■社会背景
近年、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病等の生活習慣病が国民の健康面における大きな課題となっており、これらの疾病の発症と進行を防ぐには生活習慣の改善、中でも食生活の改善が重要です(※1)。また、65歳以上の高齢者の約2割が「低栄養」であるとされており(※2)、低栄養は要介護の状態になる可能性が高いとされる「フレイル」など深刻な健康障害へつながると言われています。
これらの状況を踏まえて、国も栄養管理に力を入れています。医療分野では平成22年の診療報酬改定にて栄養サポートチーム加算が新設されて以降、令和4年の診療報酬改定で特定機能病院の病棟における栄養管理体制を評価する入院栄養管理体制加算や周術期(※3)の栄養管理を評価する周術期栄養管理実施加算が新設されています(※4)。介護分野では、令和3年の介護報酬改定にて介護保険施設での栄養ケアの実施や体制強化を評価する栄養マネジメント強化加算が新設されるなど(※5)、専門的な知識と技術を持ち一人ひとりに合わせた栄養指導や栄養管理を行う管理栄養士・栄養士の役割は拡大し、重要性がますます高まっています。
そのような中で、管理栄養士・栄養士のキャリアも変化しています。当社が行った調査によると、新卒で管理栄養士として就職したのち3年未満で転職を行った人が40代、50代では約3割であったのに対し、20代では約6割(※6)となりました。また、新卒での就職時に専門学校等から紹介された就職先ではなく、自身で就職先を探して応募する人の割合が、30年前は約4割であったところ現在は約6割となりました(※7)。自身のより良いキャリア形成について20代から模索し、行動している人が増えていることがうかがえます。
キャリア形成の自由度が増し、働く場所について自身の希望する内容を選択しやすい環境が整いつつある一方で、管理栄養士・栄養士は、職場での課題も多いのが実態です。各職場に1名しか配置されていないという場合も多く、相談先がない、他職種とのコミュニケーションや人間関係に悩む等、孤独を抱える傾向にあります。このような状況から、管理栄養士・栄養士のキャリア形成のサポート、日々の業務における課題解決や生産性向上のためのサポートが求められています。
■エス・エム・エスの管理栄養士・栄養士サポートについて
当社では2011年6月より、管理栄養士・栄養士向けコミュニティ「エイチエ」を運営し、業務における疑問や悩みを解決できるQ&A、献立の共有、働き方支援等のコンテンツを提供しています。会員数は2021年10月時点で10万人を突破し、その後も増加しており2022年10月31日現在では約11万5千人、前年比約110%の増加率となっています。会員の勤務先は、病院・クリニック、介護・福祉施設、保育園・幼稚園、学校、給食委託会社と多岐に渡り、会員の多くは業務における課題解決のための情報収集や同じ悩みを持つ人との交流を目的にエイチエを活用しています。
2022年1月からはエイチエの学びのコンテンツとしてチエノートの提供を開始し、就職・転職で新たな知識を必要とする方や基礎の学び直しをしたい方に向けて、管理栄養士が執筆した就転職のノウハウや国家試験対策、日々の業務に役立つ学習記事を提供しています。また、現職の管理栄養士・栄養士のみならず、学生会員にとっても将来の仕事のイメージ作りや学びの機会となることを目指しています。
この度、より質の高い学びのコンテンツを提供するために、エイチエの機能を拡充しました。チエノートでは、大学教授をはじめとした有識者による、診療報酬改定、疾患別・事例別の栄養ケア・マネジメント、多職種間コミュニケーションの解説等、現場で役立つ知識を新たに提供しました。また、ニュースコンテンツをリニューアルし管理栄養士・栄養士向けのセミナー情報も加えて提供するほか、昨年国家試験受験生から好評だった「管理栄養士国家試験の解答速報」についても継続し、2023年2月26日(日)に開催される管理栄養士国家試験の解答速報を配信予定です。さらに、コンテンツ拡充に伴い、利用者により見やすい構成で必要な情報へのアクセスがしやすい環境を提供するため、トップページのデザインリニューアルも併せて実施しました。
当社では管理栄養士・栄養士向け人材紹介「栄養士人材バンク」を運営し、管理栄養士・栄養士の就転職もサポートしており、多様な働き方のニーズに対して専属のキャリアパートナーが最適な職場を紹介しています。また社内に研修担当の栄養士を配置し現場での経験に基づいた社内研修を実施しているため、単に職場を紹介するだけでなく求職者の希望と将来設計を考慮した、納得感のあるキャリア形成のサポートが実施可能です。
今後もエイチエと栄養士人材バンクを通じて、管理栄養士・栄養士に寄り添い、一人職場での不安や不満を相談しあえる機会、日々の業務における生産性向上を目的とした現場に必要な知識、一人ひとりの働き方やニーズに合わせた就転職支援などを提供し、管理栄養士・栄養士を総合的にサポートします。
※1:厚生労働省「管理栄養士・栄養士を取り巻く状況と管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定の歩み」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000062932_00002.html)より
※2:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html)より。低栄養は健康な体を維持するために必要な栄養素が不足した状態
※3:日本手術看護学会「日本手術看護学会としての「周術期看護」ことばの定義」より。手術の適応が決定したときから、手術が終了して退院し、外来通院にいたる一連の期間を指し、手術前期(preoperative phase)、手術期(intraoperative phase)、手術後期(postoperative phase)の3期を合わせて周術期と呼んでいる
