この度、「T-支保工クイックセッター」が、令和5年度 日本建設機械施工大賞優秀賞を受賞しました。
日本建設機械施工大賞(旧『会長賞』)は、建設機械及び建設施工に関する技術等に関して、調査・研究、技術開発、実用化等により、その向上・普及に顕著に寄与したと認められる業績を表彰し、国土の利用、開発・保全及び経済・産業の発展に寄与することを目的として開設されました。
■「T-支保工クイックセッター」概要
「T-支保工クイックセッター」は、切羽直下での人力作業が不要となり、切羽での土砂や岩の剥がれ落ち(以下、肌落ち)による災害を防止することができるため、支保工建て込み作業の効率化と安全性向上を図ることが可能です。
アクティオでは、ワンタッチ式継手ボルトの開発以外の設計・製作を担当いたしました。
従来の鋼製支保工建て込み作業は、オペレータによる支保工把持装置(以下、エレクター)操作と、作業員による人力での位置調整を組み合わせて実施していました。【写真2参照】
その中でも、鋼製支保工の天端締結や位置合わせ作業は、切羽直下での作業となるため、作業員が肌落ち災害※3に巻き込まれる危険性が高くなる状況となっていました。
そこで、切羽に立ち入ることなく、遠隔からエレクター操作のみで施工できる工法「T-支保工クイックセッター」を開発、効率的で安全な鋼製支保工建て込み作業を実現しました。【図1 参照】
アクティオは今後も「レンサルティング」のノウハウを活かし、建設業界のさまざまな課題を解決する製品やサービスを提供していきます。
※1切羽(きりは):トンネル掘削の最先端箇所
※2支保工(しほこう):トンネルなどの掘削の際、岩盤が崩れないように支える仮設構造物のこと
※3肌落ち災害:一般社団法人日本トンネル専門工事業協会アンケート(平成24年3月公表)をもとに、労働安全衛生総合研究所が平成12年から20年の44件の肌落ち災害について分析した結果、約4割が支保工建込み作業時に発生と報告されている。
■「T-支保工クイックセッター」詳細
■「T-支保工クイックセッター」の特徴および実証試験結果
【特徴】
(1)天端継手に新開発のワンタッチ式継手ボルトを使用【写真3 参照】
バネを組み込んだ爪構造のワンタッチ式継手ボルトを新たに開発し、継手の孔に差し込んだ時点で爪が開いて連結できる継手方式を採用しました。本ボルトを予め片方の鋼製支保工天端部に設置しておけば、もう片方の支保工継手の孔に差し込むだけで支保工の連結が完了します。
(2)鋼製支保工の建て込み位置をラインレーザーで明示【写真4 参照】
従来方式では建て込み済の鋼製支保工と次に建て込み予定の鋼製支保工をつなぎ材で連結することでトンネル縦断方向での建て込み位置を設定していましたが、本工法ではトンネル横断方向にラインレーザーを照射することで建て込み位置を見える化し、エレクター操作だけで鋼製支保工の縦断方向位置を合わせることが可能となります。
(3)支保工締結・レーザー照射状況をモニタリングカメラにより確認【写真5-1 参照】、【写真5-2 参照】
支保工天端のワンタッチ式継手ボルト締結やラインレーザー照射の状況を確認可能なカメラをラインレーザーと隣接して作業用バスケットに設置することにより、切羽から10m程度離れたエレクター操作位置からは見えにくい施工状況を明確に確認することができます。
(4)専用機不要で汎用性の高い建て込み工法
ワンタッチ式継手ボルトとラインレーザー及びモニタリングカメラのみを用いたシンプルな工法で、現場導入されている既存エレクター搭載機器の種別に関わらず後付けすることができる、専用機不要で汎用性の高い建て込み工法です。
【実証試験結果】
トンネル工事現場での実証において、複数作業員間での作業内容の確認作業などが不要となり、オペレータ1名で作業できることから、従来方式と比較して施工時間を約30%短縮できます。また、従来は5名で行っていた支保工建て込み作業をオペレータ1名で実施でき、切羽直下に作業員が立ち入ることなく、安全に作業できることが実証試験の結果から確認できました。
■日本建設機械施工大賞
■本件に関するお問い合わせ先
株式会社アクティオ エンジニアリング事業部 土木部
TEL:03-6666-2476