登壇したC7「気候・環境正義」ワーキンググループ・コーディネーターを務める特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター事務局次長の遠藤里紗氏は、G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケに「最も脆弱な人々」と初めて記載されたことを歓迎するとした上で、「人間活動によって温暖化が引き起こされているが、環境変動の影響を不平等に受けているのは、温暖化要因である温室効果ガスを排出するのが少ない地域に暮らす子どもや障害のある人、女性、先住民族など社会的に周辺化され、差別を受ける人が、適応に必要な資源不足により悪影響をつけやすい。温室効果ガスを排出するG7諸国こそこの問題に取り組む必要がある」と指摘しました。遠藤氏は、事例として、災害の発生などを早期に発出することで、より脆弱な層が被害を抑止できるとして、国連事務総長による「すべての人が早期警戒システムに今後5年間でアクセスできるようにする」決意を紹介しました。
また、二酸化炭素のみでなく、オゾンやメタンなど他の温室効果ガスも含めて、2050年までにネットゼロにすると記されたことも評価しました。
さらに、コミュニケで「ジェンダー」はパラグラフに入ったことを紹介し、女性や女の子が不均衡な影響を受けることを挙げ、脆弱層であるだけではなく、変化を牽引するエージェントであることをしっかりと記載されたことを歓迎するとしました。
環境政策における包摂性について、遠藤氏は「気候変動とジェンダーの問題を話すと『女性を守れということですか』聞かれるが、エネルギーや気候変動対策の中にジェンダー平等への配慮や、女性が支援されるだけではなく政策提言の当事者として参画する仕組みが必要。公平な女性の参画が守られること、適応支援だけではなく意味のある参加を支援することが重要」と指摘しました。
C7「しなやかで開かれた社会」ワーキンググループ・コーディネーターを務めるグリーンピース・ジャパンの政策渉外担当シニアオフィサーを務める小池宏隆氏は、近年市民社会が活動するスペースが世界的に縮小していることに触れ、「市民社会スペースを中心にデジタル民主主義の課題、包摂性、反汚職・腐敗に関する問題やLGBTQ+の課題を取り上げてきた。市民社会スペースについてはG7サミットでこれまで取り扱われてこなかったが、G7とG7の決定に影響できる多様なステークホルダーが議論に参加するためにも必要であり、参画に必要な知識などリソースの提供は重要である」と指摘しました。参画については会議参加だけではなくデモ活動やオンライン情報発信も必要であるとして、デジタルスペースにおける人権尊重の重要性とそのための必要な法規制の検討の重要性が指摘されました。「特にデジタルについては規制をかけ、人権に基づくアプローチやデジタルスペースにおける子どもや若者の保護が重要です。」と小池氏は指摘しています。
また、今回のG7広島サミットでのIMCへのアクセス等の市民社会スペースについては、発給されるアクセスパスの数や掲示板が途中で撤去されてしまったことに触れ、この規模の国際会議として、国際的スタンダードには遠い、と指摘しました。
質疑応答では、「市民社会の縮小について日本でどう実感できるのか」という質問に対し、小池氏は「特に表現の自由が問題となっている。今回のG7サミットの野外アクションは極めて制限されたものとなったのも一例。実感が難しいが例えば警察の動員数の増加や、オンライン上でも特定の個人への攻撃も起こっている」と指摘、市民が自由に意見を表明することを制約される、あるいは表明を躊躇する状況への認識の重要性を指摘しました。また、司会をつとめた C7共同議長である特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 事務局長の木内真理子氏は、海外の事例も紹介し、「言うことが処罰される国や地域もある」と指摘しました。
また、記者会見に参加した広島市内の高校生からの指摘にこたえ、「スェーデンでは環境問題活動家のグレタ・トゥンベリさんが始めた毎週金曜日に気候変動対策を求めるストライキが行われている。ストライキ参加など自分がどう考え、行動するか、考えることが重要。また一人でできることだけではなく、集団でできることは多い。いかに多くの人と連携して活動を生み出すかが大切」とエールを送りました。また、遠藤氏も「いろいろなことをまず知ることが大切。自分の就職や生活で学んだことがどう生かせるか、ぜひ考えてほしい」と話しました。
参照
G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ https://www.env.go.jp/content/000039433.pdf
【C7について】
G7には、「エンゲージメントグループ」と呼ばれる、政府とは独立したステークホルダーにより形成される各グループが存在し、G7で議論される関心分野について、G7の成果文書に影響を与えるべく政策対話や提言を行います。Civil Society 7(通称C7)はこのエンゲージメントグループのひとつで、市民社会により組織されます。毎年、議長国の市民社会が中心となって、G7国のみならず、G20諸国や開発途上国等の市民社会と協働しながら提言をまとめ、G7に向けて発信します。
詳細はホームページ(英語)をご覧ください:https://civil7.org/
【G7市民社会コアリション2023について】
G7市民社会コアリション2023は、2023年に日本の広島県で開催されるG7サミット首脳会議および関連閣僚会議に、市民社会の声が反映され、2030アジェンダが掲げる「誰ひとり取り残さない社会」の実現に貢献できるよう、議長国である日本政府を含むG7各国政府に働きかけるためのプラットフォームです。SDGs市民社会ネットワークは、C7サミットを支える日本組織である、G7市民社会コアリション2023の幹事団体及び共同事務局としても活動を行っています。
G7市民社会コアリション2023に関しての詳細については以下のホームページやSNSへのアクセスが便利です。併せてご確認ください。
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G7市民社会コアリション2023ホームページ:https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/
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