※4:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要(栄養関係)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28048.html#:~:text=%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AE,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82)より
※5:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の概要(栄養関連)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20394.html)より
※6・7:当社調べ(管理栄養士・栄養士へのアンケート調査:20代~60代のエイチエ会員1,816名を対象にWeb調査を実施。実施期間は2022年9月15日(木)~9月21日(水))なお、※7については新卒時の就職先の選定について50代と20代で比較した結果となっている
【「エイチエ」について】
管理栄養士・栄養士向けコミュニティ。献立を投稿・閲覧し、コメントができる献立レポ、栄養士業務に特化したQ&A、求人情報や働き方などのコンテンツを提供。栄養士を多方面からサポートしています。
・提供開始:2011年6月
・利用対象者:管理栄養士・栄養士・栄養士養成施設の学生
・会員数:約115,000人(2022年10月末時点)
・登録費用:無料
・URL:https://eichie.jp/
▼主なサービス、機能
・献立レポ:日々の業務で作った献立を写真で共有できる投稿コンテンツ。日々の献立を共有する場を設け、盛り付けの仕方や料理の組み合わせ等、各自の「献立ノウハウを共有する場」を提供
・Q&A:業務に関する疑問やプライベートの悩みを相談できる「交流掲示板」を設け、業界最大級規模の「コミュニケーションの場」を提供
・求人情報:当社が運営する「栄養士人材バンク」と連携し、管理栄養士・栄養士に特化した求人情報を無料紹介
・チエノート:就転職のノウハウ、国家試験対策情報、大学教授等有識者監修の学びコンテンツを提供
※国家試験体対策については、管理栄養士国家試験対策サイト「管栄通宝」が監修
・ニュース:栄養関連のニュースを閲覧可能
▼エイチエ利用者の声
・保育園勤務の際は、前任者なしの一人職場で、アレルギー対応、園としても初めて導入することになった食育活動や育児講座、被災後の防災食の購入などわからないことが多く、自学をするほかに、エイチエのみんなのQ&Aで同じような悩みを見つけて参考にさせてもらったりしていました。特にアレルギー児対応でとても困った事例があった際は、思い切って質問を投稿したら温かい回答、具体的な対応策、考える方向性などがわかり、とても助かりました。
(40代/保育園・食品メーカー・特定保健指導を経験)
・一人職場での悩みは、効率的に業務を行う方法を知る機会が少ないことでした。勤務していた病院の給食業務が委託から直営へ方針変更する際には、エイチエの掲示板で業者へどのように相談・見積依頼を進めているのか度々閲覧して参考にしていました。また、コロナ禍では使い捨て食器の使用方法(非常災害時等一週間程度の使用想定で種類も限られていました)のほか、いろいろな職場でのアイデアを気軽に検索できてとても助かりました。
(30代/保育園・急性期病院を経験)
・以前は在宅訪問栄養指導業務に携わっていました。新たな分野へのチャレンジということもあり、知識不安に加え、周囲に頼れる人がいない心細さを感じておりました。困った時にエイチエを閲覧し、過去に診療報酬について質問した時は、的確な返答と参考資料などもご紹介いただき、とてもほっとした記憶があります。働く分野が変われば必要とする知識が全く異なるため、一人職種の多い栄養士にとって、エイチエはかけがえのないものになっています。
(30代/給食受託会社・病院・特定保健指導・在宅訪問・外来栄養指導を経験)
・栄養士として働いていく中で知識はありながらも、その知識の生かし方に悩みエイチエを利用しました。90代の方に決められた必要エネルギー量などを元に作成した食事の量が多かったため、本当に提供してもいいのか悩みエイチエにて相談をしました。退院後の生活のことを考えると、補助栄養食品を使用しすぎてしまうと食が細くなり咀嚼する口の筋肉が落ちてしまうため、在宅復帰(親族の方の食事サポート難易度が上がってしまう)が難しくなってしまいます。どのようなバランス比率にしたら良いか悩み、どのように担当医に食事提案をしていけば良いかわからなかったため、相談をしました。まずは補助栄養なしの全量で食事提供をし、「食事の量(残食率)・食事の時間」を経過観察しながら再スクリーニングを都度行っていけば問題ないと教えていただきその人にとって最適な食事提供をすることができたため、悩みを解決することができました。
(20代/回復期病院を経験)
【「栄養士人材バンク」について】
専任のキャリアパートナーが、求職者の希望をもとに全国の医療・介護・福祉施設、保育園、一般企業など最適な職場とマッチング。的確なサポートで良いキャリア形成を支援しています。
URL:https://eiyo.jinzaibank.com/
【株式会社エス・エム・エスについて】
2003年創業、2011年東証一部上場、2022年4月より東証の市場区分変更によりプライム市場へ移行。「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」ことをミッションに掲げ、「高齢社会×情報」を切り口にした40以上のサービスを開発・運営しています。
名称:株式会社エス・エム・エス
所在地:東京都港区芝公園2-11-1住友不動産芝公園タワー
代表者:代表取締役社長 後藤 夏樹
会社設立:2003年4月
資本金:23億1,022万円(2022年3月31日現在)
従業員数:連結3,303人、単体2,109人(2022年3月31日現在)
事業内容:高齢社会に求められる領域を、医療・介護・ヘルスケア・シニアライフと捉え、価値提供先であるエンドユーザ・従事者・事業者をつなぐプラットフォームとしての情報インフラを構築し、40以上のサービスを展開
URL:https://www.bm-sms.co.jp/