TSURUMIこどもホスピスとは
2016年に日本で初めてできたコミュニティ型のこどもホスピスです。行政の制度に頼らず、そのほとんどを寄付で運営しています。
ホスピスという言葉は穏やかな最期を迎える場を連想しますが、病院ではありません。お家のような雰囲気の中で重い病気の子どもと家族がゆったり過ごしたり、一人一人が病気で諦めてしまったやりたいことを叶えていくための場です。
難病と闘うティーンを支える取り組み
こどもホスピスでは、中学生以上の「ティーン世代」へのサポートに近年注力しています。青春時代に大きな病気を抱えることで孤立してしまうことや、将来への不安など思春期特有の難しさがあることから、社会的および精神的に孤独を深めてしまうことが課題となっています。こどもホスピスでは、プロとの出会いや体験を通して自信につながる機会を作ることを、ティーン世代への取り組みのひとつとしています。
今回体験の講師を依頼したのは、TSURUMIこどもホスピスのロゴを手掛けたデザイナーの石黒篤史さんです。普段接することのない第一線のデザイナーとの出会いが、子どもたちに病院や学校以外にも世界があることを知ってもらうきっかけになると考えました。
ホスピスと日本酒?
デザイナーの石黒さんが提案してくれたのは、新しく発売される日本酒のラベルをデザインする企画でした。彼がクリエイティブディレクションを手がけている山口県の酒蔵「阿武の鶴酒造」代表の三好隆太郎さんにも賛同いただけたことで、このプロジェクトを実現することができました。
10代の子どもたちにとって、お酒はまだ遠い存在です。また、病気の分野ではお酒はタブー視されています。そのような「お酒」の製品化をこどもホスピスの利用者がおこなうのは、非常にユニークなプロジェクトです。
その体験へ参加してくれたのが、将来デザインの仕事に携わりたいと考えている長井優太さん(17歳)と、齋藤愛里さん(12歳)でした。2人は商品の顔になる、ラベルのデザイン担当という重役を担ってくれました。
ラベルデザインのワークショップを開催
2023年8月18日にこどもホスピスでラベルデザインを仕上げるためのワークショップが行われました。ラベルデザインのテーマは「融合と調和」です。事前に取り組んでくれていたデザインを基にデザイナーの石黒さんと一緒に洗練されたものになるように話し合いながら、納得いくまで向き合い続けました。
Q.日本酒のラベルデザインに参加してもらいましたが、はじめに聞いたときはどうでしたか?
長井優太さん
最初は何で日本酒なのか?って思ったけど、飲めるのはまさかの成人してからだったのでおもしろかったです。
齊藤愛里さん
元から絵が好きだったから、久しぶりにできると思って楽しみな気持ちが多かったです。
Q.ラベルデザインのテーマは「融合と調和」デザインを意識したことは何でしょうか?
長井優太さん
別々の形、■と△を使って、形が違うものを溶け込むように、違和感のないように意識しました。青と赤の2色で上手く違いを作れるようにしました。山と海のイメージで青と緑の候補もありましたが、赤の力強さを取り入れる形をとりました。
齊藤愛里さん
上が濃い目の色、下が薄めの色を使っています。色を混ぜてしまうと綺麗な色が見えなくなってしまうので、色んな色を表現したいと思いました。上下の色分けを作っている途中に考えたので、真ん中の白と上下の色を意識したデザインとなりました。
Q.実際に出来上がった商品を見た感想を教えてください
長井優太さん
「これが世に出回るのか」というわくわく感と自分で作ったものを他の人が買ってくれるという達成感がありました。それは夢の一つだったので夢が叶えられたことの嬉しさがありました。
齊藤愛里さん
昔から自分で作っていたアレンジの色が新しく出来上がったものを見て昔を思い出しました。何回も描いていた絵だけど、なつかしさと綺麗に出来上がって嬉しかったです。
ワークショップ参加後に長井優太さんはデザイナーの石黒さんとデザイナーやクリエイターについて話をしており、プロとの何気ない会話も子どもたちにとっては貴重な学びの場となっているのかもしれない、と感じました。
デザイナーの石黒さんはワークショップ後「貴重な経験。人生の中で重要な意味を持てたのは、自分たちの方かもしれないなと感じました。背筋が伸びました。」とおっしゃっていました。
自分の想像したものが形になる、考えたことが実現する
今回のプロジェクトは2人のデザインなくしては実現しないものでした。事前にデザインの興味関心があった2人はワークショップ参加の呼びかけをすると、すぐに参加希望の返事をくれました。一からモノを想像すること、実際に形として残る、誰かの喜びにつながる、そんなものづくりの一端を味わってもらえたのではないかと思います。
そして、その経験が子どもたちにとって自分自身を肯定する気持ちや自信につながっていってもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
2人がデザインした日本酒「MIYOSHI KŌ(コウ)」が2023年10月17日(火)に発売
