地盤の比抵抗(電気の流れにくさ=電気伝導度の逆数)は,間隙水の飽和度の自乗に反比例することが知られています。
斜面崩壊の多くは表層崩壊と呼ばれる現象で,雨水が表土層に浸透し,水を通しにくい基盤岩の上に帯水層が形成されることによって,表土層が滑り落ちようとする駆動力が,基盤岩層との間に働く抵抗力より大きくなって崩壊に至ると考えることができます。
このため,比抵抗を常時モニタリングすることによって帯水層を捉えることができれば,斜面災害の警報システムになりうると考えられます。
斜面崩壊の模式図
従来の比抵抗調査では,大掛かりな装置を使って,比抵抗構造を詳細に解析することを目指していましたが,測定や解析に時間がかかることや,大型の電源を必要とすることから,常時モニタリングには至っていませんでした。
中央開発(株)と早稲田大学物理探査工学研究室では,逆シュランベルジャー法という測定方法を用いることで,高頻度の測定,リアルタイムの解析,装置の小型・省電力化,携帯電話回線による遠隔操作を実現しました。
さらに,本年9月26日から,早稲田大学の本庄キャンパス(埼玉県本庄市)で試験測定を行い,令和4年台風第14・15号の大雨によって上昇していた地下水位が徐々に低下する(元に戻る)過程を捉えました。
試験サイトは崩壊の危険がある斜面ではありませんが,このシステムにより斜面崩壊の可能性を事前に察知することができるものと考えております。
テストサイト(白線の位置にケーブルが敷設されている)
(上)アメダス熊谷観測所の降雨量と,それにより計算した実効雨量(半減期72時間)と土壌雨量指数。
(下)24時間ごとの比抵抗構造の変化。横軸が比抵抗,縦軸が深度。深度5mまでは3層構造で,一番下の低比抵抗層が帯水層に相当すると考えられる。台風14・15号による降雨によって地下水位が上昇し,モニタリング開始後に徐々に元に戻る様子が捉えられた。
なお,本件開発については,特許出願中です。
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中央開発(株)は1946(昭和21)年、日本初の地盤コンサルタント企業として、戦後復興を目的にスタートした会社です。以来、国内における標準貫入試験の実用化を行うなど、地質調査のリーディングカンパニーとして、国内外のインフラ整備に関わるビッグプロジェクトに携わりながら、土木設計、情報解析、IoT機器を用いた防災コンサルティングなど建設コンサルタントとして事業領域を拡大して参りました。
近年では”地質DX”と銘打ったデジタルトランスフォーメーションを推進しています。点群データ活用やSfM処理技術、保有するボーリングデータを活用したAI分野での研究開発に取り組み、建設コンサルタント業界における新たな価値の創造に努めています。
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