児童婚:世界で6億4,000万人~45%が南アジア、20%がサハラ以南【プレスリリース】

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8歳の時、牛40頭とヤギ10頭と引き換えに、両親に結婚をさせられそうになり、家から逃げ出した14歳のモニカさん。アムダット州の女子小学校で、避難生活をしながら勉強を続けられている。(ウガンダ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0792788_Ti8歳の時、牛40頭とヤギ10頭と引き換えに、両親に結婚をさせられそうになり、家から逃げ出した14歳のモニカさん。アムダット州の女子小学校で、避難生活をしながら勉強を続けられている。(ウガンダ、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0792788_Ti

【2023年5月3日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した新しい報告書によると、児童婚*は過去10年間に着実に減少しているにもかかわらず、紛争や気候ショック、今も続く新型コロナウイルス感染症の影響など複数の危機により、これまで苦難の中でも成し遂げた成果が無となる恐れがあります。(*児童婚:男女問わず、18歳未満での結婚を指す)

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ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「世界は、危機に次ぐ危機に襲われており、弱い立場に置かれている子どもたち、とりわけ、花嫁ではなく生徒であるべき女の子たちの希望や夢が押しつぶされそうになっています。公衆衛生や経済の危機、武力紛争の激化、気候変動の猛威によって、子どもを持つ家族は、児童婚に誤った救いを求めざるを得なくなっています。子どもたちの教育を受ける権利、そして彼らの人生に力が与えられることが保障されるよう、私たちは全力を尽くさなければなりません」と述べています。

 

今回の分析で用いた最新の世界的な推計によると、現在生存している推定6億4,000万人の女の子と女性が、18歳未満で結婚しました。これは1年あたり1,200万人の女の子が18歳未満で結婚していることになります。18歳未満で結婚した女性の割合は、5年前に発表された前回の推定値と比較すると、21%から19%に減少しています。しかし、このような進展にもかかわらず、2030年までに児童婚をなくすというSDGsのターゲットを達成するためには、世界の児童婚の減少が今の20倍以上の速度で進む必要があります。

 

学費のために15歳の時に結婚し、子ども2人を出産した20歳のエスターさん。ユニセフなどの支援により学校に戻ることができ、教員を目指している。(コンゴ民主共和国、2022年12月16日撮影) © UNICEF_UN0774103_Ngombua学費のために15歳の時に結婚し、子ども2人を出産した20歳のエスターさん。ユニセフなどの支援により学校に戻ることができ、教員を目指している。(コンゴ民主共和国、2022年12月16日撮影) © UNICEF_UN0774103_Ngombua

サハラ以南のアフリカは、世界で2番目に児童婚が多い地域で、児童婚をした世界の女性・女の子の20%が暮らしています。児童婚減少のペースが現況のままでは、この慣行を撤廃するのに200年以上かかると言われています。この地域では人口が急増し、危機的状況が続いているため、世界の他の地域では減少が予想されているにもかかわらず、この地域の女の子の児童婚は増加すると考えられています。

 

ラテンアメリカとカリブ海諸国地域も児童婚根絶に向けての進捗に後れをとっており、2030年までに児童婚の地域別割合が2番目に高くなる見込みです。中東・北アフリカと東欧・中央アジアも、児童婚が着実に減少してきた期間を経て、今は停滞しています。

 

南アジアは一方で、世界の児童婚減少の前進を引き続き牽引しており、約55年後に児童婚を根絶するペースで減少が続いていると報告書は明らかにしています。しかし、この地域には依然として、児童婚をした世界の女の子・女性の約半数(45%)が暮らしています。インドはここ数十年で大きな進展を遂げましたが、それでも世界の児童婚の数の3分の1を占めています。

 

子どもの頃に結婚した女の子は、結婚直後から、そして生涯にわたって、児童婚の影響を受けることになります。学校に通い続けられる可能性が低く、早期妊娠のリスクが高まり、ひいては子どもや母体の健康障害や死亡のリスクも高まります。児童婚はまた、女の子を家族や友人から孤立させ、地域のコミュニティから排除し、子どもの精神的な健康やウェルビーイングに大きな打撃を与える可能性があります。

 

結婚から逃れ、子ども救済センターで避難生活を送る女の子。貧困や児童婚などで逃れてきた子どもたちに食事や寝る場所を提供しており、子どもたちは近くの学校に通うことができている。(ケニア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0722324_Kidero結婚から逃れ、子ども救済センターで避難生活を送る女の子。貧困や児童婚などで逃れてきた子どもたちに食事や寝る場所を提供しており、子どもたちは近くの学校に通うことができている。(ケニア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0722324_Kidero

世界中で、紛争、気候関連の災害、そして新型コロナウイルス感染症の継続的な影響(特に貧困の増加、所得の大幅減、中途退学)が、児童婚を推進する一因となっています。同時に、女の子を児童婚から守る保健ケア、教育、社会サービス、コミュニティ支援を利用することも難しくしています。

 

その結果、脆弱な環境に暮らす女の子が18歳未満で結婚する確率は、世界の平均的な女の子の2倍、と報告書は分析しています。紛争関連死が10倍増加するごとに、児童婚の数は7%増加するのです。同時に、気候変動がもたらす極端な気象現象は女の子が直面する児童婚のリスクを高めており、降雨量が10%変動するごとに、児童婚が約1%増加することにつながっています。

 

過去10年間に児童婚根絶に向けて得られた貴重な進捗も、新型コロナウイルス感染症の引き続く影響によって脅かされ、あるいは覆されつつあると、報告書は警鐘を鳴らしています。このパンデミックによって、回避できた児童婚の数が、2020年以降すでに4分の1減ったと推計されています。

 

「私たちは、児童婚の根絶に向けて成果を出せることを証明しました。児童婚をなくすためには、脆弱な立場に置かれている女の子と家族への確固たる支援が必要です。私たちは、女の子を学校に通わせ、彼女たちが経済的機会を得られるよう注力しなければなりません」とラッセル事務局長は付け加えました。

 

■ 注記

世界および地域における児童婚の推定値は、100カ国以上からの標本データで構成されるユニセフのグローバルデータベースの中の国別推定値に基づいて算出されています。児童婚に関する国別データは、主にユニセフが支援する複数指標クラスター調査(MICS)や、米国国際開発庁(USAID)が支援する人口健康調査(DHS)などの世帯調査から抽出されます。人口統計データは、国連経済社会局人口部より引用しています。最新の推計は2022年までのものです。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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