商品名:MIYOSHI KŌ(コウ)
容量と価格:720ml / 2,100円(小売価格・税抜)
原料米:全量契約栽培米の山田錦100%(山口県阿武産)
原材料名:米(国産)、米麹(国産米)
精米歩合:50%(40〜50%)
アルコール分:15%
飲み方:よく冷やしてワイングラスでお楽しみください。
味わいの特徴:濃密で奥深い風味が魅力。その上で、柔らかな香りと甘さを纏いつつ、旨みをしっかりと感じさせるお酒となっています。
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000077120.htmlより引用)
クリエイティブディレクター 石黒 篤史
1983年 東京都生まれ。佐野研二郎主宰のMR_DESIGNを経て、 2013年にOUWN( http://jp.ouwn.jp/ )を設立。アートディレクションから、グラフィックデザイン、サイン計画、web設計など多角的に企画立案製作に携わり、設立当初より継続的に国内外でデザイン賞を多数受賞。Design Workの他に「People and Thought.」といった芸術活動・展示・作品製作も精力的に行う。OUWN10周年を期に、池尻大橋に居酒屋「OMA」( https://www.instagram.com/oma.eu/ )をOPEN。
阿武の鶴酒造 6代目 三好 隆太郎
1983年 山口県阿武町生まれ。東京の大学で建築を学んだ後、デザイナーとして大手アパレル会社に勤務し、新店舗の内装デザインを手がける。2008年、24歳で退職後、千葉県、埼玉県、岐阜県、青森県の4酒蔵を渡り歩き、酒造りについて学ぶ。2014年、34年間休業状態にあった実家・阿武の鶴酒造を復活させるために帰郷。2016年、造り手として同酒造での醸造を開始し、看板銘柄「三好」も立ち上げ、国内・海外のファンが多数。
ムービーディレクター 川島 真美
1994年 東京生まれ。EDP graphic works Co.,Ltd.を経て、DRAWING AND MANUALに参加。グラフィック・CIデザインをはじめ、抽象的なブランディング映像からキャラクターを動かすアニメーションまで様々な表現方法を用いる。映像作家100人 2022・2023に選出。
購入先(酒販店様 一覧サイト)
クレジット
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Creative Director:石黒 篤史(Atsushi Ishiguro)/ OUWN & People and Thought.
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Chief Brewer:三好 隆太郎(Ryutaro Miyoshi)/ 阿武の鶴酒造
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Movie Director : 川島 真実(Mami Kawashima)/ DRAWING AND MANUAL
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Designer:齊藤 愛里(Airi Saito)
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Designer:長井 優太(Yuta Nagai)
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Childminder:川戸 大智(Daichi Kawato) / TSURUMIこどもホスピス
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Nurse:古本 愛貴子(Akiko Furumoto)/ TSURUMIこどもホスピス
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Nurse:西出 由実(Yumi Nishide) / TSURUMIこどもホスピス
公益社団法人こどものホスピスプロジェクト
TSURUMIこどもホスピス
大阪市鶴見区浜1丁目1-77
Tel:06-6991-9135 FAX 06-6991-9136
開館時間 10:00-17:00 / 閉館日 火曜日(8/11-15 12/28-1/4)
TSURUMIこどもホスピスHP https://www.childrenshospice.jp/
写真データ使用・申請ガイドライン
https://www.childrenshospice.jp/wp/wp-content/uploads/2022/10/tch_photo_guideline_202210.pdf
ロゴデータ使用について
https://www.childrenshospice.jp/wp/wp-content/uploads/2022/10/tch_logo_guideline_202210.pdf