【岡山大学】二孔チャネルはオキシトシン放出を促すことにより社会行動を制御していることを解明

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2023(令和5)年 2月 27日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 

<発表のポイント>

  • イオンチャネルの一種である二孔チャネルは、オキシトシン放出を促すことにより、マウスの社会行動を制御していることを明らかにした。
  • 二孔チャネルが細胞内のCa2+濃度を上昇させることにより、オキシトシンの開口分泌、特にプライミング(顆粒小胞が細胞膜へ近づく)を誘導することを明らかにした。
  • 二孔チャネルの機能不全が社会性障害を引き起こしている可能性があり、今後、二孔チャネルをターゲットとすることにより、社会性障害の新規治療法の開発が期待できる。

◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)の大学院自然科学研究科博士前期課程大学院生(当時)の川上奈津子、同学術研究院自然科学学域(牛窓臨海)の坂本浩隆准教授(神経内分泌学)と、英国オックスフォード大学、仏国パリ=サクレー大学等の国際研究グループは、イオンチャネルの一種である二孔チャネルが、オキシトシン放出を促すことによりマウスの社会行動を制御していることを明らかにしました。

 二孔チャネルは動物や植物の細胞の細胞内小器官の膜系に広く発現しており、電位開口型イオンチャネルスーパーファミリーの進化上重要な膜タンパク質として知られています。二孔チャネル遺伝子欠損(KO)マウスでは、オキシトシンの放出活性の著しい低下と、母性行動の減弱が観察されていましたが、その原因は不明でした。本研究では、二孔チャネルがオキシトシンニューロンにおいて細胞内のCa2+濃度を調節することにより、オキシトシンの開口分泌、特にプライミング(顆粒小胞が細胞膜へ近づく)を誘導しているという分子メカニズムを明らかにしました。

 二孔チャネルの機能不全が社会性障害を引き起こしている可能性があり、今後、二孔チャネルをターゲットとすることにより、社会性障害の新規治療法の開発も期待できます。

 この研究成果は、2023年2月7日付で米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences」電子版に掲載されました。
 

図1. 二孔チャネルが細胞内のCa2+濃度を上昇させることにより、オキシトシンの開口分泌、特にプライミング(顆粒小胞が細胞膜へ近づく)を誘導し、細胞外への放出を促す図1. 二孔チャネルが細胞内のCa2+濃度を上昇させることにより、オキシトシンの開口分泌、特にプライミング(顆粒小胞が細胞膜へ近づく)を誘導し、細胞外への放出を促す

 

図2. 免疫電子顕微鏡による解析。二孔チャネルKOマウスにおいてオキシトシン放出が抑制されることにより、下垂体後葉における顆粒小胞の自食作用が促進される図2. 免疫電子顕微鏡による解析。二孔チャネルKOマウスにおいてオキシトシン放出が抑制されることにより、下垂体後葉における顆粒小胞の自食作用が促進される

◆坂本浩隆准教授からのひとこと
 国際共同研究加速プロジェクトの一環で、私が英国オックスフォード大学に短期留学している際に、「オキシトシンの放出メカニズム」、というお互いの興味が一致したことにより、国際共同研究に発展しました。私たちは得意分野である免疫電子顕微鏡解析をすべて担当しました。
 2017年夏にプライミングしましたが、コロナの影響もあり、リリース(放出)まで5年以上もかかってしまいました。今回、無事リリースできてホッとしているとともに、ますます日英仏の国際協働トライアングルを加速していきたいという思いを強くしています!(日の目を見ないまま自食されずに良かったです!!)
 

坂本浩隆准教授坂本浩隆准教授

◆論文情報
 論文名: Endolysosomal TPCs regulate social behavior by controlling oxytocin secretion
     「二孔チャネルはオキシトシン放出を促進することにより社会行動を制御する」
 掲載誌: Proceedings of the National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要)
 著 者: Lora L Martucci, Jean-Marie Launay, Natsuko Kawakami, Cécile Sicard, Nathalie Desvignes, Mbarka Dakouane-Giudicelli, Barbara Spix, Maude Têtu, Franck-Olivier Gilmaire, Sloane Paulcan, Jacques Callebert, Cyrille Vaillend, Franz Bracher, Christian Grimm, Philippe Fossier, Sabine de la Porte, Hirotaka Sakamoto, John Morris, Antony Galione, Sylvie Granon, José-Manuel Cancela*
(*責任著者)
 DOI: 10.1073/pnas.2213682120
 URL: https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2213682120

◆研究資金
 本研究は、下記の支援を受けて実施しました。
  ・JSPS科学研究費補助金 国際共同研究加速基金 15KK0257 研究代表者:坂本浩隆
  ・JSPS科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)(学術研究支援基盤形成)先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)16H06280 研究分担者:坂本浩隆
  ・岡山大学 次世代研究拠点形成支援事業 拠点代表者:坂本浩隆
  ・岡山大学 国際研究拠点形成支援事業 参画研究者:坂本浩隆

◆詳しい研究内容について
 二孔チャネルはオキシトシン放出を促すことにより社会行動を制御していることを解明
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20230215-1.pdf

◆参 考
・岡山大学大学院 自然科学研究科
 https://www.gnst.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/

◆参考情報
・【岡山大学】ラットが目を掻く際、「利き足」が存在
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000983.000072793.html
・【岡山大学】長引くかゆみ、何回も引っ掻くと神経で増えるタンパク質が原因!~かゆみ治療薬開発への応用に期待~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000659.000072793.html
・【岡山大学】慢性疼痛からの自然回復に必要な細胞を世界で初めて発見!~ミクログリア細胞の驚くべき変化~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000625.000072793.html
・【岡山大学】原始左右相称動物・扁形動物の“原型(プロトタイプ)脳”から神経内分泌系の進化起源を特定
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000546.000072793.html
・【岡山大学】ご先祖様だと信じてきたもの、実は叔母のような関係? カエル抗菌ペプチド「ボンベシン」と哺乳類神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド」とは異なる進化系譜だった
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000223.000072793.html
・【岡山大学】女性は「かゆみ」に敏感? -女性ホルモンの変動により「かゆみ」の感じ方が変わるしくみを解明-
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000191.000072793.html

◆参考動画:岡山大学理学部付属牛窓臨界実験所研究室紹介(YouTube 3:05)
 https://youtu.be/t7jJWOBHxEk

岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)

◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 自然科学学域(牛窓臨海)准教授 坂本浩隆
 〒701-4303 岡山県瀬戸内市牛窓町鹿忍130-17 岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
 TEL:0869-34-5210
 FAX:0869-34-5211
 http://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/index.html

<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
            ※◎を@に置き換えて下さい。
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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001259.000072793.html

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