日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役会長 兼 社長:シャシャンク・デシュパンデ)は、抗IL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ®点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組み換え]、以下スペソリマブ)について、2022年9月26日付で、膿疱性乾癬(GPP:Generalized Pustular Psoriasis]における急性症状の改善の効能・効果で国内における製造販売承認を取得しました。
このたびの承認取得は、急性期GPP患者さんを対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験(EFFISAYIL® 1)の結果等に基づくものです。
本試験において、スペソリマブの単回静脈内投与を受けた急性期GPP患者は、プラセボ群と比較して、1週間以内に膿疱が有意に消失したことが示されました[1]。この効果は12週間以上持続し、12週間の試験期間終了後、84.4%の患者において膿疱が消失し、81.3%の患者において皮膚症状が消失またはほぼ消失したことが明らかになりました[2]。
GPPは生命を脅かすおそれのある希少な難治性皮膚疾患で、発熱や倦怠感、皮膚の潮紅とともに無菌性の膿疱(うみを持った水疱)が全身に多発します[3]。乾癬の中で患者数の多い尋常性乾癬とは臨床的に区別されます。膿疱性乾癬は、難治性であることや治療に急を要することなどから、厚生労働省が定める指定難病に指定されています[4]。
GPPの急性症状の重症度は人によって異なりますが、治療せずにいると、敗血症や多臓器不全などを引き起こし、場合によっては命にかかわります3。そのため、GPPはアンメットメディカルニーズが高い疾患として、治療薬の開発が望まれていました。
日本ベーリンガーインゲルハイムは、今回のスピベゴ®点滴静注の製造販売承認取得により、GPP患者さんの急性症状の改善に貢献するとともに、適正使用の推進に努め、今後もアンメットメディカルニーズに応えることで、患者さんのQOL向上に尽力して参ります。
スペビゴ®(スペソリマブ)について
スペソリマブは、GPPを含む複数の自己炎症性疾患の病因に関連することが明らかになっている免疫系のシグナル伝達経路であるインターロイキン36受容体(IL-36R)の作用を阻害する新規ヒト化選択的抗体です[5,6,7]。本剤は検出力のある無作為化プラセボ対照試験で、急性期GPPの治療として検証されたIL-36経路を特異的に標的とするファーストインクラスの化合物です。
EFFISAYIL® 1臨床試験について
EFFISAYIL® 1(NCT03782792)試験は、12週間にわたり、急性期GPP患者(N=53)をスペソリマブ 900 mgの静脈内投与群またはプラセボ群のどちらかに2:1の比率で無作為に割り付けて評価した第2相臨床試験です。主要評価項目は、 1週目の時点でGPP Physician Global Assessment(GPPGA)膿疱サブスコアが0であること(膿疱が見られないこと)でした。主な副次的評価項目は、1週目の時点でGPPGAスコアが0または1であること(皮膚症状が消失またはほぼ消失)でした[1]。
1週目の時点で、膿疱なし(GPPGA膿疱サブスコアが0)を達成した患者の割合は、プラセボ群の6%に対し、スペソリマブ群で54%でした。さらに、1週間後に皮膚症状が消失またはほぼ消失(GPPGA合計スコアが0または1)を達成した患者の割合は、プラセボ群の11%に対し、スペソリマブ群で43%でした[1]。
1週間後に有害事象を報告した患者の割合は、スペソリマブ群で66%、プラセボ群で56%でした。感染症を報告した患者の割合は、スペソリマブ群で17%、プラセボ群で6%でした(1週目)。重篤な有害事象は、スペソリマブ群の6%で報告されました(1週目)[1]。
膿疱性乾癬[GPP:Generalized Pustular Psoriasis]について
GPPは、生命を脅かすおそれのある希少な難治性皮膚疾患であり、尋常性乾癬とは臨床的に区別されます[3,5]。GPPは、好中球(白血球の一種)が皮膚に集積することによって引き起こされ、痛みを伴う無菌性膿疱が全身に多発します[3]。臨床経過には幅があり、急性症状の再発を繰り返す患者さんもいれば、症状が遷延して断続的に症状の悪化が起こる患者さんもいます3。GPPの急性症状の重症度は人によって異なりますが、治療せずに放置すると、心不全、腎不全、敗血症や多臓器不全などを引き起こし、場合によっては命にかかわります。この慢性かつ全身性の疾患は、患者さんのクオリティオブライフに重大な影響を及ぼし、医療にとって負担となります[10]。GPPは、地域によって罹患率に差があり、男性よりも女性の方が、罹患率が高い傾向にあります[5,11,12,13]。許容できる安全性プロファイルを持ち、GPPの急性症状を迅速かつ完全に解消し、再発を防止する治療薬に対するアンメットニーズが存在します。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、今日そして次世代にわたり、暮らしを変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的視野を維持しています。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、52,000人以上の社員が世界130ヵ国以上の市場で事業を展開しています。
詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)
Reference
- Bachelez H et al. Trial of Spesolimab for Generalized Pustular Psoriasis. NEJM. 2021;385:2431-40.
- Elewski B, et al. Sustained treatment effect of spesolimab over 12 weeks for generalized pustular psoriasis flares; results from the Effisayil 1 study. Poster presented at AAD 2022 or Annual Meeting; March 2022; Boston.
- Navarini AA, et al. European consensus statement on phenotypes of pustular psoriasis. JEADV. 2017;31:1792-1799.
- 難病情報センター. 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37) https://www.nanbyou.or.jp/entry/313
- Crowley JJ, et al. A brief guide to pustular psoriasis for primary care providers, Postgraduate Medicine. 2021;133(3):330-344.
- Furue K, et al. Highlighting Interleukin-36 Signalling in Plaque Psoriasis and Pustular Psoriasis. Acta Derm Venereol. 2018;98:5–13.
- Bachelez H, et al. Inhibition of the Interleukin-36 Pathway for the Treatment of Generalized Pustular Psoriasis. N Engl J Med. 2019; 380:981-983.
- ClinicalTrials.gov. A Study to Test Whether Spesolimab Helps People With a Skin Disease Called Hidradenitis Suppurativa. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04762277. Accessed March 2022.
- ClinicalTrials.gov. A Study to Test Long-term Treatment With Spesolimab in People With Palmoplantar Pustulosis (PPP) Who Took Part in Previous Studies With Spesolimab. Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04493424. Accessed: March 2022.
- Hanna M, et al. Economic burden of generalized pustular psoriasis and palmoplantar pustulosis in the United States. Curr Med Res Opin. 2021. 37(5):735-742
- Ohkawara A et al. Generalized pustular psoriasis in Japan: two distinct groups formed by differences in symptoms and genetic background. Acta Derm Venereol. 1996 Jan;76(1):68–71.
- Augey F, et al. Generalized pustular psoriasis (Zumbusch): a French epidemiological survey. European Journal of Dermatology. 2006; 16(6):669-673.
- Jin H, et al. Clinical features and course of generalized pustular psoriasis in Korea. The Journal of Dermatology. 2015; 42(7):674-678.