ハイチ:首都で医療活動への妨害相次ぐ――MSFの活動継続も困難に

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ハイチの首都ポルトープランスでは、今年に入り、国境なき医師団(MSF)の医療活動を妨害する事件が相次いで発生し、SNS上ではMSFとギャング集団との関係を示唆する脅迫まがいのデマが出回っている。さらに医療施設周辺では武力衝突が絶えず起きており、MSFのスタッフと患者の安全は脅かされ、医療活動自体の継続が危ぶまれている。MSFはすべての当事者に対し、医療活動を尊重するよう訴えている。

ポルトープランス、タバル病院。銃で撃たれけがをした患者の治療に当たるスタッフ=2022年11月22日 © Alexandre Marcou/MSFポルトープランス、タバル病院。銃で撃たれけがをした患者の治療に当たるスタッフ=2022年11月22日 © Alexandre Marcou/MSF

 

  • 度重なる妨害行為

2月23日夜、タバル地区にあるMSF病院にフードをかぶった武装集団が押し入ろうとした。MSFのスタッフに対して武器を向け、ドアを叩き、壁を乗り越えて病院に入ろうと試みた後、敷地内から立ち去った。1月26日にはポルトープランス西部カルフール地区で、MSFが支援する公立病院に武装した男らが侵入し、救急処置室から患者を外に引きずり出したうえ殺害した。

警察による妨害行為も起きている。2月22日未明、テュルゴー地区にあるMSF救命救急センターの出入り口が警察によって封鎖され、救急車の捜索が行われた。さらに警察は患者の身元確認を理由に、MSF施設内の武器持ち込み禁止ルールを無視して武装したまま施設に入った。それに先立つ2月7日にも、MSFのロゴを付けた救急車が停止を命じられ、捜索を受けた。身元確認のため乗員は銃を突きつけられ、救急車は45分以上も停止させられた。
 

  • 病院近くで激しい武力衝突

 

タバル病院の救急室は銃による負傷者で満員になっている=2022年12月2日 © Alexandre Marcou/MSFタバル病院の救急室は銃による負傷者で満員になっている=2022年12月2日 © Alexandre Marcou/MSF

また、貧困地区シテ・ソレイユにあるMSF病院のすぐ近くでは、年初から武装集団による激しい衝突が2回発生しており、MSFは診療の一時停止とスタッフの一時退避を余儀なくされている。これに加え、ギャング間の武力争いの最前線が病院に近づいていることから、MSFは、これ以上の安全確保と医療提供の継続は不可能になるのではないかと危惧している。

過去にもハイチでは、MSFは2022年4月にドルイヤールの病院を一時閉鎖、2021年6月にマルティッサンの救命救急センターを永久閉鎖、2023年1月にカルフールのラウル・ピエール・ルイ病院への支援を安全上の理由から停止を余儀なくされた。
 

  • 医療活動の尊重を

MSFのハイチ活動責任者、マハマン・バシャール・イロは「こうした事件の頻発により活動の継続は難しくなるばかりです。MSFはハイチの首都で医療を提供する最後の国際機関の一つです。患者や介護人、病院や救急車を含む医療活動を全ての当事者が尊重しなくてはなりません」と訴える。

多くの医療施設が機能しなくなる中、ハイチの医療体制全体は崩壊寸前となっている。MSFは30年前からハイチで活動、全ての患者を公平に治療してきた。今後も、長期にわたり国を分断している暴力の犠牲者であるハイチの人びとのために尽力していくことを改めて表明するが、そのためには医療活動への尊重が不可欠だ。
 

 

2022年、MSFは保健省と連携して、4600件以上の外科手術、3万4200件の緊急診療、2600件の銃創治療、370件のやけど治療、1万7800件の移動診療、2300件の性暴力被害の治療、700件の分娩介助を行った。2022年9月末にコレラの症例が発生して以来、MSFの治療した患者は1万9000人以上に上る。

 

 

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