【ポイント】
1.東証プライム上場企業であっても、コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」と表記)への
対応では、「サステナビリティ」や「多様性確保」などの項目において、その対応は道半ばの状態にある
2.取締役会の監督機能として重視されているポイントは、「社外取締役の十分な活躍」及び「取締役会での
活発な議論」の2点。
3.社外取締役は有益な助言を得られる存在であるが、探すのに苦労している。
4.実効性評価は取締役会の改善に役立つと認識する一方で、マンネリ化も感じている。
5.取締役会事務局のスタッフ育成について、その必要性は感じているものの、スキルの整理や育成の仕組み
構築は進んでいない。
■ポイント1■
東証プライム上場企業であっても、CGコードへの対応では、「サステナビリティ」や「多様性確保」などの
項目において、その対応は道半ばの状態にある。
CGコードの中から、図表1の14項目について、コンプライの状況及びコンプライしている場合の出来栄え
(現状どの程度できているか)を確認したところ、以下のような結果となった。
(1) コンプライ率が9割を下回るのは5項目。【図表1・ピンク枠】
(2) コンプライしている企業における各項目の出来栄えについては、以下の5項目で「遅れている」「だいぶ
遅れている」の合計が2割を超えている。【図表1・赤枠】
①サステナビリティを巡る課題への対応
②女性の活躍促進を含む社内の多様性確保
③CEO等の後継者計画及びその監督
④CEO解任の透明性ある手続き
⑤筆頭独立社外取締役の設置
※「サステナビリティを巡る課題への対応」や「女性の活躍促進を含む社内の多様性確保」は、
2021年のCGコード改訂で導入されたもので、いわゆる非財務面での対応強化が求められるとともに、
取締役会による監督の質も問われる部分となってくる。
■ポイント2■
取締役会の監督機能として重視されているポイントは、「社外取締役の十分な活躍」及び「取締役会での
活発な議論」の2点。
(1)「2~3年前と比べて、取締役会の監督機能が高まった」とする企業は約8割。【図表2】
(2) 取締役会の監督機能が発揮されていると思われる点について、「社外取締役が十分に活躍していること」
及び「取締役会での議論が活発に行われていること」が上位2項目で、いずれも7割を超えており、
監督機能として重視されている状況がうかがえる。【図表3】
■ポイント3■
社外取締役は有益な助言を得られる存在であるが、探すのに苦労している。
(1) 「社外取締役から、取締役会の機能強化に資する助言を得られている」と認識している企業は、
前回に引き続き9割を超え、社外取締役の存在は圧倒的に支持されている。【図表4】
(2) その一方で、社外取締役を探すのに苦労している企業は半数を超え、前回と比較すると大きく
増えている。【図表5】
※2021年のCGコード改訂により、独立社外取締役比率を3分の1以上とするように規定したことから、
それにあわせて人数を増やした企業において、「苦労している」という意識が高まった可能性が考えられる。
■ポイント4■
実効性評価は取締役会の改善に役立つと認識する一方で、マンネリ化も感じている。
(1) 「実効性評価は取締役会の改善に役立つ」とする企業が前回に引き続き8割を超え、特に「大いにそう
思う」という積極的な回答が増えており、実効性評価を有効に活用しようとする姿勢がうかがえる。
【図表6】
(2) その一方で、実効性評価に関して何らかの課題をもっている企業は約8割(課題がない企業が約2割)
であり、中でも「マンネリ化」は前回に引き続き5割を超えており、実効性評価の実施方法等において、
まだ改善の余地があると推察される。【図表7】
■ポイント5■
取締役会事務局のスタッフ育成について、その必要性は感じているものの、スキルの整理や育成の仕組み
構築は進んでいない。
(1) 取締役会事務局スタッフ育成の必要性を感じている企業は7割を超えており、増加傾向にある。
スタッフ育成は、各社の共通課題となりつつある。 【図表8】
(2) その一方で、育成に必要となる「スキルの整理」や「育成の仕組み構築」については、
できている企業が1割前後となっており、必要性と現実との間にギャップが見られる。 【図表9・10】
【参考:調査データ】
【調査概要】
■調査時期 2023年1月
■調査対象 東証プライム上場企業
■調査方法 郵送配布、WEB回答
■回答数 回収数:151社、配布数:1,833社 (回収率 8.2%)
〔参考〕前回調査 回収数:300社、配布数:2,610社 (回収率 11.5%)
*2020年9月実施 ※東証1部・2部上場企業を対象