防護柵の下に敷いたCC
■防護柵の下から潜り込むイノシシ
野生鳥獣による農林水産被害額について2021年度は155億円(「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について」農林水産省)となっています。数年に渡って減少傾向にありますが、農林水産省は「鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている」(「鳥獣被害の現状と対策」令和5年4月農林水産省)としています。イノシシなどが農地へ侵入することを防ぐ対策として防護柵が作られることが多くなっていますが、防護柵を張り巡らせてもイノシシが柵の下から潜り込み農作物が食い荒らされた、光ケーブルなどの重要な地下埋設物周辺の地面をイノシシが掘起したなどの事例も多く見られます。
獣害対策の実証実験での損傷範囲は10㎝角程度
■柵の地際部や地下埋設物周辺にCCを敷設
イノシシの侵入を防ぐには防護柵が効果的ですが、柵の地際部や地下埋設物周辺の掘起しを防ぐには耐久性の高い材料で地面を覆う必要があります。今回、水をかけるだけで高耐久なコンクリートマットができる特殊セメント封入布CCで地面を覆うことで、このイノシシの侵入を防ぐ効果があることを実証実験で確認しました。この実験結果を踏まえて、今回CCを獣害対策向け製品として販売することにしました。
-
CC端部は鼻で持ち上げられないように溝を掘りアンカーピンで固定し、埋設しました。
-
実験の結果、CC(厚さ7㎜)は、防護柵・フェンス下のイノシシによる掘起し防御や、重要埋設物の掘起しに対する保護効果があることを確認しました。
アンカーピンで固定したCC
CCを掘り起こそうとするイノシシ
■コンクリートキャンバス概要
CCは、英国で開発された「ジオシンセティックセメント複合マット(GCCM:Geosynthetic Cementitious Composite Mats)」と呼ばれる複合材料です。特殊配合のドライコンクリートを立体織物(表面:ポリエステル織布、裏面:塩ビフィルム)内に内包した構造で、敷設後に散水、または水中に浸けることでドライコンクリートが硬化し、薄く、高耐久で耐火性の高いコンクリート層を構築することができます。国土交通省の新技術情報提供システムNETISに登録されており、これまでは法面保護工、防草防竹工、水路工、水路補修工などで多くの導入実績をもつ製品です。
■獣害対策向けコンクリートキャンバスの仕様
品番 |
厚さ(mm) |
長さ(m) バッチロール |
幅(m) |
未硬化時重量(kg/㎡) |
CCT2 |
7.0(-0.0/+2.0) |
4.3(-0.0/+0.5) |
1.1(-0.03/+0.03) |
10.5以上 |
圧縮強度 |
曲げ強度 |
粗度係数 |
すり減り抵抗 |
80MPa以上 |
4.0MPa以上 |
0.011 |
0.15mm/1000cycles |
※英国規格の耐火、耐凍害など各種性能試験に合格。※圧縮強度は材齢28日、曲げ強度は材齢1日を示す。
※上値は保証値ではありません。
■太陽工業株式会社について
太陽工業は、社会の安心・安全を支え、人々の豊かな生活の実現に貢献することを目指す「膜構造のリーディングカンパニー」です。軽くて丈夫な素材の特性を活かし、巨大ドームの屋根に象徴される各種建築事業をはじめ、土木や物流、さらには環境分野などにも製品を展開しています。研究開発により膜の無限の可能性を引き出し、イベントや施設運営のグループ会社との連携を強化することで、これまで以上にお客さまに感動と快適な環境をお届けします。