シリア:12年続く紛争と大地震~悪化する子どもの栄養危機【プレスリリース】

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【2023年3月15日 ダマスカス(シリア)/アンマン(ヨルダン)発】

12年続く紛争と先月発生した大地震により、シリアの何百万人もの子どもが栄養不良の危険にさらされていると、ユニセフ(国連児童基金)は本日警鐘を鳴らしました。

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アレッポで、ユニセフが支援する移動式保健クリニックで、上腕計測メジャーを使った栄養検査を受ける子ども。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781582_Al-Asadiアレッポで、ユニセフが支援する移動式保健クリニックで、上腕計測メジャーを使った栄養検査を受ける子ども。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781582_Al-Asadi

シリア紛争は3月15日に13年目に入りますが、同国のいくつかの地域、特に北西部では敵対行為が延々と続いており、子どもの権利に対する深刻な侵害が絶えることはありません。国連のデータによると、紛争が始まって以来、シリアの1万3,000人近い子どもが死傷しています。子どもたちは攻撃の恐怖にさらされ続けており、避難生活の中で、栄養不良の深刻度が高まっています。

推計では、シリアでは60万9,900人以上の5歳未満児が発育阻害(スタンティング)の状態に陥っています。発育阻害は慢性的な栄養不良から生じ、子どもたちに不可逆的な身体的・精神的ダメージを与えます。その結果、学習能力や、おとなに成長した後の生産性と収入にも影響を及ぼします。

子どもの急性栄養不良も増えつつあります。重度の急性栄養不良に苦しむ生後6カ月から59カ月までの子どもの数は、2021年から2022年にかけて48%増加しました。急性栄養不良に陥った子どもの免疫力は低下し、栄養状態の良い子どもに比べて死亡する可能性が11倍高くなります。
 

被災した人のために新しく建てられた国内避難民キャンプに滞在する子どもたち。(シリア、2023年3月1日撮影) © UNICEF_UN0795115_English被災した人のために新しく建てられた国内避難民キャンプに滞在する子どもたち。(シリア、2023年3月1日撮影) © UNICEF_UN0795115_English

空前の経済危機の中、物価高騰と不十分な収入により、多くの世帯が生活苦にあえいでいます。シリアでは90%近くの人が貧困の中で暮らしており、子どもたちの食事や栄養状態に悪影響を及ぼしています。

2月6日の大地震の発生以前に、シリア全土で375万人以上の子どもが栄養支援を必要とし、700万人近くの子どもが緊急の人道支援を必要としていました。

ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所のアデル・ホドル代表は、「シリアの子どもたちは、これ以上待つことができません。長年の紛争と2度の大地震の後、何百万人もの子どもが明日をも知れない状態で暮らしています。子どもたちの未来は私たちの最優先事項でもあるのだと、彼らにあらためて示すことは私たち共通の責任なのです」と述べています。

地震によって家屋が倒壊し、余震が続く中、多くの子どもたちが家に帰ることを恐れています。 現在、多くの家族が避難し、過密状態の仮設避難所やキャンプで生活しています。
 

難民キャンプで、ユニセフの衛生用品を受け取り、テントまで運ぶ子どもたち。(シリア、2023年3月1日撮影) © UNICEF_UN0795154_English難民キャンプで、ユニセフの衛生用品を受け取り、テントまで運ぶ子どもたち。(シリア、2023年3月1日撮影) © UNICEF_UN0795154_English

地震が起きる前、シリアでは681万人の子どもが基本的な保健サービスを必要としていました。プライマリ・ヘルスケア・システムの半分が機能していなかったため、多くの家族は医療を先送りするか、あるいは旅費を払う余裕があれば遠方の施設に行くかを余儀なくされていました。シリアに残っている医師はわずか2万人だといわれています。地震以前から過度な負担がかかっていた公衆衛生サービスや保健ケアの提供に、最近のコレラの流行や地震の影響が、さらなる追い打ちをかけています。必要不可欠な保健・栄養サービスへのアクセスが、今年さらに悪化することが予想されます。

ホドル代表は、「シリア全土のどこででも、子どもたちのニーズに応え、彼らが切実に必要としている重要なサービスを提供する体制を支えなければなりません」と述べています。
 

ユニセフの移動式保健クリニックで、栄養状態を診てもらうために子どもを連れてきた父親。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781583_Al-Asadiユニセフの移動式保健クリニックで、栄養状態を診てもらうために子どもを連れてきた父親。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781583_Al-Asadi

シリア全土で、栄養不良の早期発見に資金投入する一方で、ユニセフはパートナーと協力して、重度の急性栄養不良に苦しむ子どもたちの命を守る治療ケアを提供し、その規模を拡大しています。また、微量栄養素の補給、成長モニタリングとカウンセリング、母乳育児と年齢に応じた補完食に関するサポートなど、予防的な栄養サービスも提供しています。ユニセフはまた、より多くの子どもたちの命を守るため、必要不可欠な保健サービスと保健用品、きれいな水へのアクセス、衛生的な環境のための支援も提供しています。

地震発生前から、シリアにおけるユニセフの「子どもたちのための人道支援計画2023」に必要な資金が圧倒的に不足しており、3億2,850万米ドルの支援要請に対して、寄せられた金額はほんの一部でした。地震による負担も加わり、状況はさらに緊迫しています。シリアで地震の被害を受けている、子ども260万人を含む540万人に、命を守る支援を直ちに行うためには、1億7,270万米ドルが必要です。

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■ 注記

  • 本プレスリリースで引用したデータはすべて、2023年2月の地震発生以前のものです。
  • 2022年、中程度の急性栄養不良の子どもの数は55%増加しました。
  • 母親の栄養不良の割合は、シリア北西部とダマスカスの一部で11%、シリア北東部で25%となっています。
  • 地震以前、シリア全土の水処理施設の3分の2近く、揚水施設の半数、給水塔の3分の1が、紛争により損傷を受けていました。
  • シリアの人口の半数近くが、水需要を満たす、または補うために、多くの場合安全ではない代替水源に頼っています。
  • 排出される下水の少なくとも70%は未処理です。
  • 2022年9月にシリアでコレラの発生が宣言されて以来、8万4,600人以上のコレラ疑い患者が報告されています。免疫力が低下している栄養不良の子どもは、コレラに感染しやすいのです。
  • 2023年の今後6カ月以内に、新たに3万9,000人以上のコレラ疑い患者が出ると予想され、少なくとも300万人が危険にさらされるため、命を守るための予防と介入が必要です。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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