- 山岳貧困農村地区を襲った2つの巨大台風
リゾート地として有名なセブ島だが、島の大部分は緑に覆われており、農業が盛んな島でもある。しかし、農家の大部分は十分な教育を受けておらず、作物を作っても作っても、最低限の生活をするための収入すら得ることができていない。
日々、ギリギリの生活を送っていた農家の人々だが、2020年に新型コロナウイルス感染症による大規模なロックダウンにより物流が完全に止まり、さらに2021年12月に巨大台風があり作物が壊滅。そこからの復興もままならない状態で、2022年4月にまたしても巨大台風が発生し、農家は大きなダメージを受けた。
- DAREDEMO HEROが行った緊急支援
これまでにDAREDEMO HEROでは、農業の再開に必要な種や肥料が買えない農家のためのマイクロファイナンス事業、台風後には農業再建のための物資の緊急支援を行ってきた。
▶マイクロファイナンス事業 https://daredemohero.com/34749/
▶農業再建事業 https://daredemohero.com/35535/
これらの緊急支援を終え、今後は農家の人々が自分たちの力で立ち上がるための事業が必要な時期にきている。そこで、DAREDEMO HEROでは、ADRA Japanより助成を受け、貧困層に農業技術と新たな作物の栽培を提案する事業を開始している。
- 高騰する肥料と低迷する野菜の価格
現在、農家を苦しめているのが種や肥料など、農業を行うために必要な資材の高騰と、それに反した野菜の卸値の低迷である。
支援地区である山岳地域から、都市部の市場までは車で2時間ほどかかるため、各農家が野菜を売りに行くことがでず、多くは仲介業者に野菜を販売し、収入を得ている。昨今のガソリンの高騰も相まって、仲介業者への卸値は資材の高騰に反して低迷している。。
さらに、零細農家の多くが昔ながらの技法で、昔ながらの作物を作り続けている。同じ地区で同じ野菜ばかりが栽培されていることが、卸値を引き下げる一因ともなっている。しかし、新しい技法や野菜を取り入れる方法がなく、農家は収益率の低い農法を続けるしかなかった。
- 新たな挑戦(コンポスティング+新種の野菜)
<コンポスティングによる有機肥料づくり>
当事業では、高騰し続ける肥料の出費を抑え、収益を上げていくために、コンポスティングの技術を農家に伝えている。これまでにも、コンポスティングに挑戦したことのある農家はいるが、十分な講習を受けず、不十分な知識で行っていたため、思うような成果が出出ていなかった。
知識と共に、必要な資材を提供することで、農家に負担がない形でコンポスティングを始めることができる。
<新しい野菜に挑戦>
これまでは多くの農家が同じ野菜ばかり作っていたため、価格が下がってしまい、作っても作っても生活が潤わないという現象が起きていた。その一方で、食の多様化によってイタリアントマトや、ズッキーニ、ブロッコリー、セロリ、日本のキュウリなどは非常に高い価格で販売されている。しかしそれらの種は入手が難しく、さらにとても高価なため、零細農家には手が届かなかった。
そこで、当事業ではそれらの種子を提供し、栽培方法を教えることで、新たな可能性を広げている。
- 専門機関の専門知識を農家に!
この事業では、セブ市の農林水産省、バランガイの農業組合、コンポスティング事業に取り組む企業と連携を組んで進めている。それぞれの分野の専門家から、十分な指導を受けて進めることにより、失敗のリスクを極力減らすよう努めている。
このような事業を行う際に最も大切なことは、農家の現在の生活を邪魔することなく、生活向上の機会を提供することである。今現在彼らの生活を支えている農業を続けて、少しの空き時間、少しの空いた土地でこの挑戦を行い、しっかりと技術を付けてから少しずつ拡大していく。
将来的には、外部の支援がなくとも、対象農家が自分たちの力で、より生産性及び利益率の高い農業が実現できるよう、必要な知識と技術を伝えていく。