場で使用されている「スマートパレット」に搭載されているアクティブRFIDタグを小型軽量化し、さらに機能を追加したものです。「DXタグ」を牛の首輪に装着することで、牛舎での飼育牛だけでなく、放牧牛に対しても頭数管理、脱走牛の発見、発情・体調不良の検知を容易に行うことが可能となります。「DXタグ」は受信機から最大約300mの距離で通信可能であるため、複数の受信機を設置することで、広大な牧草地に放牧牛が点在する場合でもデータの取得が可能です。
当システムは、牛舎の場合は1頭あたり年間5,000円(税抜)、放牧牛の場合であれば1頭あたり年間10,000円(税抜)※3と、導入しやすい価格でご提供します。牛の飼育場所や施設の規模を問わない低価格のシステムであり、多くの畜産業者にとって利便性の高い選択肢となることが期待されます。
URL:https://www.upr-net.co.jp/iot/rfid/farm
今後は、葛巻畜産開発公社と共同で、AI等の技術も活用しながら発情・体調不良検知の解析ソフトを開発し、精度を高めていくことを目指します。さらに、牛の種別や飼育地域の違いに応じた検知アルゴリズムの開発も予定しています。
uprは当システムを通して、畜産業界が抱える課題を解決し、持続可能な畜産の実現へ貢献してまいります。
※1 農林水産省農業労働力に関する統計(https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html)
※2 普段仕事として主に自営農業に従事している者
※3 費用は概算。頭数や利用面積により変動
●一般社団法人葛巻町畜産開発公社について
会社名:一般社団法人 葛巻町畜産開発公社 くずまき高原牧場
所在地:〒028-5402 岩手県岩手郡葛巻町葛巻40-57-125
総面積:1,524ha(くずまき高原牧場・袖山高原牧場・上外川高原牧場・玉山牧場・安代牧場)
飼養頭数:合計1,988頭(令和5年3月末現在)
事業内容:乳牛雌哺育育成事業、搾乳部門、肥育事業、くずまき交流館プラトー、
コテージ『シュクランハウス』、ミルクハウスくずまき、レストハウス袖山高原、
チーズハウスくずまき、パンハウスくずまき、畜産バイオガスプラント、
体験交流施設『もく・木ドーム』、エコエネルギー住宅、葛巻町木質バイオマスシステム、
ヨーグルト専門店『シュクラン』 くずまき高原牧場盛岡店
■お問い合わせ先 ユーピーアール株式会社 コネクティッド事業本部 コネクティッド営業部 TEL:03-3593-1721 Mail:mail@upr-net.co.jp |